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5歳児の農業改革
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■リーブル宮殿 皇帝謁見の間
「陛下、本日もご機嫌麗しく存じます。」
「ウム、貴殿もな。」
エドガーは長めに時間が欲しいと言う希望で、ハンスが最後の謁見としておるか。
内政は問題しかないからのう・・・
「早速ですが、本日はいくつかご報告とご相談がございます。」
「遠慮は要らぬ、言葉遣いも気にせんで良い。何なりと申せ。」
「お心遣いに感謝します。早速ですが、前内務卿から引き継がれた大規模開発工事のことでございます。私の方で改めて費用の見積もりを行ったところ、少なくとも2割以上は工事費用が水増しされておるようです。」
「更なる費用削減も可能と思いますので、西部の堤防改修と南部の大橋新設は予定通り進めても、費用は金貨35万枚が20万枚まで削減可能となります。」
「東部の大橋については、そもそもの費用を改めて見積もりいたしますが、ノットランドとの船便影響が出ない工法が見つかるまでは、一旦白紙に戻します。これにより、金貨20万枚の予算が削減となります。」
「良いであろう、貴殿の思うがままに進めよ。」
「ありがとうございます。次に小麦の生産についてですが、税として納められている量を、わが国の耕地面積を比べますと、明らかに不足しております。これには、二つの理由が考えられます。」
「1つには、面積あたりの取れ高が少なすぎること。二つには、取れ高を正確に報告していないこと。すなわち、正しく国庫に税を納めていない。 ということになります。」
「つきましては、まずは各諸侯宛に領地の広さに応じた小麦の取れ高についての目標を設定したいと存じます。」
「更に、小麦については国内の全量を新たに設立する農業協同組合を通して、流通させていただくことにします。」
「領主が目標を達成できぬ場合はどうなるのじゃ?」
「その領主から領地を召し上げていただきたく存じます。」
「なるほどのう、考えはわかるが、おそらく領主の反発は尋常ではないぞ。」
「仰せの通りですが、今のまま領主に任せておりますと、財政が行き詰ることは必定でございます。ついては、荒療治が必要かと。」
「それと、目標を達成した領主には新たな領地を与えていただきたく存じます。」
「信賞必罰ということであるか・・・、であれば来年度は達成したものへの加増だけをおこなえ、その翌年は貴殿の考えどおりにしよう。」
「領地の加増だけとおっしゃるのは、どのように?」
「先に処断した大臣どもの領地を配分すればよいであろう。」
「なるほど、一歩ずつと言うことでございますね。承知いたしました。」
「ハンスよ、即位式の際に諸侯を集める場を設けよ、余から即位の施政として皆に告げる。」
「かしこまりました。」
「陛下、先ほどの前大臣の所領についてですが、私案を申し上げてもよろしいでしょうか?」
「無論だ、そのために貴殿へ職を与えておる。」
「では、申し上げます。3大臣の保有されていた領地は、わが国の三分の一を占める広さでございます。ですので、加増で再配分されるのはそのうちの半分にとどめていただき、残りはそのまま陛下の直轄領として管理させていただきたく存じます。」
「そして、その領地へは移住の自由を認めていただきたいのです。」
「直轄領の農民は全て農業組合に加入させ、耕作は全て組合で行いますが、未開拓地域の開発と生産性の改善により、人手不足になることは必定でございます。」
-フム、新たな試みだが いくつか気になるな。
「その農業組合とやらだが、貴殿が管理するのか?」
「いえ、私は内政全般を担当いたしますので、農業担当には専任を呼び寄せたいと思っております。」
「具体的な候補がおるのか?」
「はい、フラン共和国から呼び寄せたいと思っております。」
-フランからか、会ってみてから決めるしかないな。
「良かろう、一度余の元へ連れてまいれ。」
「かしこまりました。」
「農業組合に農民を加入させると言うが、どのようにするつもりじゃ。」
「陛下の勅命をお願いしたく存じます。」
「無論、勅命を出すのは構わぬ。だが、農民どもは勅命の意味もわからぬぞ。どのように伝えるのじゃ。」
「それは・・・、陛下はこの案に反対でございましょうか?」
「いや、そうではない。反対はせぬが、仕組みを変えて人を動かすためには民への説明に工夫が必要であろう?」
-ジンシンショウアク ?
