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〈本編〉
サム、《人の国》へ行く①
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とうとう、サムが《人の国》に行く日になりました。この日は朝からアゴ母さんは大忙しで、息つく暇も無いほど、せかせかとしています。アゴ母さんは近くで《人の国》へ行く準備をしているサムに話しかけます。
「サム、今日はいよいよ《人の国》へ行く日ね」
「うん、そうだね。ねぇ、アゴ母さん。チビは大丈夫だよね?」
「サム。もうチビの事は考えなくていいのよ。今は自分の事を考えなさい。いいわね」
「でも、やっぱり、心配だよ……」
「まあね、チビが生まれた時から一緒に居るものね」
「ちゃんとニセイが面倒見てくれるといいんだけど……」
「サム、もうなる様にしかならないんだから、ブチやニセイに任せなさい!」
「……はい、アゴ母さん」
アゴ母さんはサムの心配症な所が、逆に心配になってしまいます。何度、ブチやニセイに頼んだのだから、大丈夫だと言っても、心配してしまうので、アゴ母さんはサムの気質なのだろうと思うようにしました。
「サム、準備は終わったの?まだなら手伝うわよ」
「えぇっと、準備は終わったよ。アゴ母さん」
「そうなのね。あとは長老から、お迎えの連絡を待つだけね」
「そうだね。……ねぇ、アゴ母さん……」
「なあに、改まって」
「あのね、今まで育ててくれてありがとう」
「まあまあサム、そんな今生の別れみたいに言わないで……」
「だって、長老様も言ってたでしょ……。帰って来れるかわからないって……」
「そうね。……母さんは針の穴ぐらいの小さい望みでも、サムが帰って来ると信じてるわ」
「そうだね、アゴ母さん。僕も帰って来れるのを信じる事にするね」
「そうよ、サム。信じる心を持ってれば、叶った時の喜びもひとしおになるわ。だからサムも信じましょうね」
「うん、僕も信じるよ……」
サムはニセイに比べると、大人びて見え、思慮深く見えますが、まだまだ小さな子どもに代わりないのです。その為、アゴ母さんはサムにこの《ねこの国》の事をおぼろげでもいいから、覚えていて欲しくて、こちらに帰って来られる事を信じる様に話しました。
サムがもう少し小さい頃は、今のチビの様にブチの後ろを着いて回っていました。その為に今でも、ブチが大好きなのです。ブチも小さい頃から面倒をみていたサムが可愛くて仕方ない様です。
反対にニセイはブチを嫌っていた様に、アゴ母さんは思います。生まれて歩ける様になった頃は、サムとニセイは2人で遊んでいたと、アゴ母さんは記憶しています。そんな時に、ニセイとサムの体格差に気が付きました。
この体格差は、ニセイがサムの分のご飯を食べてしまっていた為に起こった事でした。
アゴ母さん自身もニセイにサムのご飯を食べない様に注意をしていましたが、ブチにも注意してくれる様に頼んだ事がありました。
多分、ニセイがブチを嫌っているのは、この事が原因だろうと、アゴ母さんは思っています。このニセイがブチを嫌ってしまった事には、ブチに悪い事をしたとアゴ母さんは思っています。
アゴ母さんとサムが《人の国》へ行く準備の話をしていたら、長老から伝言が来ました。長老からの伝言を持って来てくれたのは、クロの母親のチィでした。
「アゴさん。長老から手紙を預かって来たわよ」
「まあ、チィさん。ありがとう」
「あ、チィおばさん。今日は」
「あらぁ、サムちゃん。そういえば、いよいよ《人の国》に行くのよね」
「はい、そうです。クロちゃんにはお世話になりました」
「まあ、サムちゃん。いいのよ、そんな事ないわ。クロの方がサムちゃんにお世話になってたもの」
「でも、《人の国》に行くとなかなか帰って来れないから……」
「そ、そうだったわね。おばさん、忘れてたわ。ゴメンなさいね、サムちゃん」
「ううん。僕もゴメンなさい。チィおばさん」
「さぁ、サムもチィさんも、そんな辛気くさい顔をしないで……」
「そうだった。僕、そんなに辛気くさい顔してた?アゴ母さん」
「えぇ、2人とも、辛気臭かったわよ。サムはそんな顔してると、チビが心配するわよ」
「えぇ~、それは困るよ!……またチビが離れなくなっちゃう!」
「そうよ。チビの心配なんかしてられないわよ、サム」
「うへぇ~。笑顔、笑顔」
「じゃぁ、アゴさん、サムちゃん、私はもう行くわね」
「……ありがとう、チィさん」
「チィおばさん、ありがとう!」
チィはアゴ母さんとサムに暇の挨拶をすると、帰って行きました。それをアゴ母さんとサムは見送りました。
「サム、今日はいよいよ《人の国》へ行く日ね」
「うん、そうだね。ねぇ、アゴ母さん。チビは大丈夫だよね?」
「サム。もうチビの事は考えなくていいのよ。今は自分の事を考えなさい。いいわね」
「でも、やっぱり、心配だよ……」
「まあね、チビが生まれた時から一緒に居るものね」
「ちゃんとニセイが面倒見てくれるといいんだけど……」
「サム、もうなる様にしかならないんだから、ブチやニセイに任せなさい!」
「……はい、アゴ母さん」
アゴ母さんはサムの心配症な所が、逆に心配になってしまいます。何度、ブチやニセイに頼んだのだから、大丈夫だと言っても、心配してしまうので、アゴ母さんはサムの気質なのだろうと思うようにしました。
「サム、準備は終わったの?まだなら手伝うわよ」
「えぇっと、準備は終わったよ。アゴ母さん」
「そうなのね。あとは長老から、お迎えの連絡を待つだけね」
「そうだね。……ねぇ、アゴ母さん……」
「なあに、改まって」
「あのね、今まで育ててくれてありがとう」
「まあまあサム、そんな今生の別れみたいに言わないで……」
「だって、長老様も言ってたでしょ……。帰って来れるかわからないって……」
「そうね。……母さんは針の穴ぐらいの小さい望みでも、サムが帰って来ると信じてるわ」
「そうだね、アゴ母さん。僕も帰って来れるのを信じる事にするね」
「そうよ、サム。信じる心を持ってれば、叶った時の喜びもひとしおになるわ。だからサムも信じましょうね」
「うん、僕も信じるよ……」
サムはニセイに比べると、大人びて見え、思慮深く見えますが、まだまだ小さな子どもに代わりないのです。その為、アゴ母さんはサムにこの《ねこの国》の事をおぼろげでもいいから、覚えていて欲しくて、こちらに帰って来られる事を信じる様に話しました。
サムがもう少し小さい頃は、今のチビの様にブチの後ろを着いて回っていました。その為に今でも、ブチが大好きなのです。ブチも小さい頃から面倒をみていたサムが可愛くて仕方ない様です。
反対にニセイはブチを嫌っていた様に、アゴ母さんは思います。生まれて歩ける様になった頃は、サムとニセイは2人で遊んでいたと、アゴ母さんは記憶しています。そんな時に、ニセイとサムの体格差に気が付きました。
この体格差は、ニセイがサムの分のご飯を食べてしまっていた為に起こった事でした。
アゴ母さん自身もニセイにサムのご飯を食べない様に注意をしていましたが、ブチにも注意してくれる様に頼んだ事がありました。
多分、ニセイがブチを嫌っているのは、この事が原因だろうと、アゴ母さんは思っています。このニセイがブチを嫌ってしまった事には、ブチに悪い事をしたとアゴ母さんは思っています。
アゴ母さんとサムが《人の国》へ行く準備の話をしていたら、長老から伝言が来ました。長老からの伝言を持って来てくれたのは、クロの母親のチィでした。
「アゴさん。長老から手紙を預かって来たわよ」
「まあ、チィさん。ありがとう」
「あ、チィおばさん。今日は」
「あらぁ、サムちゃん。そういえば、いよいよ《人の国》に行くのよね」
「はい、そうです。クロちゃんにはお世話になりました」
「まあ、サムちゃん。いいのよ、そんな事ないわ。クロの方がサムちゃんにお世話になってたもの」
「でも、《人の国》に行くとなかなか帰って来れないから……」
「そ、そうだったわね。おばさん、忘れてたわ。ゴメンなさいね、サムちゃん」
「ううん。僕もゴメンなさい。チィおばさん」
「さぁ、サムもチィさんも、そんな辛気くさい顔をしないで……」
「そうだった。僕、そんなに辛気くさい顔してた?アゴ母さん」
「えぇ、2人とも、辛気臭かったわよ。サムはそんな顔してると、チビが心配するわよ」
「えぇ~、それは困るよ!……またチビが離れなくなっちゃう!」
「そうよ。チビの心配なんかしてられないわよ、サム」
「うへぇ~。笑顔、笑顔」
「じゃぁ、アゴさん、サムちゃん、私はもう行くわね」
「……ありがとう、チィさん」
「チィおばさん、ありがとう!」
チィはアゴ母さんとサムに暇の挨拶をすると、帰って行きました。それをアゴ母さんとサムは見送りました。
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