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勇者候補たちの想い
73.アイオミー司教と魔法ロッド
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■皇都セントレア レストラン
~第6次派遣3日目~
枢機卿との面会を終えたタケル達はレストランでナカジー達と合流した。
「教会はどうだった?」
「枢機卿も司教も協力的だったよ。昼食後に北と東の大教会に連れて行ってもらう予定」
教会での話を二人にも説明しておいた。
「そっちはどうだったの、何か面白いものあった?」
「やっぱり首都よね~。物の種類が全然違うのよ」
「ええ、武器や工具なんかも種類がたくさんありましたよ」
(時間があれば明日見て周るか)
ナカジーは16時上がりなのでお小遣いを渡して、マリンダと一緒に宿へ戻ってもらうことにした。
夕方まで適当に遊んでくれるだろう。
■皇都大教会 転移の間
タケルはダイスケをリーブス司教に紹介してから、転移の間へ連れて行って貰った。
先に北方大教会へ行くそうだ。
ここの転移の間は聖教石が30本ぐらいあって、中央から同心円状に並んでいた。
円の中心にタケル達を立たせたリーブスは、杖などを使わずに黙って目を閉じた。
一瞬で周囲の景色が変わる。
さっきよりも聖教石の数が半分ぐらいある部屋に移動している。
「これは・・・」
リーブスがつぶやいた。
恐らく気温の変化を感じたのだろう。
不自然なほど寒い。
真冬と言うほどではないが、屋内でも上着が欲しくなる気温だった。
リーブスは転移の間を出て、すぐ向かいに合った大きな扉を開けて中に入っていく。
「これは、リーブス殿。突然にどうされたのですか?」
扉の中からは温かい空気が流れ出てくる。
部屋の壁には暖炉があり、火が起こされていた。
扉に向かってリーブスと同じぐらいの年齢に見える男が歩いてきた。
「アイオミー殿。今日はお客さんをお連れしました。こちらはスタートスの勇者、タケル様とお仲間です」
「はじめまして、アイオミーさん。タケルと言います、よろしくお願いします」
「勇者様、アイオミーと申します。スタートス? はて、どちらの町でしたか?」
「西方州都ムーアの近くですよ。アイオミー殿」
「ああ、一番新しい勇者の方々なのですね」
「タケル様達はアイオミー殿に教えて欲しいことがあるそうです」
「はい。魔法のロッドについて、教えていただきたいのです。こちらの司教が一番詳しいとサイオンさんから聞きましたので」
「ロッドですか? 確かに私の得意分野ではありますが、何をお知りになりたいのですか?」
「ロッドに使う木と魔法の相性を知りたいのです」
「なるほど・・・、かなり高度なご質問ですが、勇者様はどの魔法を使われるのですか?」
「フフッ、アイオミー殿。 それはタケル殿には聞いてはいけない質問ですな。既に、土魔法以外はすべて魔法導師並みにお使いになります」
「・・・」
「本当ですよ、私達は実際に見て、驚きを通り越してあきれつつありますから」
リーブスは苦笑しながら、アイオミーに向けて何度も頷いている。
「はい、色々使えるのですが、できれば一つのロッドで火と水の聖教石をはめ込んでみたいのですが」
「火と水の聖教石? どう言う意味なのでしょうか?」
「聖教石はたくさんあるのですが、ロッドを何本ももちたくないので、ロッドの両端につけられないかなと考えていました」
「聖教石が沢山ある? ? ?」
(内緒にすると話が進まないな)
「ダイスケ、刀の聖教石を外して見せてよ」
ダイスケが柄頭から外した炎聖教石と予備の風聖教石をテーブルの上に置いた。
「これは!!」
リーブスとアイオミーが二人とも身を乗り出して、聖教石を見比べている。
「タケル殿、これはどうされたのですか?」
「えーと、私が作っています」
「勇者殿が作る・・・、この色の聖教石をですか・・・」
アイオミーは衝撃を受けているようだが、リーブスはかなり慣れてきたのか苦笑して首を横に振っている。
「剣は相手によって、石を付け替えて戦おうと思っていますが、ロッドは何とか一本で共用できないかと」
「なるほど、お話はわかりましたが、木と魔法の適性と言うことでしたら、共用は難しいですね。魔法に応じて最も適した木は異なりますから」
(やはり、そうなのか)
「では、それぞれにあった木を教えていただけますか?」
「炎は柊の木、水はモミの木、風は楓の木、土は楡の木、そして光はニワトコの木。私の調べではそのようになっております」
(なるほど、しかしどうやって木を集めるか・・・)
「ですが、単に木を切ってくれば良いものでもありません。ロッド用に取り出した木の最も硬い部分を削り、しっかり乾燥させねばその力を出してくれないでしょう」
「さらに、加工が必要なんですね・・・」
(困ったな、そこまで考えてなかった)
「タケル殿、もし本物のロッドが必要なのでしたら、この国で一人だけいるロッド職人をお尋ねになるのが良いでしょう」
「ロッド職人? この国に一人しか居ないのですか?」
「ええ、ロッドにそこまでこだわる魔法士はおりませんので、私やその職人は魔法士の中でも変わり者の部類に入りますな」
