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勇者候補たちの想い
81.氷狼と炎の槍
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■シベル大森林近郊
~第7次派遣1日目~
日暮れともに冷たくなった風の中で馬車が止まった。
「タケル殿、囲まれてしまったようです」
ロブが緊張した声でタケル達へ告げた。
タケルがあたりを見回すと、前方の道の脇、左右の雑木林の中、振り返ると後方の道沿いにも黄色い目が光っている。
まだ、20メートル以上離れているが、全部で10頭以上はいるだろう。
氷獣化した狼だ。
「アキラさん、後ろをお願い。ナカジーは俺の側から離れないで、炎を出す用意だけしといて!」
荷台の二人に短く声を掛けて、タケル自身も荷台から槍と刀を掴む。
「ロブさん、剣はこれを使ってください。これは、炎が出続ける剣です」
「そんな剣が? 本当に?」
「ええ、私を信じてください。馬車の前のヤツをお願いします」
ロブは頷いて、刀を腰に差してからゆっくりと前方へ足を運んだ。
狼達は周りを回りながら、ゆっくりと距離を詰めてくる。
ナカジーも緊張した様子でタケルと馬車の横に並んだ。
見える範囲だけで3匹の狼がこちらの様子を伺っていた。
タケルは槍の穂先へ祈りを込めた。
「ファイア!」
穂先に火がついた!
辺りが炎に照らされて明るくなる。
-バキ!-ギャン!!-
馬車の後方から、氷が割れる音と狼の鳴き声が聞こえた。
アキラさんがさっそく仕掛けたようだ、戦いの狼煙が上がった!
「ナカジー 2メートル先に10秒の炎お願い!」
「了解! ファイア!」
50cmぐらいの炎が立ち上がると同時に、タケルは左手を炎へ掲げた!
「ウィンド!」
炎にぶつかった風が火炎風となって狼へ向かって真っ直ぐに伸びていく!
-ジュワ!!-ギャィーン!!-
火炎風を浴びた狼が後ろへ飛び下がった。
タケルは素早く横に移動しながら火炎風で残りの2匹の狼をなぎ払う。
-ギャン! ギャン!-
狼は3匹とも逃げていった。
「ナカジー、反対側行くよ!」
二人が馬車の反対側へ回り込むと同時に狼がタケルへ飛び掛った!
「ファイア!」
タケルが掛け声と共に右手の槍を狼に突き出す!
槍の穂先から炎が真っ直ぐ伸びる!
-ジュッ! ギャイーン!-
氷が溶ける音と肉が焦げる匂いに、狼の悲鳴が重なる。
悲鳴を上げたヤツの後ろにいた2匹は、その場で立ち止まって様子を見ていたが、タケルが槍を構え直すのを見て、雑木林の中へ戻って行った。
前方に目を向けると、ロブが炎をまとった刀で狼を真っ二つにしたところだった。
周囲に2匹横たわっているが、囲んでいた狼は全て逃げたようだ。
「アキラさん、大丈夫ですか!」
「うん、終った」
馬車の後方に大声をかけたが、小さな返事が返って来ただけだ。
槍の炎を近づけると暗くなって来た道から、アキラさんが歩いてくるのが見えた。
散歩を終えたぐらいの感じだった。
「何匹やっつけたんですか?」
「4匹、でも骨折ぐらい」
トドメは指してないという事らしい。
タケルは自分が槍で仕留めた狼に炎を近づけて確認する。
体表はほとんど1cmぐらいの氷で覆われている。
槍の柄で叩いても、厚み以上の硬度があるようで1cmの氷でも割れない。
炎が貫いた首の下は綺麗な真円で氷が溶けて、狼の首自体を炎が貫通していた。
パパスが作ってくれた炎の槍は穂先から炎を自在に伸ばすことが出来る。
ファイアランスと違って、まったく体も疲れないし、穂先自体が当たらなくてもOKだ。
「タケル殿、この剣は凄いです!!」
ロブが興奮しながら戻って来た。
「そうでしょ、魔法力がほとんど無くても自在に使えるはずですから」
「はい、通常の剣技があれば、強力な炎魔法が駆使できました。氷魔獣など紙のように切れます、本当に凄い剣ですよ」
この刀にはもう一つ秘密があるが、ダイスケが使うまでは内緒にしておこう。
ロブも3匹倒していた、15匹ぐらいの狼に囲まれていたことになる。
炎魔法を使えば追い払うのは簡単だが、ちょっと焦げる程度でダメージは弱い。
やはり、武器を使った攻撃が必要になるのだろう。
既に日は完全に落ちたので、聖教ランプに火を灯して馬車を進めた。
荷馬車はすぐに村長の家に着いた、馬を入れる納屋があったので中に入れておく。
だが、ロブは心配なので、今晩は外で馬の番をするため馬車で寝ると言う。
(寒いし、危険だな)
タケルは炎の魔法石を4つ取り出して、納屋から離れた場所へ半円を描くように並べた。
「ファイア」「ファイア」「ファイア」「ファイア」
「これは!」
驚くロブの前に高さ2メートルぐらいの炎柱が4本立ち上がった。
「私が消すまで消えませんから、安心して一緒に休みましょう」
ダイスケから借りた時計では19時過ぎだった。
宴会を始めるにはちょうど良い時間だ。
荷台から、加工肉、調味料、パスタ、果実酒のビンが入ったリュックを手分けして下ろす。
村長の家のかまどを勝手に拝借して、ナカジーが加工肉を鉄板で焼き始める。
部屋中に香ばしい匂いが漂ってきた。
そろそろ乾杯の時間だ!
