327 / 343
Ⅱ-166 神殿突入1
しおりを挟む
■ネフロス国 鉱山
シンディと一緒に戻って来たのは11人の猿人だった。鬼に6人殺されて、数名はどこかに隠れているらしい。戻って来た猿人には出来る範囲で治療をしてやり、美味い肉を振る舞ってやった。猿人たちは生でも食べられるらしいが、焼いた肉の方がおいしいのは俺達とおなじだった。
ドリーミア出身の鉱夫とメイも交えて焼肉を全員で腹いっぱいになるまで食べて、早めに寝ることにした。とはいっても俺はストレージの中で準備を整えることは怠らなかった。明日使う可能性のある武器や装備を人数分用意しておく。最近は使い慣れた武器を無意識で取り出せるぐらいになっているが、弾薬の整理と補充はやはり欠かせない。それにシンディ達にはお礼の品を置いて行かないといけない。
-備えあれば憂いなし。
明朝は日の出とともに出発して、神殿の1.5km地点から迫撃砲を撃ちまくった。地上にある神殿の入り口へ50発撃ちこんだ後に火山の中腹にある“上神殿”付近へも100発ぐらい撃ちこんだ。“上神殿”はドリーミアでは空飛ぶ船で入った大岩で隠された入り口のある場所だ。神殿は上と下の両方を攻撃されてパニックになっている・・・はずだ。
鉱山に居た兵士から聞いた情報では、神殿の兵士は全て死人で構成されている。兵士以外には魔法士と神官が居るらしいが、魔法士と神官には生きている人間も含まれていると言う。さらに、地上から入った入り口の奥には農場から連れ去られた女性が閉じ込められている可能性が高い。
という事で、“上神殿”には救うべき対象はいないから皆殺しにしても良いのだが、そこには“神官長”と呼ばれるボスがいる。こいつを殺すと俺達はドリーミアに戻れないかもしれない・・・。
-殺さない範囲でダメージを与えるしかない。
「じゃあ、迫撃砲は二人に任せるから、ゴーレムのあたりを適当によろしく」
「はーい♪」
サリナが取り出す砲弾を俺に変わってミーシャが発射管に落としていく、着弾地点を上空のドローンからモニターで観測してサリナが微修正を行う。二人にはこれを繰り返して神殿の入り口へ敵の意識を向けさせている。
俺はドローンのリモコンを10台並べて10機のドローンを順番に飛ばしていった。目標は迫撃砲の破壊で大岩が吹き飛んだ“上神殿”の入り口だ。ドローンには2種類の荷物を積んである。一つ目はC4爆薬とプラスチック製の粒が入ったショットガンの12ゲージ弾の箱。もう一つは少量のC4爆薬と催涙弾を10本積んだものだ。距離が遠いためリモコンの起爆装置が使えなかったので、10分後から1分おきに起爆するようにタイマー信管をセットしてある。
10機全部を入り口でホバリングさせて、最初の1機を中に突入させた。薄暗いが何とか中の様子がモニター越しに見えて来た。入ってすぐの両側に部屋があったが、どちらも瓦礫の山になっていて人は居なかった。さらに奥へ進んで行くと、突き当りの部屋で大勢の人が動いているのが見えた。鉱山や農場で倒した兵士とは違って長いローブのような服を着ている奴-神官? 魔法士?が大勢いる。ここを狙えば良さそうだった。時間も良い感じになって来たので、次のドローンのリモコンに持ち替えて中へ送り込んで行く。2機目が奥の部屋へたどり着いた時に1機目のC4が爆発した。3機目のカメラで見るとドローンも爆風に煽られて吹き飛んだ。少し火薬の量が多すぎたかも・・・、まあ過ぎたことは仕方ない。神官長が生きていることを祈るだけだ。
ショットガンの弾薬を積んだドローンを先に、続いて催涙弾ドローンを連続で奥まで突っ込ませる。土埃のために10番機のカメラでも確認できなかったが、しばらく待っていると崖の割れ目から煙が出てきたので、俺の想像通りなら生きている人間は中で涙を流して悶絶しているだろう。死人だとしても、煙に視界を奪われて苦労するはずだ。
「よし、準備完了だな。みんな車両に乗ってくれ。シンディ達はここまでで良いよ。今までありがとう。食べるものは置いて行くから、皆でケンカせずに食べてくれ」
-キイッ!? キェイゥッ! キァァウ!
