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5歳児の憤怒
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■リーブル宮殿
先に走っている黒狼は皇帝執務室へ飛び込んだ。
俺と白虎も直ぐに追いつく。
部屋に入ると、いつも茶を飲んでいるテーブルの横にキースとアリスが立っている。
テーブルの向こう側には、人が・・
「マリー!!」
俺は絶叫して、倒れているマリーへ駆け寄ろうとした。
だが、後ろから俺を突き飛ばした白虎がマリーにのしかかる!!
「白虎!! マリーは絶対違う! やめろ!!」
俺の叫びを無視して、白虎はマリーの胴を前足で押さえつけた!!
「白虎!! 何故じゃ!!」
-グェホッ-
小さな音がマリーから聞こえた。
白虎を押しのけて駆け寄ると、口から泡と何かを吐き出している。
まだ息があるが目は閉じたままだ。
-水がいる! ヤツが叫ぶ
「アリス!直ぐに水を持って来い。キース、薬師を直ぐに連れて来い!!」
「・・・」
「ぼやぼやするな! 殺すぞ!!」
俺の絶叫を聞いて、二人は部屋から飛び出して行った。
「マリー! マリー! 死ぬな!! 絶対に死ぬでない!!」
俺は顔をグショグショにしながら、叫び続けた。
人前では泣かぬように我慢していたが、そんなものは関係ない。
マリーが死ねば、全員殺すだけだ。
必ず、殺してやる。
マリーの手前にはマリーナが倒れている。
どうでも良い。
アリスが水差しを持ってきた。
「アリス、口の中へ水を入れるのじゃ! 口の中と周りを水で洗え!!」
-頭のやつが言う、毒を残すなと
アリスは横たわったままのマリーの側に座って、俺の言うとおりにした。
水で濡れたマリーの顔は真っ白のままだ。
「薬師はまだか!!」
絶叫して振り返ると、キースと薬師が走って部屋へ来た。
いつの間にかハンスも部屋の中にいる。
「マリーを死なせるでない!! 絶対だ、死なせればお前も殺す!!」
叫びながら薬師と場所を代わった。
「キース、何があった!」
「はい、陛下・・」
「早く言え、容赦せぬぞ!!」
「陛下、落ち着いてください」
「ハンス、黙れ! お前でも容赦せぬ!! キース! いますぐ話せ!」
「はい、今日もマリーさんがお茶の準備をしていました・・・、マリーナ様が実家から送られてきた菓子も陛下に食べていただこうと、お持ちになったのです。ですが、マリーさんが陛下のお口に入る前に、自分が食べると言って・・・、マリーナ様の方が先に菓子を食べられて・・・、少しするとマリーナ様が苦しみ出して、直ぐにマリーさんも・・・」
-何故食べる! 俺が来るまで待てば良いだけではないか!
「アリス! 貴様も同じか!!」
怯えきっているが、頷いている
「ハンス! 今すぐハーマンを呼べ!近衛騎兵隊は直ぐに発進できるようにするのじゃ!!」
「陛下、お待ち・・」
「黙れと言ったであろう! 今すぐだ!」
ハンスは俯いて部屋を出て行った。
あいつだろうと、白玉だろうと関係ない。
世界の全てが敵だ。
「薬師よ! 大丈夫か! マリーは大丈夫か!」
「恐れながら、まだ息はございますが、非常に危ない状態でございます。まずは、ゆっくり休める場所へ移します」
「わかった、必ず助けろ! 必ずだぞ!!」
マリーの手を握る。冷え切って生気を感じられない。
涙が握った手の上に落ち続ける。
-死ぬな! 絶対に死んではならぬ!!
