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第5章
第248話 眠気と闘う悪役令息
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「ええと、キルナくん。大丈夫ですか? 目が、怖いですよ」
「ん…ぁ、ごめんなさぃ……」
眠くて眠くて授業中ちょっと白目になって魔法基礎学のメビス先生をびっくりさせたり、手に力が入らず木剣をガランと取り落としカリムを心配させたりとイマイチな僕。クライスはそんな僕をなんとなく不安そうに見ている。
だけど、この授業だけは小さな小さなお友達のおかげでパシっと目が覚めた。僕の大好きな授業、魔法生物学だ。
「ホッホッホ、キルナくんがいない間この子たちが寂しそうじゃったよ~」
朗らかに笑うスピカ先生はいつ見てもチャーミングで、白髪頭の上には三羽の小鳥(みたいな魔法生物、名前は忘れた)が乗っている。
生物室に入るなり僕を取り囲んだもこもこの魔法生物たちはどの子も小さくてふわふわで……癒される。
(ああ、つぶらな瞳! 可愛ぃ!! 肉球プニプニ、柔らか~ぃ)
もふもふの毛と肉球をなでなでヨシヨシしていると、どんどん集まってきて前が見えなくなった。
「んむぅ~ちょっと…これ…ふふっ…ぺろぺろ舐めたらくすぐった」
(可愛いけどこれじゃ動けない。僕の椅子はどこだろう)
どうにか彼らに離れてもらおうともがいていると、小さな舌で首や耳を舐められ力が抜けた。他の子も真似してきて、あっという間に僕の顔は涎でべちゃべちゃになってしまう。すると先生と話をしていたはずのクライスがやってきて手でパッパと払い退けてくれた。
「た、助かったぁ~ありがと」
「あいつらは魔法が使えるし、物理攻撃は効かないから多少手荒く退けても大丈夫だ。次からは叩いてでも追い払え」
ふむ、なぜかクライスはちょっと機嫌が悪いみたい。涎まみれの僕の顔をちょっぴりイライラしながらクリーンの魔法で綺麗にしてくれた。
「クライス様、仮想の枕にやきもちを妬いたと思ったら次は魔法生物ですか?」
クスクスと上品に笑いながら近づいてきたのはリオンだ。
「あんなに寄ってきたら危ないだろう。早く対処する方法を覚えなくては」
「でも無理だよぅ。どの子も手のひらサイズで毛もふわっふわで愛くるしいし、懐いてくれてるのだと思うとうれしくて、ついつい甘やかしたくなっちゃう……」
もうこれは仕方がないと思う。ほら、黒目がちの目で見つめられるとお願いを聞きたくなるでしょ?
……あ。よく考えるとこれってテアのおねだり作戦にハマっちゃう時と同じ流れだ。あの大きな目で見つめられながらお願いされると、僕はどうにも断れなかった。(魔法生物風おねだりはいざという時に必殺技として使えそうだしメモしとこ)
「ですが、クライス様のいうことにも一理あります。あの子たちは今は小さいですが、これからどんどん成長して最終的に馬くらいの大きさになりますからね。体に合わせて力も増すのできちんということを聞かせることは大切です」
いつも第一王子御用達の馬車を引いてる立派な馬たちを思い出し、ギョッとする(この世界の馬は前世の馬よりさらに大きい)。あんなサイズになったらさすがに今みたいに可愛がるのは難しい。ヘタをすると自分より体の大きな魔法生物たちに押し潰されてしまうかもしれない。
「たしかにそれは…危ないかも」
押し潰される自分を想像し、ブルっと震えると、リオンは聖母様みたいに穏やかな笑みで子犬みたいな魔法生物をなでなでしながら言った。(この人が怒ってるところ見たことないけど、実は腹黒ってほんとなのかな)
「しかしそこは心配しなくても、躾の仕方はスピカ先生がきちんと教えてくれるので大丈夫ですよ」
「そっか。ようし、この子たちが大きくなっても可愛がれるように、勉強頑張るよ!」
“二匹の魔法生物に餌(魔力)を与える”
というのが今日の課題だったので、僕は黒いムベルと白いメフメフに魔力の水を用意する。ぎゅっと掴んだクライスの手からいいかんじに魔力を頂戴して、40の魔力の水をあげることができた。(今日は失敗しなかった!)