メイと鉱夫を装甲戦闘車の兵員室に入れて、猿人たちとお別れしようとしたが、シンディはチタン棒を振り回して、何かを伝えようとしている。俺にも何となく判った。
「何だ?一緒について来るのか?神殿の中に入るから危ないぞ?」
-キィーゥチ! キャァアーィ!
「そうか、じゃあ、一緒に行こうか。俺達の後ろに居てくれよ。間違えて撃つと危ないからな」
-キィゥ!
シンディは嬉しそうにチタン棒を持ち上げて了解した旨を伝えてくれた。相手が言葉を理解してくれていると信じれば、何とかコミュニケーションはとれるものだと自分で感心した。
「さて、じゃあ、いよいよだ。二人とも油断しないようにね!」
「うん!大丈夫!」
「ああ、決して油断はしない」
何故かついて来る猿人たちを従えて装甲戦闘車を神殿に向かって発進させた。
■ネフロス神殿
“上神殿”の中はサトルが思っていた以上に悲惨な状態だった。死人である兵士長は両目を散弾で貫かれて昏倒した。他の魔法士も兵士も体の大部分にショットガンの粒弾が食い込み死人以外で満足に立てるものはほとんど残っていなかった。
外から響く轟音の所為で部屋に入って来たドローンのプロペラの音には誰も気が付かなかった。1機目のドローンが天井付近で爆発した時に部屋の中には30名近い人間が居たが、爆風と轟音で吹き飛ばされて、ほとんどの鼓膜が破れていた。サトルは爆弾を少なくしたつもりだったが、天井が高くない空間で使う爆薬の量としては多すぎたのだ。
それに対して地上の神殿は内部の被害は殆ど無かった。入り口の守備隊は迫撃砲を避けるために神殿の中に引き上げさせてゴーレム2体だけで警戒している。ゴーレムも迫撃砲で何度か破壊されたが、魔法士達の力でその都度修復してある。
「あいつらの緑の箱が近づいておるぞ! 引き付けてから次のゴーレムも立ちあげるぞ!」
土魔法士のリーダーが水晶球でサトル達の動きを見ながらゴーレムの傀儡をネフロスの紋章を描いた床へと置いた。
サトル達の装甲戦闘車はゴーレム迄500メートルの距離になったところで、対戦車誘導弾を発射した。サリナが正確に狙いを定めた右側のゴーレムへ吸い込まれるように成形炸薬弾が命中し、轟音を上げながらゴーレムの上半身を粉砕した。
「クソォ! 盾のゴーレムを立ち上げるのだ!」
土魔法士はゴーレムの追加が遅れた事に気づき、慌てて2体のゴーレムを立ち上げた。粉砕された剣のゴーレムよりもはるかに大きいゴーレムが右手に光る盾を持って現れた。ゴーレムは3体になったところでサトル達に向かって突撃を始めた。地響きを上げながら密林の樹々をかき分けて走って行く。
「魔亀も飛ばせ!」
「しかし、兵士長からの指示がありません」
少し前から“上神殿|《じょうしんでん》”に居る兵士長からの指示が途絶えている兵士が魔法士に異議を唱えた。
「構わぬ!今しかないのだ!ゴーレムと一緒に戦えば落とされる可能性も低くなる」
「・・・わかりました」
兵士長不在の中で最古参となる兵士が頷いて、魔亀兵を招集して空へと舞い上がった。敵の魔法で落とされないように3体のゴーレムに隠れるように飛んで行く。30体の魔亀に乗った兵は、弓矢、短槍、それに火油を装備して上空から攻撃する態勢を整えていた。
「サトル、こっちに来るよ」
「そうだな、盾を持っている新しいゴーレムみたいだな」
「どうするの?」
「一応、距離を取りながら撃って行こう。サリナは撃てる時にいつでも撃ってくれ」
「はーい♪」
「ミーシャも新しいので構えておいてくれ」
「そ、そうか。まだ、撃ってはいかんのだな」
「うーん・・・、昨日の鬼が出てくるかもしれないからな」
「わかった・・・」
ミーシャは俺が使い方を説明した新し武器を撃ってみたくてうずうずしていたが、我慢してもらうことにした。新しいゴーレムも気になったが、走る速度は装甲戦闘車よりも遅いので、後退しながら撃つことが出来る。それよりも、昨日の鬼が気がかりだ。昨日の3匹で終わりなら良いが・・・。俺は後方を確認せずに装甲戦闘車を後退させながら周囲の警戒を続けた。