「その方はどちらにいるのですか?」
「この北方州のシベル大森林に住んでおります」
~第6次派遣3日目~
枢機卿との面会を終えたタケル達はレストランでナカジー達と合流した。
「教会はどうだった?」
「枢機卿も司教も協力的だったよ。昼食後に北と東の大教会に連れて行ってもらう予定」
教会での話を二人にも説明しておいた。
「そっちはどうだったの、何か面白いものあった?」
「やっぱり首都よね~。物の種類が全然違うのよ」
「ええ、武器や工具なんかも種類がたくさんありましたよ」
(時間があれば明日見て周るか)
ナカジーは16時上がりなのでお小遣いを渡して、マリンダと一緒に宿へ戻ってもらうことにした。
夕方まで適当に遊んでくれるだろう。
■皇都大教会 転移の間
タケルはダイスケをリーブス司教に紹介してから、転移の間へ連れて行って貰った。
先に北方大教会へ行くそうだ。
ここの転移の間は聖教石が30本ぐらいあって、中央から同心円状に並んでいた。
円の中心にタケル達を立たせたリーブスは、杖などを使わずに黙って目を閉じた。
一瞬で周囲の景色が変わる。
さっきよりも聖教石の数が半分ぐらいある部屋に移動している。
「これは・・・」
リーブスがつぶやいた。
恐らく気温の変化を感じたのだろう。
不自然なほど寒い。
真冬と言うほどではないが、屋内でも上着が欲しくなる気温だった。
リーブスは転移の間を出て、すぐ向かいに合った大きな扉を開けて中に入っていく。
「これは、リーブス殿。突然にどうされたのですか?」
扉の中からは温かい空気が流れ出てくる。
部屋の壁には暖炉があり、火が起こされていた。
扉に向かってリーブスと同じぐらいの年齢に見える男が歩いてきた。
「アイオミー殿。今日はお客さんをお連れしました。こちらはスタートスの勇者、タケル様とお仲間です」
「はじめまして、アイオミーさん。タケルと言います、よろしくお願いします」
「勇者様、アイオミーと申します。スタートス? はて、どちらの町でしたか?」
「西方州都ムーアの近くですよ。アイオミー殿」
「ああ、一番新しい勇者の方々なのですね」
「タケル様達はアイオミー殿に教えて欲しいことがあるそうです」
「はい。魔法のロッドについて、教えていただきたいのです。こちらの司教が一番詳しいとサイオンさんから聞きましたので」
「ロッドですか? 確かに私の得意分野ではありますが、何をお知りになりたいのですか?」
「ロッドに使う木と魔法の相性を知りたいのです」
「なるほど・・・、かなり高度なご質問ですが、勇者様はどの魔法を使われるのですか?」
「フフッ、アイオミー殿。 それはタケル殿には聞いてはいけない質問ですな。既に、土魔法以外はすべて魔法導師並みにお使いになります」
「・・・」
「本当ですよ、私達は実際に見て、驚きを通り越してあきれつつありますから」
リーブスは苦笑しながら、アイオミーに向けて何度も頷いている。
「はい、色々使えるのですが、できれば一つのロッドで火と水の聖教石をはめ込んでみたいのですが」
「火と水の聖教石? どう言う意味なのでしょうか?」
「聖教石はたくさんあるのですが、ロッドを何本ももちたくないので、ロッドの両端につけられないかなと考えていました」
「聖教石が沢山ある? ? ?」
(内緒にすると話が進まないな)
「ダイスケ、刀の聖教石を外して見せてよ」
ダイスケが柄頭から外した炎聖教石と予備の風聖教石をテーブルの上に置いた。
「これは!!」
リーブスとアイオミーが二人とも身を乗り出して、聖教石を見比べている。
「タケル殿、これはどうされたのですか?」
「えーと、私が作っています」
「勇者殿が作る・・・、この色の聖教石をですか・・・」
アイオミーは衝撃を受けているようだが、リーブスはかなり慣れてきたのか苦笑して首を横に振っている。
「剣は相手によって、石を付け替えて戦おうと思っていますが、ロッドは何とか一本で共用できないかと」
「なるほど、お話はわかりましたが、木と魔法の適性と言うことでしたら、共用は難しいですね。魔法に応じて最も適した木は異なりますから」
(やはり、そうなのか)
「では、それぞれにあった木を教えていただけますか?」
「炎は柊の木、水はモミの木、風は楓の木、土は楡の木、そして光はニワトコの木。私の調べではそのようになっております」
(なるほど、しかしどうやって木を集めるか・・・)
「ですが、単に木を切ってくれば良いものでもありません。ロッド用に取り出した木の最も硬い部分を削り、しっかり乾燥させねばその力を出してくれないでしょう」
「さらに、加工が必要なんですね・・・」
(困ったな、そこまで考えてなかった)
「タケル殿、もし本物のロッドが必要なのでしたら、この国で一人だけいるロッド職人をお尋ねになるのが良いでしょう」
「ロッド職人? この国に一人しか居ないのですか?」
「ええ、ロッドにそこまでこだわる魔法士はおりませんので、私やその職人は魔法士の中でも変わり者の部類に入りますな」
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