「ふふっ、一生懸命飲んでる。可愛い」
(……テアもちゃんとお水飲んでるかな。これが今日最後の授業だから、補習が終われば会える。病室に行って元気な姿が見たい)
できるだけ早く残ってしまった課題を終わらせようと猛烈な勢いで素振りをこなし、走って理事長室に向かう。すると、理事長室の前に人影が見えた。あの見慣れたオレンジ髪の麗しい男の子は……。
「リリー!!?」
どうしてこんなところにリリーがいるのだろう。
「ん…ぁ、ごめんなさぃ……」
眠くて眠くて授業中ちょっと白目になって魔法基礎学のメビス先生をびっくりさせたり、手に力が入らず木剣をガランと取り落としカリムを心配させたりとイマイチな僕。クライスはそんな僕をなんとなく不安そうに見ている。
だけど、この授業だけは小さな小さなお友達のおかげでパシっと目が覚めた。僕の大好きな授業、魔法生物学だ。
「ホッホッホ、キルナくんがいない間この子たちが寂しそうじゃったよ~」
朗らかに笑うスピカ先生はいつ見てもチャーミングで、白髪頭の上には三羽の小鳥(みたいな魔法生物、名前は忘れた)が乗っている。
生物室に入るなり僕を取り囲んだもこもこの魔法生物たちはどの子も小さくてふわふわで……癒される。
(ああ、つぶらな瞳! 可愛ぃ!! 肉球プニプニ、柔らか~ぃ)
もふもふの毛と肉球をなでなでヨシヨシしていると、どんどん集まってきて前が見えなくなった。
「んむぅ~ちょっと…これ…ふふっ…ぺろぺろ舐めたらくすぐった」
(可愛いけどこれじゃ動けない。僕の椅子はどこだろう)
どうにか彼らに離れてもらおうともがいていると、小さな舌で首や耳を舐められ力が抜けた。他の子も真似してきて、あっという間に僕の顔は涎でべちゃべちゃになってしまう。すると先生と話をしていたはずのクライスがやってきて手でパッパと払い退けてくれた。
「た、助かったぁ~ありがと」
「あいつらは魔法が使えるし、物理攻撃は効かないから多少手荒く退けても大丈夫だ。次からは叩いてでも追い払え」
ふむ、なぜかクライスはちょっと機嫌が悪いみたい。涎まみれの僕の顔をちょっぴりイライラしながらクリーンの魔法で綺麗にしてくれた。
「クライス様、仮想の枕にやきもちを妬いたと思ったら次は魔法生物ですか?」
クスクスと上品に笑いながら近づいてきたのはリオンだ。
「あんなに寄ってきたら危ないだろう。早く対処する方法を覚えなくては」
「でも無理だよぅ。どの子も手のひらサイズで毛もふわっふわで愛くるしいし、懐いてくれてるのだと思うとうれしくて、ついつい甘やかしたくなっちゃう……」
もうこれは仕方がないと思う。ほら、黒目がちの目で見つめられるとお願いを聞きたくなるでしょ?
……あ。よく考えるとこれってテアのおねだり作戦にハマっちゃう時と同じ流れだ。あの大きな目で見つめられながらお願いされると、僕はどうにも断れなかった。(魔法生物風おねだりはいざという時に必殺技として使えそうだしメモしとこ)
「ですが、クライス様のいうことにも一理あります。あの子たちは今は小さいですが、これからどんどん成長して最終的に馬くらいの大きさになりますからね。体に合わせて力も増すのできちんということを聞かせることは大切です」
いつも第一王子御用達の馬車を引いてる立派な馬たちを思い出し、ギョッとする(この世界の馬は前世の馬よりさらに大きい)。あんなサイズになったらさすがに今みたいに可愛がるのは難しい。ヘタをすると自分より体の大きな魔法生物たちに押し潰されてしまうかもしれない。
「たしかにそれは…危ないかも」
押し潰される自分を想像し、ブルっと震えると、リオンは聖母様みたいに穏やかな笑みで子犬みたいな魔法生物をなでなでしながら言った。(この人が怒ってるところ見たことないけど、実は腹黒ってほんとなのかな)
「しかしそこは心配しなくても、躾の仕方はスピカ先生がきちんと教えてくれるので大丈夫ですよ」
「そっか。ようし、この子たちが大きくなっても可愛がれるように、勉強頑張るよ!」
“二匹の魔法生物に餌(魔力)を与える”
というのが今日の課題だったので、僕は黒いムベルと白いメフメフに魔力の水を用意する。ぎゅっと掴んだクライスの手からいいかんじに魔力を頂戴して、40の魔力の水をあげることができた。(今日は失敗しなかった!)
「ふふっ、一生懸命飲んでる。可愛い」
(……テアもちゃんとお水飲んでるかな。これが今日最後の授業だから、補習が終われば会える。病室に行って元気な姿が見たい)
できるだけ早く残ってしまった課題を終わらせようと猛烈な勢いで素振りをこなし、走って理事長室に向かう。すると、理事長室の前に人影が見えた。あの見慣れたオレンジ髪の麗しい男の子は……。
「リリー!!?」
どうしてこんなところにリリーがいるのだろう。
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