「では、氷狼の討伐と村への到着を祝してカンパーイ!!」
ロブも見よう見まねでカップをぶつける。
乾杯後に口に入れた加工肉の味に驚いている。
「ロブさん、こちらのコショウか辛子を使うと更に美味しくなりますよ」
「!! 美味い!」
コショウが気に入ったようだ、ベーコン、コショウ、パン、果実酒のループが始まった。
ナカジーもかいがいしく焼きながら口も止まらない、ガンガン食ってる。
「タケル。今日の狼は今までよりも随分手強かったんじゃない?」
「そうだね、だけど熊も出るからね、そろそろ気合い入れないと死んじゃうからね」
ナカジーは目を見開いたが、聞かなかったかのように肉を焼きに行ってくれた。
「アキラさんはどうでした?」
「うん、あのぐらいなら楽勝かな」
「どのぐらい離れたところから、パンチを打っているんですか?」
「今日は10メートルぐらい。左ジャブで大丈夫」
アキラさんの強化策は当面不要だな。
「タケル殿、あの剣ですが、一体どのような・・・」
タケルは魔法石とバトラーから聞いた話を伝えた。
「そのような石があるとは、初めて聞きました」
「あまり知られていないようですね、バトラー司教もそう言っていましたから」
それが実際に武器に加工できたのはラッキーだった。
まさに氷獣を倒すために・・・
ひょっとして、これも神の与える恩恵と試練なのか?
~第7次派遣1日目~
日暮れともに冷たくなった風の中で馬車が止まった。
「タケル殿、囲まれてしまったようです」
ロブが緊張した声でタケル達へ告げた。
タケルがあたりを見回すと、前方の道の脇、左右の雑木林の中、振り返ると後方の道沿いにも黄色い目が光っている。
まだ、20メートル以上離れているが、全部で10頭以上はいるだろう。
氷獣化した狼だ。
「アキラさん、後ろをお願い。ナカジーは俺の側から離れないで、炎を出す用意だけしといて!」
荷台の二人に短く声を掛けて、タケル自身も荷台から槍と刀を掴む。
「ロブさん、剣はこれを使ってください。これは、炎が出続ける剣です」
「そんな剣が? 本当に?」
「ええ、私を信じてください。馬車の前のヤツをお願いします」
ロブは頷いて、刀を腰に差してからゆっくりと前方へ足を運んだ。
狼達は周りを回りながら、ゆっくりと距離を詰めてくる。
ナカジーも緊張した様子でタケルと馬車の横に並んだ。
見える範囲だけで3匹の狼がこちらの様子を伺っていた。
タケルは槍の穂先へ祈りを込めた。
「ファイア!」
穂先に火がついた!
辺りが炎に照らされて明るくなる。
-バキ!-ギャン!!-
馬車の後方から、氷が割れる音と狼の鳴き声が聞こえた。
アキラさんがさっそく仕掛けたようだ、戦いの狼煙が上がった!
「ナカジー 2メートル先に10秒の炎お願い!」
「了解! ファイア!」
50cmぐらいの炎が立ち上がると同時に、タケルは左手を炎へ掲げた!
「ウィンド!」
炎にぶつかった風が火炎風となって狼へ向かって真っ直ぐに伸びていく!
-ジュワ!!-ギャィーン!!-
火炎風を浴びた狼が後ろへ飛び下がった。
タケルは素早く横に移動しながら火炎風で残りの2匹の狼をなぎ払う。
-ギャン! ギャン!-
狼は3匹とも逃げていった。
「ナカジー、反対側行くよ!」
二人が馬車の反対側へ回り込むと同時に狼がタケルへ飛び掛った!