マリーは柔らかい布に載せられて、近衛兵が寝所へ運んでいった。
マリーナを触った薬師は首を横に振って、マリーに付き添っていった。
それで良い。マリーだけ気にかければ良いのだ。
床に膝をついて涙を流し続ける俺に、温かい毛が両側から引っ付いてくる。
そうか、こいつらはマリーがどれだけ大事か解ってくれていたのだな。
泣くよりもやることがある。
上着の袖で、涙をぬぐって立ち上がる。
必ず、犯人を見つける。
見つからなければ、俺が死ぬまで疑わしいやつらを殺し続ける。
帝国なら必ず滅ぼす。
絶対だ。
廊下から走ってくる音が聞こえる。
「陛下、遅くなりました。」
「ハーマン! 近衛兵を率いて、シュミット子爵の家へ向かえ、家の者を全員ひっ捕らえて、今すぐ連れて来い! 使用人も含めて、絶対殺さずに連れて来い。良いな!!」
「ハッ 承知しました!」
来た時と同じように走って去っていった。
部屋には俺とハンスとマリーナの死体だけが残った。
「寝所へ戻る。ハーマンが戻るまで誰も来るな」
「陛下・・・」
俺は無視して、白虎に跨った。
黒狼は俺の願いが解ってくれた。
マリーの寝所に向かって歩き出している。
■リーブル皇帝 寝所
俺は床に座って、ベッドに寄りかかっている。
白虎は横で俺を見て、心配してくれている。
親友たちには悪いと思う。
いままで色々助けてくれたのに、俺はもう皇帝などをやるつもりは無い。
国事、戦争、人の命、法、農業、民、全てどうでも良い。
もし、マリーが助からなければ・・・
俺には不安と怒りしかない。
即位式の不安など不安ですらなかった、あんなものどうでも良い。
やらなければ良いだけだ。
絶対に許さない。
必ず復讐する。
同じ考えがぐるぐる回る。
頭のヤツも何も言わない。こいつなりに心配している。
だが、それもどうでもいい。
俺にはマリーしかいないのに、何故奪う!!
やはり許せない。
この世の全てが許せない。
-コン、コン、コン-
「陛下、ハーマンが戻りました」
もう一度涙を拭いて、立ち上がる。
絶対許さない。
絶対にだ。
先に走っている黒狼は皇帝執務室へ飛び込んだ。
俺と白虎も直ぐに追いつく。
部屋に入ると、いつも茶を飲んでいるテーブルの横にキースとアリスが立っている。
テーブルの向こう側には、人が・・
「マリー!!」
俺は絶叫して、倒れているマリーへ駆け寄ろうとした。
だが、後ろから俺を突き飛ばした白虎がマリーにのしかかる!!
「白虎!! マリーは絶対違う! やめろ!!」
俺の叫びを無視して、白虎はマリーの胴を前足で押さえつけた!!
「白虎!! 何故じゃ!!」
-グェホッ-
小さな音がマリーから聞こえた。
白虎を押しのけて駆け寄ると、口から泡と何かを吐き出している。
まだ息があるが目は閉じたままだ。
-水がいる! ヤツが叫ぶ
「アリス!直ぐに水を持って来い。キース、薬師を直ぐに連れて来い!!」
「・・・」
「ぼやぼやするな! 殺すぞ!!」
俺の絶叫を聞いて、二人は部屋から飛び出して行った。
「マリー! マリー! 死ぬな!! 絶対に死ぬでない!!」
俺は顔をグショグショにしながら、叫び続けた。
人前では泣かぬように我慢していたが、そんなものは関係ない。
マリーが死ねば、全員殺すだけだ。
必ず、殺してやる。
マリーの手前にはマリーナが倒れている。
どうでも良い。
アリスが水差しを持ってきた。
「アリス、口の中へ水を入れるのじゃ! 口の中と周りを水で洗え!!」
-頭のやつが言う、毒を残すなと
アリスは横たわったままのマリーの側に座って、俺の言うとおりにした。
水で濡れたマリーの顔は真っ白のままだ。
「薬師はまだか!!」
絶叫して振り返ると、キースと薬師が走って部屋へ来た。
いつの間にかハンスも部屋の中にいる。
「マリーを死なせるでない!! 絶対だ、死なせればお前も殺す!!」
叫びながら薬師と場所を代わった。
「キース、何があった!」
「はい、陛下・・」
「早く言え、容赦せぬぞ!!」
「陛下、落ち着いてください」
「ハンス、黙れ! お前でも容赦せぬ!! キース! いますぐ話せ!」
「はい、今日もマリーさんがお茶の準備をしていました・・・、マリーナ様が実家から送られてきた菓子も陛下に食べていただこうと、お持ちになったのです。ですが、マリーさんが陛下のお口に入る前に、自分が食べると言って・・・、マリーナ様の方が先に菓子を食べられて・・・、少しするとマリーナ様が苦しみ出して、直ぐにマリーさんも・・・」
-何故食べる! 俺が来るまで待てば良いだけではないか!
