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第5章

第206話 クライスSIDE 小動物たちの会話

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一通り調査報告を聞き、部屋に戻ると、キルナのベッドでリリーが眠っていた。オレンジの髪の毛をよしよしと撫でている彼が俺に気付き、おかえりと言う。

「ああ、ただいま。どうだ? 身体はもう大丈夫か?」

「ん、いっぱい寝てすっきりしたよ。もう元気」

「そうか、よかった。リリーは…寝てしまったんだな。まぁ無理もない。お前がいなくなった後、護衛騎士の言葉も聞かず随分探し回っていたようだから」

「そう…だったの」

「かなり疲れている様子だったから休めと言ったのだが、どうしてもキルナから離れたくないと言うから、そのままにしておいた」

「そか。たくさん、探してくれたんだね。リリー。ありがと…」

キルナは真珠のような涙を一粒ぽろんと零し、それを拭き取ろうともせず、眠るリリーを見つめていた。


リリーはそれから程なくして目覚めた。

俺が鉱山から眠るキルナを抱えて寮に戻った時、リリーはひどい顔色をしていた。キルナの様子を事細かく聞きたがり、泣きながら彼にしがみつき震えていた。そんな状態だったリリーだが、ゆっくり眠り、起きた時にキルナがまだ手を握っていたことに安心したのか、今は血色も良く、気持ちも安定したようにみえる。

「メガネ、ちゃんといる。よかった」
「ふふ、もういなくならないよ。だいじょぶ」

憂うような眼差しをキルナに向け、リリーがポツリと言った。

「メガネ、転移魔法でさらわれたんだね。僕、あの時どうしてもっと強くメガネの手を握ってなかったのかってずっと後悔してて……」

落ち込むリリーにキョトンとしながらキルナが言う。

「後悔なんてしなくていいのに。僕はね、あの時手を離して、リリーを巻き込まずに済んだことが今回の自分の行動の中で一番よかったことだと思ってるの」

「どうせ攫われるなら僕も連れて行ってほしかったよ。は僕も連れてってよね」

リリーは少し声を荒げ、頬を膨らませて怒っている。キルナはまさか、あんなとこにリリーを連れていくなんて、とんでもないよ、無理無理無理、と首を振る。だって自分一人で行く。リリーは絶対連れて行かないから、と宣言している。

次? こいつらはなんの話をしているんだ? 俺からしてみたらあんな場所にこの小動物たちを送り込むのは一人でも二人でももう二度とごめんなのだが。

「一人で置いて行かれるなんて嫌。絶対行く」
「ダメだよ!!! なんかねがいたから。あんな奴にリリーを見せたら、きっと、お、犯されちゃったに違いないよ。うぅ、思い出したらゾワゾワしてきた!」

ブルブルッと身震いするキルナ。

だと!?)

その男について俺は聞きたい。リリーは明日も来るよ、と言い残し部屋に戻って行った。


「キルナ、のことだが……」

(お前、あいつに何をされたんだ?)

「ん、その前にお風呂に行きたいのだけど」

(いかがわしいことをされたのか?) 

「あ、ああ、それは構わないが」

(あの体液の正体はなんなんだ?)

色々聞きたいが、せっかく元気になったキルナに嫌なことを思い出させたくない。どうしたらいい?
俺はもやもやした気持ちをどうしようもできないまま、大浴場に行くことになった。
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