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第5章
第192話 リリーSIDE 呪いの首輪
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眼鏡をしていないメガネがあまりにも可愛くて胸がキュンキュンする。おまけに性格まで可愛いなんて……。さっきふいに「はいっ」とねこのもこもこルームウェアをもらった時には……彼の優しさが嬉しくて、思わずキスしてしまった。(やばっ。あんなところ王子に見られたら殺されてしまう)
僕が心を落ち着けるために深呼吸しながら歩いている間も、物珍しそうに大きな金の瞳をクリクリさせ、ヒクヒク鼻を動かしながら、「ん、甘い匂いだよ。おいしそ~な香りこっちからするよ」と落ち着きなく好奇心旺盛に動き回る様子はメフメフそっくり。
「メガネはメフメフに似てるよね」
「メフメフ? あぁ、子うさぎに似た魔法生物? 耳をパタパタさせて空を飛ぶんだよね。う~ん、別に似てないと思うけど」
「ううん、そっくりだよ」
放っておくとパタパタ飛んでどこかに行っちゃいそうだ。それにしても……。
(まずいな、さっきから熱っぽい視線を複数感じる。)
僕はまぁ、見ての通り美少年だから昔から変なやつに目をつけられることも多い。面倒なことに巻き込まれないようにいつも気を配っているから、こういう熱を帯びた視線にも敏感だ。
けど、メガネは視線に全く気付く様子がない。
(こんなんで今までどうやって無事に生きてきたんだろう。)
彼は人並みはずれた美貌の持ち主だ。こんなに綺麗な人間を僕は他に見たことがない。金の大きな瞳に長いまつ毛、うるうるとしたピンクの唇にきめの細かい色白の肌、その完璧に整った顔立ちは妖精殿に描かれた妖精のよう。なのに彼は驚くほど自分の容姿に無頓着で、信じられないくらい無防備だ。
「リリー! 次はこっちの店に入ろうよぉ」
「いいよ。店の中でも僕から離れないでね」
「ん、わかってる」
無邪気な笑顔に癒されるけど、その分心配も募る……。彼の首元を見て、はぁ、と僕はため息をついた。
(そりゃ王子だって地味な眼鏡や呪いの首輪くらいつけたくなるよね。)
「そのチョーカー、王子がくれたんでしょ?」
「うん、そう。今朝もらったの」
「似合ってる」
「そう? よかった!」
彼の首に光るアイスブルーの宝石は禍々しいほどの魔力を帯びていて、鑑定スキルをもつ自分からすると、いっそ呪いかな? と思うレベルだ。その執着の強さに恐怖すら覚える。
魔力を帯びた宝石、『魔宝石』は元の宝石の値段と込められた魔力の強さの両方を合わせて価値が決まる。彼のチョーカーに嵌まっているそれは、見間違いようがない。“アステリアダイヤモンド”というこの国の名がついた唯一の宝石だ。
王家のカラーであるアイスブルーで魔力を豊富に蓄える性質から、別名“妖精の石”とも呼ばれる。宝石自体が国宝級の価値を持っている上に、王子の魔力がこれでもかというほど込められていて、もはや値段をつけられないほどのものになっている。
(そんなものをよりにもよって首につけるだなんて!)