シンディと一緒に戻って来たのは11人の猿人だった。鬼に6人殺されて、数名はどこかに隠れているらしい。戻って来た猿人には出来る範囲で治療をしてやり、美味い肉を振る舞ってやった。猿人たちは生でも食べられるらしいが、焼いた肉の方がおいしいのは俺達とおなじだった。
ドリーミア出身の鉱夫とメイも交えて焼肉を全員で腹いっぱいになるまで食べて、早めに寝ることにした。とはいっても俺はストレージの中で準備を整えることは怠らなかった。明日使う可能性のある武器や装備を人数分用意しておく。最近は使い慣れた武器を無意識で取り出せるぐらいになっているが、弾薬の整理と補充はやはり欠かせない。それにシンディ達にはお礼の品を置いて行かないといけない。
-備えあれば憂いなし。
明朝は日の出とともに出発して、神殿の1.5km地点から迫撃砲を撃ちまくった。地上にある神殿の入り口へ50発撃ちこんだ後に火山の中腹にある“上神殿”付近へも100発ぐらい撃ちこんだ。“上神殿”はドリーミアでは空飛ぶ船で入った大岩で隠された入り口のある場所だ。神殿は上と下の両方を攻撃されてパニックになっている・・・はずだ。
鉱山に居た兵士から聞いた情報では、神殿の兵士は全て死人で構成されている。兵士以外には魔法士と神官が居るらしいが、魔法士と神官には生きている人間も含まれていると言う。さらに、地上から入った入り口の奥には農場から連れ去られた女性が閉じ込められている可能性が高い。
という事で、“上神殿”には救うべき対象はいないから皆殺しにしても良いのだが、そこには“神官長”と呼ばれるボスがいる。こいつを殺すと俺達はドリーミアに戻れないかもしれない・・・。
-殺さない範囲でダメージを与えるしかない。
「じゃあ、迫撃砲は二人に任せるから、ゴーレムのあたりを適当によろしく」
「はーい♪」
サリナが取り出す砲弾を俺に変わってミーシャが発射管に落としていく、着弾地点を上空のドローンからモニターで観測してサリナが微修正を行う。二人にはこれを繰り返して神殿の入り口へ敵の意識を向けさせている。
俺はドローンのリモコンを10台並べて10機のドローンを順番に飛ばしていった。目標は迫撃砲の破壊で大岩が吹き飛んだ“上神殿”の入り口だ。ドローンには2種類の荷物を積んである。一つ目はC4爆薬とプラスチック製の粒が入ったショットガンの12ゲージ弾の箱。もう一つは少量のC4爆薬と催涙弾を10本積んだものだ。距離が遠いためリモコンの起爆装置が使えなかったので、10分後から1分おきに起爆するようにタイマー信管をセットしてある。
10機全部を入り口でホバリングさせて、最初の1機を中に突入させた。薄暗いが何とか中の様子がモニター越しに見えて来た。入ってすぐの両側に部屋があったが、どちらも瓦礫の山になっていて人は居なかった。さらに奥へ進んで行くと、突き当りの部屋で大勢の人が動いているのが見えた。鉱山や農場で倒した兵士とは違って長いローブのような服を着ている奴-神官? 魔法士?が大勢いる。ここを狙えば良さそうだった。時間も良い感じになって来たので、次のドローンのリモコンに持ち替えて中へ送り込んで行く。2機目が奥の部屋へたどり着いた時に1機目のC4が爆発した。3機目のカメラで見るとドローンも爆風に煽られて吹き飛んだ。少し火薬の量が多すぎたかも・・・、まあ過ぎたことは仕方ない。神官長が生きていることを祈るだけだ。
ショットガンの弾薬を積んだドローンを先に、続いて催涙弾ドローンを連続で奥まで突っ込ませる。土埃のために10番機のカメラでも確認できなかったが、しばらく待っていると崖の割れ目から煙が出てきたので、俺の想像通りなら生きている人間は中で涙を流して悶絶しているだろう。死人だとしても、煙に視界を奪われて苦労するはずだ。
「よし、準備完了だな。みんな車両に乗ってくれ。シンディ達はここまでで良いよ。今までありがとう。食べるものは置いて行くから、皆でケンカせずに食べてくれ」
-キイッ!? キェイゥッ! キァァウ!