「旧領主どもの子弟を農業協同組合に入れてやれ、そやつらを通じて、農民に説明させよ。権限は与えんで良いが聞こえの良い職とそれなりの報酬を与えておけ。」
「なるほど、つなぎが必要になると言うことですね、承知いたしました。」
「だが、子弟どもが邪魔をするようであれば、遠慮なく申せ。必要な処断を行う。」
「かしこまりました。」
エドガーは頭上に黒玉を乗せて下がっていく。
思い切った改革だが、諸侯は付いて来られるようか・・・
「ハンスよ、エドガーの話をどう思ったのじゃ?」
「理屈は正しいのかもしれませんが、陛下の仰せの通り、諸侯は反発するでしょう。特に旧大臣達の所領については、一筋縄では行かないと存じます。」
大臣の子弟どもは恨んでおるだろう。
できれば、これ以上悪い評判は立てたくないが・・・
それも皇帝の役目であればいたし方あるまい。
「陛下、本日もご機嫌麗しく存じます。」
「ウム、貴殿もな。」
エドガーは長めに時間が欲しいと言う希望で、ハンスが最後の謁見としておるか。
内政は問題しかないからのう・・・
「早速ですが、本日はいくつかご報告とご相談がございます。」
「遠慮は要らぬ、言葉遣いも気にせんで良い。何なりと申せ。」
「お心遣いに感謝します。早速ですが、前内務卿から引き継がれた大規模開発工事のことでございます。私の方で改めて費用の見積もりを行ったところ、少なくとも2割以上は工事費用が水増しされておるようです。」
「更なる費用削減も可能と思いますので、西部の堤防改修と南部の大橋新設は予定通り進めても、費用は金貨35万枚が20万枚まで削減可能となります。」
「東部の大橋については、そもそもの費用を改めて見積もりいたしますが、ノットランドとの船便影響が出ない工法が見つかるまでは、一旦白紙に戻します。これにより、金貨20万枚の予算が削減となります。」
「良いであろう、貴殿の思うがままに進めよ。」
「ありがとうございます。次に小麦の生産についてですが、税として納められている量を、わが国の耕地面積を比べますと、明らかに不足しております。これには、二つの理由が考えられます。」
「1つには、面積あたりの取れ高が少なすぎること。二つには、取れ高を正確に報告していないこと。すなわち、正しく国庫に税を納めていない。 ということになります。」
「つきましては、まずは各諸侯宛に領地の広さに応じた小麦の取れ高についての目標を設定したいと存じます。」
「更に、小麦については国内の全量を新たに設立する農業協同組合を通して、流通させていただくことにします。」
「領主が目標を達成できぬ場合はどうなるのじゃ?」
「その領主から領地を召し上げていただきたく存じます。」
「なるほどのう、考えはわかるが、おそらく領主の反発は尋常ではないぞ。」
「仰せの通りですが、今のまま領主に任せておりますと、財政が行き詰ることは必定でございます。ついては、荒療治が必要かと。」
「それと、目標を達成した領主には新たな領地を与えていただきたく存じます。」
「信賞必罰ということであるか・・・、であれば来年度は達成したものへの加増だけをおこなえ、その翌年は貴殿の考えどおりにしよう。」
「領地の加増だけとおっしゃるのは、どのように?」
「先に処断した大臣どもの領地を配分すればよいであろう。」
「なるほど、一歩ずつと言うことでございますね。承知いたしました。」
「ハンスよ、即位式の際に諸侯を集める場を設けよ、余から即位の施政として皆に告げる。」
「かしこまりました。」
「陛下、先ほどの前大臣の所領についてですが、私案を申し上げてもよろしいでしょうか?」
「無論だ、そのために貴殿へ職を与えておる。」
「では、申し上げます。3大臣の保有されていた領地は、わが国の三分の一を占める広さでございます。ですので、加増で再配分されるのはそのうちの半分にとどめていただき、残りはそのまま陛下の直轄領として管理させていただきたく存じます。」
「そして、その領地へは移住の自由を認めていただきたいのです。」
「直轄領の農民は全て農業組合に加入させ、耕作は全て組合で行いますが、未開拓地域の開発と生産性の改善により、人手不足になることは必定でございます。」
-フム、新たな試みだが いくつか気になるな。
「その農業組合とやらだが、貴殿が管理するのか?」
「いえ、私は内政全般を担当いたしますので、農業担当には専任を呼び寄せたいと思っております。」
「具体的な候補がおるのか?」
「はい、フラン共和国から呼び寄せたいと思っております。」
-フランからか、会ってみてから決めるしかないな。
「良かろう、一度余の元へ連れてまいれ。」
「かしこまりました。」
「農業組合に農民を加入させると言うが、どのようにするつもりじゃ。」
「陛下の勅命をお願いしたく存じます。」
「無論、勅命を出すのは構わぬ。だが、農民どもは勅命の意味もわからぬぞ。どのように伝えるのじゃ。」
「それは・・・、陛下はこの案に反対でございましょうか?」
「いや、そうではない。反対はせぬが、仕組みを変えて人を動かすためには民への説明に工夫が必要であろう?」
-ジンシンショウアク ?
「旧領主どもの子弟を農業協同組合に入れてやれ、そやつらを通じて、農民に説明させよ。権限は与えんで良いが聞こえの良い職とそれなりの報酬を与えておけ。」
「なるほど、つなぎが必要になると言うことですね、承知いたしました。」
「だが、子弟どもが邪魔をするようであれば、遠慮なく申せ。必要な処断を行う。」
「かしこまりました。」
エドガーは頭上に黒玉を乗せて下がっていく。
思い切った改革だが、諸侯は付いて来られるようか・・・
「ハンスよ、エドガーの話をどう思ったのじゃ?」
「理屈は正しいのかもしれませんが、陛下の仰せの通り、諸侯は反発するでしょう。特に旧大臣達の所領については、一筋縄では行かないと存じます。」
大臣の子弟どもは恨んでおるだろう。
できれば、これ以上悪い評判は立てたくないが・・・
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