魔力持ちにとって、自分の魔力を込めた宝石を人に身につけさせるのは、所有の印。つける場所によって意味が変わるけど、その中でも、首につけるアクセサリーは最も強力な束縛、独占を意味する。それはあまりに露骨な愛情表現だから、魔宝石は隠して持つか、結婚指輪、婚約指輪につけるのが普通だ。もし首につけることがあるとすれば……飼い主が溺愛してるペットの首輪につけるくらいなんだけど。
ーークライス王子はその重たい愛を隠す気がないらしい。
ただ、メガネはそれをなんの変哲もない普通のチョーカーだと思っている。アクセサリーショップでチョーカーがたくさん並んでいるのを見て「やっぱり流行ってるんだね。あ、これ僕のに似てる~」なんて呟いていた。
(これだけ鈍いのだから、これくらい強くアピールして丁度いいのかな。)
太陽の光を反射し、ギラギラと輝いているアイスブルーの魔宝石を見ながら、同じ色の目を持つ王子の苦悩を推し量った。
僕が心を落ち着けるために深呼吸しながら歩いている間も、物珍しそうに大きな金の瞳をクリクリさせ、ヒクヒク鼻を動かしながら、「ん、甘い匂いだよ。おいしそ~な香りこっちからするよ」と落ち着きなく好奇心旺盛に動き回る様子はメフメフそっくり。
「メガネはメフメフに似てるよね」
「メフメフ? あぁ、子うさぎに似た魔法生物? 耳をパタパタさせて空を飛ぶんだよね。う~ん、別に似てないと思うけど」
「ううん、そっくりだよ」
放っておくとパタパタ飛んでどこかに行っちゃいそうだ。それにしても……。
(まずいな、さっきから熱っぽい視線を複数感じる。)
僕はまぁ、見ての通り美少年だから昔から変なやつに目をつけられることも多い。面倒なことに巻き込まれないようにいつも気を配っているから、こういう熱を帯びた視線にも敏感だ。
けど、メガネは視線に全く気付く様子がない。
(こんなんで今までどうやって無事に生きてきたんだろう。)
彼は人並みはずれた美貌の持ち主だ。こんなに綺麗な人間を僕は他に見たことがない。金の大きな瞳に長いまつ毛、うるうるとしたピンクの唇にきめの細かい色白の肌、その完璧に整った顔立ちは妖精殿に描かれた妖精のよう。なのに彼は驚くほど自分の容姿に無頓着で、信じられないくらい無防備だ。
「リリー! 次はこっちの店に入ろうよぉ」
「いいよ。店の中でも僕から離れないでね」
「ん、わかってる」
無邪気な笑顔に癒されるけど、その分心配も募る……。彼の首元を見て、はぁ、と僕はため息をついた。
(そりゃ王子だって地味な眼鏡や呪いの首輪くらいつけたくなるよね。)
「そのチョーカー、王子がくれたんでしょ?」
「うん、そう。今朝もらったの」
「似合ってる」
「そう? よかった!」
彼の首に光るアイスブルーの宝石は禍々しいほどの魔力を帯びていて、鑑定スキルをもつ自分からすると、いっそ呪いかな? と思うレベルだ。その執着の強さに恐怖すら覚える。
魔力を帯びた宝石、『魔宝石』は元の宝石の値段と込められた魔力の強さの両方を合わせて価値が決まる。彼のチョーカーに嵌まっているそれは、見間違いようがない。“アステリアダイヤモンド”というこの国の名がついた唯一の宝石だ。
王家のカラーであるアイスブルーで魔力を豊富に蓄える性質から、別名“妖精の石”とも呼ばれる。宝石自体が国宝級の価値を持っている上に、王子の魔力がこれでもかというほど込められていて、もはや値段をつけられないほどのものになっている。
(そんなものをよりにもよって首につけるだなんて!)
魔力持ちにとって、自分の魔力を込めた宝石を人に身につけさせるのは、所有の印。つける場所によって意味が変わるけど、その中でも、首につけるアクセサリーは最も強力な束縛、独占を意味する。それはあまりに露骨な愛情表現だから、魔宝石は隠して持つか、結婚指輪、婚約指輪につけるのが普通だ。もし首につけることがあるとすれば……飼い主が溺愛してるペットの首輪につけるくらいなんだけど。
ーークライス王子はその重たい愛を隠す気がないらしい。
ただ、メガネはそれをなんの変哲もない普通のチョーカーだと思っている。アクセサリーショップでチョーカーがたくさん並んでいるのを見て「やっぱり流行ってるんだね。あ、これ僕のに似てる~」なんて呟いていた。
(これだけ鈍いのだから、これくらい強くアピールして丁度いいのかな。)
太陽の光を反射し、ギラギラと輝いているアイスブルーの魔宝石を見ながら、同じ色の目を持つ王子の苦悩を推し量った。
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