「ファイア!」
タケルが掛け声と共に右手の槍を狼に突き出す!
槍の穂先から炎が真っ直ぐ伸びる!
-ジュッ! ギャイーン!-
氷が溶ける音と肉が焦げる匂いに、狼の悲鳴が重なる。
悲鳴を上げたヤツの後ろにいた2匹は、その場で立ち止まって様子を見ていたが、タケルが槍を構え直すのを見て、雑木林の中へ戻って行った。
前方に目を向けると、ロブが炎をまとった刀で狼を真っ二つにしたところだった。
周囲に2匹横たわっているが、囲んでいた狼は全て逃げたようだ。
「アキラさん、大丈夫ですか!」
「うん、終った」
馬車の後方に大声をかけたが、小さな返事が返って来ただけだ。
槍の炎を近づけると暗くなって来た道から、アキラさんが歩いてくるのが見えた。
散歩を終えたぐらいの感じだった。
「何匹やっつけたんですか?」
「4匹、でも骨折ぐらい」
トドメは指してないという事らしい。
タケルは自分が槍で仕留めた狼に炎を近づけて確認する。
体表はほとんど1cmぐらいの氷で覆われている。
槍の柄で叩いても、厚み以上の硬度があるようで1cmの氷でも割れない。
炎が貫いた首の下は綺麗な真円で氷が溶けて、狼の首自体を炎が貫通していた。
パパスが作ってくれた炎の槍は穂先から炎を自在に伸ばすことが出来る。
ファイアランスと違って、まったく体も疲れないし、穂先自体が当たらなくてもOKだ。
「タケル殿、この剣は凄いです!!」
ロブが興奮しながら戻って来た。
「そうでしょ、魔法力がほとんど無くても自在に使えるはずですから」
「はい、通常の剣技があれば、強力な炎魔法が駆使できました。氷魔獣など紙のように切れます、本当に凄い剣ですよ」
この刀にはもう一つ秘密があるが、ダイスケが使うまでは内緒にしておこう。
ロブも3匹倒していた、15匹ぐらいの狼に囲まれていたことになる。
炎魔法を使えば追い払うのは簡単だが、ちょっと焦げる程度でダメージは弱い。
やはり、武器を使った攻撃が必要になるのだろう。
既に日は完全に落ちたので、聖教ランプに火を灯して馬車を進めた。
荷馬車はすぐに村長の家に着いた、馬を入れる納屋があったので中に入れておく。
だが、ロブは心配なので、今晩は外で馬の番をするため馬車で寝ると言う。
(寒いし、危険だな)
タケルは炎の魔法石を4つ取り出して、納屋から離れた場所へ半円を描くように並べた。
「ファイア」「ファイア」「ファイア」「ファイア」
「これは!」
驚くロブの前に高さ2メートルぐらいの炎柱が4本立ち上がった。
「私が消すまで消えませんから、安心して一緒に休みましょう」
ダイスケから借りた時計では19時過ぎだった。
宴会を始めるにはちょうど良い時間だ。
荷台から、加工肉、調味料、パスタ、果実酒のビンが入ったリュックを手分けして下ろす。
村長の家のかまどを勝手に拝借して、ナカジーが加工肉を鉄板で焼き始める。
部屋中に香ばしい匂いが漂ってきた。
そろそろ乾杯の時間だ!
「では、氷狼の討伐と村への到着を祝してカンパーイ!!」
ロブも見よう見まねでカップをぶつける。
乾杯後に口に入れた加工肉の味に驚いている。
「ロブさん、こちらのコショウか辛子を使うと更に美味しくなりますよ」
「!! 美味い!」
コショウが気に入ったようだ、ベーコン、コショウ、パン、果実酒のループが始まった。
ナカジーもかいがいしく焼きながら口も止まらない、ガンガン食ってる。
「タケル。今日の狼は今までよりも随分手強かったんじゃない?」
「そうだね、だけど熊も出るからね、そろそろ気合い入れないと死んじゃうからね」
ナカジーは目を見開いたが、聞かなかったかのように肉を焼きに行ってくれた。
「アキラさんはどうでした?」
「うん、あのぐらいなら楽勝かな」
「どのぐらい離れたところから、パンチを打っているんですか?」
「今日は10メートルぐらい。左ジャブで大丈夫」
アキラさんの強化策は当面不要だな。
「タケル殿、あの剣ですが、一体どのような・・・」
タケルは魔法石とバトラーから聞いた話を伝えた。
「そのような石があるとは、初めて聞きました」
「あまり知られていないようですね、バトラー司教もそう言っていましたから」
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