メイと鉱夫を装甲戦闘車の兵員室に入れて、猿人たちとお別れしようとしたが、シンディはチタン棒を振り回して、何かを伝えようとしている。俺にも何となく判った。
「何だ?一緒について来るのか?神殿の中に入るから危ないぞ?」
-キィーゥチ! キャァアーィ!
「そうか、じゃあ、一緒に行こうか。俺達の後ろに居てくれよ。間違えて撃つと危ないからな」
-キィゥ!
シンディは嬉しそうにチタン棒を持ち上げて了解した旨を伝えてくれた。相手が言葉を理解してくれていると信じれば、何とかコミュニケーションはとれるものだと自分で感心した。
「さて、じゃあ、いよいよだ。二人とも油断しないようにね!」
「うん!大丈夫!」
「ああ、決して油断はしない」
何故かついて来る猿人たちを従えて装甲戦闘車を神殿に向かって発進させた。
■ネフロス神殿
“上神殿”の中はサトルが思っていた以上に悲惨な状態だった。死人である兵士長は両目を散弾で貫かれて昏倒した。他の魔法士も兵士も体の大部分にショットガンの粒弾が食い込み死人以外で満足に立てるものはほとんど残っていなかった。
外から響く轟音の所為で部屋に入って来たドローンのプロペラの音には誰も気が付かなかった。1機目のドローンが天井付近で爆発した時に部屋の中には30名近い人間が居たが、爆風と轟音で吹き飛ばされて、ほとんどの鼓膜が破れていた。サトルは爆弾を少なくしたつもりだったが、天井が高くない空間で使う爆薬の量としては多すぎたのだ。
それに対して地上の神殿は内部の被害は殆ど無かった。入り口の守備隊は迫撃砲を避けるために神殿の中に引き上げさせてゴーレム2体だけで警戒している。ゴーレムも迫撃砲で何度か破壊されたが、魔法士達の力でその都度修復してある。
「あいつらの緑の箱が近づいておるぞ! 引き付けてから次のゴーレムも立ちあげるぞ!」
土魔法士のリーダーが水晶球でサトル達の動きを見ながらゴーレムの傀儡をネフロスの紋章を描いた床へと置いた。
サトル達の装甲戦闘車はゴーレム迄500メートルの距離になったところで、対戦車誘導弾を発射した。サリナが正確に狙いを定めた右側のゴーレムへ吸い込まれるように成形炸薬弾が命中し、轟音を上げながらゴーレムの上半身を粉砕した。
「クソォ! 盾のゴーレムを立ち上げるのだ!」
土魔法士はゴーレムの追加が遅れた事に気づき、慌てて2体のゴーレムを立ち上げた。粉砕された剣のゴーレムよりもはるかに大きいゴーレムが右手に光る盾を持って現れた。ゴーレムは3体になったところでサトル達に向かって突撃を始めた。地響きを上げながら密林の樹々をかき分けて走って行く。
「魔亀も飛ばせ!」
「しかし、兵士長からの指示がありません」
少し前から“上神殿|《じょうしんでん》”に居る兵士長からの指示が途絶えている兵士が魔法士に異議を唱えた。
「構わぬ!今しかないのだ!ゴーレムと一緒に戦えば落とされる可能性も低くなる」
「・・・わかりました」
兵士長不在の中で最古参となる兵士が頷いて、魔亀兵を招集して空へと舞い上がった。敵の魔法で落とされないように3体のゴーレムに隠れるように飛んで行く。30体の魔亀に乗った兵は、弓矢、短槍、それに火油を装備して上空から攻撃する態勢を整えていた。
「サトル、こっちに来るよ」
「そうだな、盾を持っている新しいゴーレムみたいだな」
「どうするの?」
「一応、距離を取りながら撃って行こう。サリナは撃てる時にいつでも撃ってくれ」
「はーい♪」
「ミーシャも新しいので構えておいてくれ」
「そ、そうか。まだ、撃ってはいかんのだな」
「うーん・・・、昨日の鬼が出てくるかもしれないからな」
「わかった・・・」
