初恋の行方

サラ

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11. 小話 聖女(リリアージュ視点)

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 何だかカンジーン様と結婚して以来、不思議な力が使えるようになってしまって戸惑っている。
 カンジーン様は

「俺とリリアージュの結婚を祝福して神様が不思議な力を授けて下さったんだよ。時々、有り難うございますって祈りを捧げればいいんじゃないかな」

 そうおっしゃるので、カンジーン様に与えられた領地と実家の領地と、一応この国の安寧も祈っておいた。
 もちろん、カンジーン様の無事と幸福は一番に、ついでにと言うかカンジーン様が心配されるので私の事もお願いしておいた。実家の家族とカンジーン様の家族の幸せも一緒に。

 そうしたら、私が祈ったせいとは限らないのだけれど、領地は豊作で気候も安定した。国全体も領地ほどではないけど例年より作物が良く実り、気候も少しだけ穏やかになった、と皆が言う。それはけっして私が祈ったせいではないと思うけど。

「いやいや、リリアージュの祈りが天に届いたのだと思うよ」
「そうだな。リリアージュの周りが特に恩恵を受けている。それに気づいてはいないかもだが、時々お前の身体から光の粒が漏れている」
「リリアージュが王宮に来ると、敬虔な信者はそっと陰から祈りを捧げているな」
「まぁ、良いんじゃないか。リリアージュが幸せならば」
「ええ、私、とても幸せです」

 私が幸せの元であるカンジーン様の顔を思い浮かべながらそう言うと、周りに金色の光の粒が舞い散った。光の粒はそのままフワリと空中に消えていくけど、一部はお父様とお兄様の身体に入っていった。
 今日はカンジーン様が王宮に出仕しているので、私も一緒に付いて来てしまった。そして宰相の執務室に来ている。少し前までこの部屋でお仕事をしていたと考えると少し前なのに懐かしい感じがする。
 今はお父様のお手伝いをお兄様がしているので二人を前にして、作業の効率化について話をしていたけど、ちょっと休憩してオヤツを食べる事になった。オヤツは私が作った新作のチーズケーキ。カンジーン様にはとても好評だったし、お父様とお兄様も美味しそうに食べてくれるのが嬉しい。

「おやおや、幸せそうでなによりだよ」
「本当に」
「それなのに、聖国に招かれてしまうなんて、心配だ」
「聖女として認定して、生活はこれまでと変わらないけど、3年に一度だけ聖国で祈りを捧げてほしい、なんて」
「お父様、私は聖女ではありませんよ」
「それがなぁ、人からもよその国からも聖女と思われているらしい。幸いな事に聖女が穏やかに幸せに暮らす事が神のお気持ちに沿う事になる、とされているから無理難題は言われないが」
「我が国としてはお前の気持ち次第、という事で話が纏まっているんだが、どうする?」
「多分、伺ったほうが良いんでしょうね」
「そうだな。新婚旅行を兼ねて行くか?」
「新婚旅行!」
「国同士の話になるし、カンジーンが一緒なら心配いらないだろう」

 お父様の言葉を聞いてちょっとワクワクしてしまった。カンジーン様と一緒に旅行できるなんて楽しそう。
 聖女に認定されるなんておこがましいけど、旅行に行けるのはちょっと嬉しいと思ってしまった。
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