「アリス! 貴様も同じか!!」
怯えきっているが、頷いている
「ハンス! 今すぐハーマンを呼べ!近衛騎兵隊は直ぐに発進できるようにするのじゃ!!」
「陛下、お待ち・・」
「黙れと言ったであろう! 今すぐだ!」
ハンスは俯いて部屋を出て行った。
あいつだろうと、白玉だろうと関係ない。
世界の全てが敵だ。
「薬師よ! 大丈夫か! マリーは大丈夫か!」
「恐れながら、まだ息はございますが、非常に危ない状態でございます。まずは、ゆっくり休める場所へ移します」
「わかった、必ず助けろ! 必ずだぞ!!」
マリーの手を握る。冷え切って生気を感じられない。
涙が握った手の上に落ち続ける。
-死ぬな! 絶対に死んではならぬ!!
マリーは柔らかい布に載せられて、近衛兵が寝所へ運んでいった。
マリーナを触った薬師は首を横に振って、マリーに付き添っていった。
それで良い。マリーだけ気にかければ良いのだ。
床に膝をついて涙を流し続ける俺に、温かい毛が両側から引っ付いてくる。
そうか、こいつらはマリーがどれだけ大事か解ってくれていたのだな。
泣くよりもやることがある。
上着の袖で、涙をぬぐって立ち上がる。
必ず、犯人を見つける。
見つからなければ、俺が死ぬまで疑わしいやつらを殺し続ける。
帝国なら必ず滅ぼす。
絶対だ。
廊下から走ってくる音が聞こえる。
「陛下、遅くなりました。」
「ハーマン! 近衛兵を率いて、シュミット子爵の家へ向かえ、家の者を全員ひっ捕らえて、今すぐ連れて来い! 使用人も含めて、絶対殺さずに連れて来い。良いな!!」
「ハッ 承知しました!」
来た時と同じように走って去っていった。
部屋には俺とハンスとマリーナの死体だけが残った。
「寝所へ戻る。ハーマンが戻るまで誰も来るな」
「陛下・・・」
俺は無視して、白虎に跨った。
黒狼は俺の願いが解ってくれた。
マリーの寝所に向かって歩き出している。
■リーブル皇帝 寝所
俺は床に座って、ベッドに寄りかかっている。
白虎は横で俺を見て、心配してくれている。
親友たちには悪いと思う。
いままで色々助けてくれたのに、俺はもう皇帝などをやるつもりは無い。
国事、戦争、人の命、法、農業、民、全てどうでも良い。
もし、マリーが助からなければ・・・
俺には不安と怒りしかない。
即位式の不安など不安ですらなかった、あんなものどうでも良い。
やらなければ良いだけだ。
絶対に許さない。
必ず復讐する。
同じ考えがぐるぐる回る。
頭のヤツも何も言わない。こいつなりに心配している。
だが、それもどうでもいい。
俺にはマリーしかいないのに、何故奪う!!
やはり許せない。
この世の全てが許せない。
-コン、コン、コン-
「陛下、ハーマンが戻りました」
もう一度涙を拭いて、立ち上がる。
絶対許さない。
絶対にだ。
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