ミーシャは俺が使い方を説明した新し武器を撃ってみたくてうずうずしていたが、我慢してもらうことにした。新しいゴーレムも気になったが、走る速度は装甲戦闘車よりも遅いので、後退しながら撃つことが出来る。それよりも、昨日の鬼が気がかりだ。昨日の3匹で終わりなら良いが・・・。俺は後方を確認せずに装甲戦闘車を後退させながら周囲の警戒を続けた。
0
お気に入りに追加
897
あなたにおすすめの小説
現代兵器で異世界無双
wyvern
ファンタジー
サバゲ好き以外どこにでもいるようなサラリーマンの主人公は、
ある日気づけば見知らぬ森の中にいた。
その手にはLiSMと呼ばれるip〇d似の端末を持たされていた。
これはアサルトライフルや戦闘機に戦車や空母、果ては缶コーヒーまで召喚できてしまうチート端末だった。
森を出た主人公は見る風景、人、町をみて中近世のような異世界に転移させられと悟った。
そしてこちらの世界に来てから幾日か経った時、
主人公を転移させた張本人のコンダート王国女王に会い、
この国がデスニア帝国という強大な隣国に陸・海・空から同時に攻められ敗戦色濃厚ということを知る。
主人公は、自分が召喚されたのはLiSMで召喚した現代兵器を使ってこの国を救って欲しいからだと知り、
圧倒的不利なこの状況を現代兵器を駆使して立ち向かっていく!
そして軍事のみならず、社会インフラなどを現代と引けを取らない状態まで成長させ、
超大国となったコンダート王国はデスニア帝国に逆襲を始める
そしてせっかく異世界来たのでついでにハーレム(軍団)も作っちゃいます笑!
Twitterやってます→https://twitter.com/wyvern34765592
【完結】愛されなかった私が幸せになるまで 〜旦那様には大切な幼馴染がいる〜
高瀬船
恋愛
2年前に婚約し、婚姻式を終えた夜。
フィファナはドキドキと逸る鼓動を落ち着かせるため、夫婦の寝室で夫を待っていた。
湯上りで温まった体が夜の冷たい空気に冷えて来た頃やってきた夫、ヨードはベッドにぽつりと所在なさげに座り、待っていたフィファナを嫌悪感の籠った瞳で一瞥し呆れたように「まだ起きていたのか」と吐き捨てた。
夫婦になるつもりはないと冷たく告げて寝室を去っていくヨードの後ろ姿を見ながら、フィファナは悲しげに唇を噛み締めたのだった。
鉱夫剣を持つ 〜ツルハシ振ってたら人類最強の肉体を手に入れていた〜
犬斗
ファンタジー
〜転生なし、スキルなし、魔法なし、勇者も魔王もいない異世界ファンタジー〜
危険なモンスターが生態系の頂点に君臨。
蔓延る詐欺、盗賊、犯罪組織。
人の命は軽く殺伐とした世界。
冒険者がモンスターを狩り、騎士団が犯罪を取り締まる。
人々は商売で金を稼ぎ、たくましく生きていく。
そんな現実とは隔離された世界で最も高い山に、一人で暮らす心優しい青年鉱夫。
青年はひたすら鉱石を採掘し、市場で売って生計を立てる。
だが、人が生きていけない高度でツルハシを振り続けた結果、無意識に身体が鍛えられ人類最強の肉体を手に入れていた。
自分の能力には無自覚で、日々採掘しては鉱石を売り、稼いだ金でたまの贅沢をして満足する青年。
絶世の美女との偶然の出会いから、真面目な青年鉱夫の人生は急展開。
人智を超えた肉体と、鉱石やモンスターの素材でクラフトした装備や道具で活躍していく。
そして素朴な鉱夫青年は、素晴らしい仲間に支えられて世界へ羽ばたく。
※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。
【完結】何度時(とき)が戻っても、私を殺し続けた家族へ贈る言葉「みんな死んでください」
リオール
恋愛
