月の沙漠の物語〜ある少女の話〜

榊咲

文字の大きさ
上 下
18 / 22
③街へ

⑴次のオアシスへ①

しおりを挟む
 ユーリとセイの勉強はオアシスへ来てからずっと続いていたスコールの所為で、次のオアシスへ行く事が出来なかったので、順調に進み、詩集を3/1はユーリも読めるようになったからです。

「ユーリさんは優秀ですね」
「そうですか?じゃぁ、セイさんが優秀だからですね!」
「そうじゃないですよ。僕は単語の読み方をユーリさんに教えてるだけですからね」

「だって、それだって、知っていなくっちゃ教えられないでしょう?」
「そうですね。僕は自分の事は忘れてますからね」
「だから!セイさん、そんな事言わないでよ!私が言ってるのが違うって知ってるでしょう?」

「ゴメンね。ユーリさん。……自分の事がわからないって言うのが、こんなに辛いって思って無かったから……」
「ううん、私が思い出させちゃったんだから。謝るのは私だよ。セイさん、御免なさい」
「……ユーリさん、ありがとう。あなたが僕の気持ちを紛らわせてくれてたのはわかってたんだ」

 セイはユーリの気遣いに感謝していました。この商隊キャラバンの皆がユーリと同じように、記憶を喪って沙漠で倒れていた自分を助けて、仲間に加えてくれた事にも感謝しかありませんでした。

 セイは次の街までで、この旅が終わってしまうのが、この商隊キャラバンから離れるのが寂しく、置いていかれる様な気持ちになるのです。自分の記憶が無いからそんな思いになるのだろうと、セイは思っていたのですが、この少女との勉強は、そんなセイの気持ちに変化をもたらしていた様です。

(僕はユーリさんと離れたくないんだ。側にいて、もっと見ていたい!)

 そんな風に思っているセイに対し、ユーリは相手をしてくれる、優しいお兄さんだと思っているようにセイには映ります。どうしたらユーリに、この気持ちをわかってもらえるのかと、日々考えていました。

 そんなある日、スコールも終わり、沙漠を歩く事が出来るようになったとヒロトから言われたのです。そうなれば、もうこのオアシスにいる事はない為に急ピッチで、出発の準備が行われていきました。

「さあ、準備はいいか?」
「ヒロト、オレは少し先に言ってるぜ!」
「あぁ、悪いな。ダイ」

「いいてことよ!オ~イ、オメエら、行くぞ!」
「「「「「おお!」」」」」
「ダイ、頼んだぞ!」

 ヒロトの言葉に護衛隊長のダイは片手を挙げることで応えて、部下数名を連れて先行して出発しました。それに続く様に商隊キャラバンの荷物を載せたラクダ隊が後に続きます。

「さあ、ユーリ。オレ達も続くぞ!」
「は~い、お父さん」
「あぁ、セイもみんなと一緒に来てくれよ」
「はい、わかりました」

 ヒロトがユーリと一緒にラクダに乗って続いて歩いて行きます。それを見送ってセイは使用人達の元に向かって行きました。そこで一緒にラクダに乗ってくれる相手を見つけて、列に加わりました。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョンを探索する 配信中にレッドドラゴンを手懐けたら大バズりしました!

海夏世もみじ
ファンタジー
 旧題:動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョン配信中にレッドドラゴン手懐けたら大バズりしました  動物に好かれまくる体質を持つ主人公、藍堂咲太《あいどう・さくた》は、友人にダンジョンカメラというものをもらった。  そのカメラで暇つぶしにダンジョン配信をしようということでダンジョンに向かったのだが、イレギュラーのレッドドラゴンが現れてしまう。  しかし主人公に攻撃は一切せず、喉を鳴らして好意的な様子。その様子が全て配信されており、拡散され、大バズりしてしまった!  戦闘力ミジンコ主人公が魔物や幻獣を手懐けながらダンジョンを進む配信のスタート!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。 念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。 戦闘は生々しい表現も含みます。 のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。 また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり 一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。 また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や 無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという 事もございません。 また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

処理中です...