「リリア、お前は要らない子だ」
「リリア、可愛いミリスの為に死んでくれ」
「リリア、お前が死んでも誰も悲しまないさ」
リリア
リリア
リリア
何度も名前を呼ばれた。
何度呼ばれても、けして目が合うことは無かった。
何度話しかけられても、彼らが見つめる視線の先はただ一人。
血の繋がらない、義理の妹ミリス。
父も母も兄も弟も。
誰も彼もが彼女を愛した。
実の娘である、妹である私ではなく。
真っ赤な他人のミリスを。
そして私は彼女の身代わりに死ぬのだ。
何度も何度も何度だって。苦しめられて殺されて。
そして、何度死んでも過去に戻る。繰り返される苦しみ、死の恐怖。私はけしてそこから逃れられない。
だけど、もういい、と思うの。
どうせ繰り返すならば、同じように生きなくて良いと思うの。
どうして貴方達だけ好き勝手生きてるの? どうして幸せになることが許されるの?
そんなこと、許さない。私が許さない。
もう何度目か数える事もしなかった時間の戻りを経て──私はようやく家族に告げる事が出来た。
最初で最後の贈り物。私から贈る、大切な言葉。
「お父様、お母様、兄弟にミリス」
みんなみんな
「死んでください」
どうぞ受け取ってくださいませ。
※ダークシリアス基本に途中明るかったりもします
※他サイトにも掲載してます
【完結】浮気者と婚約破棄をして幼馴染と白い結婚をしたはずなのに溺愛してくる
ユユ
恋愛
私の婚約者と幼馴染の婚約者が浮気をしていた。
私も幼馴染も婚約破棄をして、醜聞付きの売れ残り状態に。
浮気された者同士の婚姻が決まり直ぐに夫婦に。
白い結婚という条件だったのに幼馴染が変わっていく。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
歩くだけでレベルアップ!~駄女神と一緒に異世界旅行~
なつきいろ
ファンタジー
極々平凡なサラリーマンの『舞日 歩』は、駄女神こと『アテナ』のいい加減な神罰によって、異世界旅行の付き人となってしまう。
そこで、主人公に与えられた加護は、なんと歩くだけでレベルが上がってしまうというとんでもチートだった。
しかし、せっかくとんでもないチートを貰えたにも関わらず、思った以上に異世界無双が出来ないどころか、むしろ様々な問題が主人公を襲う結果に.....。
これは平凡なサラリーマンだった青年と駄女神が繰り広げるちょっとHな異世界旅行。
没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!
日之影ソラ
ファンタジー
かつては騎士の名門と呼ばれたブレイブ公爵家は、代々王族の専属護衛を任されていた。
しかし数世代前から優秀な騎士が生まれず、ついに専属護衛の任を解かれてしまう。それ以降も目立った活躍はなく、貴族としての地位や立場は薄れて行く。
ブレイブ家の長女として生まれたミスティアは、才能がないながらも剣士として研鑽をつみ、騎士となった父の背中を見て育った。彼女は父を尊敬していたが、周囲の目は冷ややかであり、落ちぶれた騎士の一族と馬鹿にされてしまう。
そんなある日、父が戦場で命を落としてしまった。残されたのは母も病に倒れ、ついにはミスティア一人になってしまう。土地、お金、人、多くを失ってしまったミスティアは、亡き両親の想いを受け継ぎ、再びブレイブ家を最高の騎士の名家にするため、第一王子の護衛騎士になることを決意する。
こちらの作品の連載版です。
https://ncode.syosetu.com/n8177jc/
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる