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Ⅰ-74 魔法制御
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■第4迷宮
迷宮の中心部に戻って来た俺は一旦迷宮の外へ出ることを決断した。縄梯子は下の方が燃えていたので、ハシゴを立てかけて途中から縄梯子を上っていく。俺が上る時はミーシャが下から、ミーシャが上るときは俺が上から援護の姿勢をとりながら無事に3人とも壁の上まで上がってくることが出来た。
最後の通路を探索しなかったのは、行ってもお宝が無いような気がしたからだ。ラプトルが陸地からこの島に来ている地下道が1km以上繋がっているとしたら、それは人工的に作られたものだろう。ラプトルやヘビ達がそんなに長い距離の洞窟を掘り進めた筈がないのだ。だとすれば、作られた通路はここに来るための入り口としか思えない。入り口側にお宝は・・・普通はないはずだ。長い地下道で構造がわからない以上、ラプトルに囲まれるリスクは取りたくなかった。
それでも、次の迷宮-まだ行くとは決めていないが-に行って、神の拳が無ければ戻ってくる可能性があるので、今日は入り口があるかを確認だけしておきたいと思っている。土壁の上から陸地への通路が伸びているであろう方向を双眼鏡で眺めるが目に付くような人工物は見当たらない。
「ミーシャ、あそこの通路が陸まで続いてるとしたら、入り口があると思うんだけど、何か見えるかな?」
超人的な視力のミーシャ様に振ってみる。
「特に気になるものは無いな。だが、少し小高い丘のようになっている先はここから見えない」
残念ながら、ミーシャの視力や双眼鏡の倍率では解決できなかったので、通路が伸びている方向の目印になる山の形を写真で記録してから、土壁を外に下りた。迷宮に入ってから3時間弱しか経っていないが、いつもの様に緊張で疲れている。キャンピングカーを呼び出して昼食休憩を取ることにしよう。この島にいる方が大型獣も出てこないから安全だろう。
昼飯を用意する前にラプトルの返り血で血まみれの服を着替えた。恐竜の血も真っ赤な色で、哺乳類とあまり変わらないようだ。シャワーは浴びなかったが着替えただけでホッとする。ストレージから出ると二人ともヘルメット、ベストを脱いでテーブルに付いていた。
「サリナは何が食べたい?」
今日は少しきつく当たったから、優しくしてやろう。
「んーと、宿で食べた黄色い牛の乳のやつが良い!」
・・・ピザのことか。要望どおりにピザを2枚とコーラ、それに野菜サラダを出してやる。
「ミーシャ、これは手で食べていいやつ。でも、ビヨーンって伸びるから注意してね」
先輩風を吹かせて食べ方をミーシャに説明しているが、今日も口の周りにはべたべたとチーズが付いている。
「そうなのか?・・・、うん、変な匂いがすると思ったがこれも美味いぞ。何ともいえない複雑な味だ」
ミーシャも気に入ったようだ、3人で2枚では足りそうにない。それにしても今日のサリナの魔法は凄まじかった。恐竜や土壁を抉るような炎の風・・・、まだロッドを使い始めて数日だというのに尋常じゃない。このまま使わせると壁どころか俺達ごと迷宮を吹っ飛ばすかも知れない。
「サリナ、お前は魔法を使うときに何か工夫でもしているのか?」
「工夫?サリナはサトルの言う通りにしているよ。合言葉でしょ、練習でしょ、神様のお祈り・・・、サトルの言う通りにしかしてないけど・・・、やっぱり怒ってるの?」
まだ、さっきのことを気にしていたようだ。
「いや、怒ってないよ。いつの間にか魔法が凄くなっているから驚いている」
「サトルの言う通りだな、サリナは最初に会った時から凄い魔法力を感じていたが、ロッドを使い始めてからは、その時の何倍もの魔法力になっているはずだ」
「そうなのかなぁ?サリナはお兄ちゃんの言う通りにしているだけなんだけどな・・・」
「ハンスはなんて言っていたんだ?」
「お兄ちゃんはサトルの言う事を必ず聞いて、その通りにやれば誰よりも強い魔法士になれるて言ってた。だから、大丈夫なはずなのになぁ・・・」
俺の言う事を? ハンスは俺が異世界から来たと確信しているからか・・・。だが、そもそもこいつはハンスに騙されていたはずなのに。
「サリナはハンスに魔法のことで嘘を吐《つ》かれてたんだろう?どうして、そんなに信じてるんだ?」
「魔法はずっと使っちゃダメだったから・・・、お兄ちゃんもお母さんにそうするように言われてただけ。それにサリナもサトルの言う通りにしたら魔法が強くなるのがわかってるから!」
尊敬される大魔法士と言っていた母親の意向だから、嘘でも受け入れていたのだろうか?それに、俺には心当たりが無いが、こいつの確信が侮れないのは間違いない。理由は判らないが、こいつの成長に俺が影響を与えていると言うことなのかもしれない。だとしたら、早めに魔法の加減ができるように教えないとマズイ。次の迷宮は未開地だから、こいつの魔法も戦力として活用しないと全員が危険だろう。
「じゃあ、明日からしばらくは魔法の練習を俺とやろうか?加減が出来ないと、危ないからな」
「本当に!?サトルと魔法の練習ができるの?」
「ああ、次の迷宮に行くまでに、魔法を調節できるようにしてやるよ」
「やったー! これで絶対に大丈夫!」
相変らずテンションが高い、最初に会った時よりも幼児化が進んでるような気がするのは俺が面倒を見すぎたからなのかもしれない。もう少し自立させるようにしないと・・・、あれ?やっぱり父親になった気分だな。
迷宮の中心部に戻って来た俺は一旦迷宮の外へ出ることを決断した。縄梯子は下の方が燃えていたので、ハシゴを立てかけて途中から縄梯子を上っていく。俺が上る時はミーシャが下から、ミーシャが上るときは俺が上から援護の姿勢をとりながら無事に3人とも壁の上まで上がってくることが出来た。
最後の通路を探索しなかったのは、行ってもお宝が無いような気がしたからだ。ラプトルが陸地からこの島に来ている地下道が1km以上繋がっているとしたら、それは人工的に作られたものだろう。ラプトルやヘビ達がそんなに長い距離の洞窟を掘り進めた筈がないのだ。だとすれば、作られた通路はここに来るための入り口としか思えない。入り口側にお宝は・・・普通はないはずだ。長い地下道で構造がわからない以上、ラプトルに囲まれるリスクは取りたくなかった。
それでも、次の迷宮-まだ行くとは決めていないが-に行って、神の拳が無ければ戻ってくる可能性があるので、今日は入り口があるかを確認だけしておきたいと思っている。土壁の上から陸地への通路が伸びているであろう方向を双眼鏡で眺めるが目に付くような人工物は見当たらない。
「ミーシャ、あそこの通路が陸まで続いてるとしたら、入り口があると思うんだけど、何か見えるかな?」
超人的な視力のミーシャ様に振ってみる。
「特に気になるものは無いな。だが、少し小高い丘のようになっている先はここから見えない」
残念ながら、ミーシャの視力や双眼鏡の倍率では解決できなかったので、通路が伸びている方向の目印になる山の形を写真で記録してから、土壁を外に下りた。迷宮に入ってから3時間弱しか経っていないが、いつもの様に緊張で疲れている。キャンピングカーを呼び出して昼食休憩を取ることにしよう。この島にいる方が大型獣も出てこないから安全だろう。
昼飯を用意する前にラプトルの返り血で血まみれの服を着替えた。恐竜の血も真っ赤な色で、哺乳類とあまり変わらないようだ。シャワーは浴びなかったが着替えただけでホッとする。ストレージから出ると二人ともヘルメット、ベストを脱いでテーブルに付いていた。
「サリナは何が食べたい?」
今日は少しきつく当たったから、優しくしてやろう。
「んーと、宿で食べた黄色い牛の乳のやつが良い!」
・・・ピザのことか。要望どおりにピザを2枚とコーラ、それに野菜サラダを出してやる。
「ミーシャ、これは手で食べていいやつ。でも、ビヨーンって伸びるから注意してね」
先輩風を吹かせて食べ方をミーシャに説明しているが、今日も口の周りにはべたべたとチーズが付いている。
「そうなのか?・・・、うん、変な匂いがすると思ったがこれも美味いぞ。何ともいえない複雑な味だ」
ミーシャも気に入ったようだ、3人で2枚では足りそうにない。それにしても今日のサリナの魔法は凄まじかった。恐竜や土壁を抉るような炎の風・・・、まだロッドを使い始めて数日だというのに尋常じゃない。このまま使わせると壁どころか俺達ごと迷宮を吹っ飛ばすかも知れない。
「サリナ、お前は魔法を使うときに何か工夫でもしているのか?」
「工夫?サリナはサトルの言う通りにしているよ。合言葉でしょ、練習でしょ、神様のお祈り・・・、サトルの言う通りにしかしてないけど・・・、やっぱり怒ってるの?」
まだ、さっきのことを気にしていたようだ。
「いや、怒ってないよ。いつの間にか魔法が凄くなっているから驚いている」
「サトルの言う通りだな、サリナは最初に会った時から凄い魔法力を感じていたが、ロッドを使い始めてからは、その時の何倍もの魔法力になっているはずだ」
「そうなのかなぁ?サリナはお兄ちゃんの言う通りにしているだけなんだけどな・・・」
「ハンスはなんて言っていたんだ?」
「お兄ちゃんはサトルの言う事を必ず聞いて、その通りにやれば誰よりも強い魔法士になれるて言ってた。だから、大丈夫なはずなのになぁ・・・」
俺の言う事を? ハンスは俺が異世界から来たと確信しているからか・・・。だが、そもそもこいつはハンスに騙されていたはずなのに。
「サリナはハンスに魔法のことで嘘を吐《つ》かれてたんだろう?どうして、そんなに信じてるんだ?」
「魔法はずっと使っちゃダメだったから・・・、お兄ちゃんもお母さんにそうするように言われてただけ。それにサリナもサトルの言う通りにしたら魔法が強くなるのがわかってるから!」
尊敬される大魔法士と言っていた母親の意向だから、嘘でも受け入れていたのだろうか?それに、俺には心当たりが無いが、こいつの確信が侮れないのは間違いない。理由は判らないが、こいつの成長に俺が影響を与えていると言うことなのかもしれない。だとしたら、早めに魔法の加減ができるように教えないとマズイ。次の迷宮は未開地だから、こいつの魔法も戦力として活用しないと全員が危険だろう。
「じゃあ、明日からしばらくは魔法の練習を俺とやろうか?加減が出来ないと、危ないからな」
「本当に!?サトルと魔法の練習ができるの?」
「ああ、次の迷宮に行くまでに、魔法を調節できるようにしてやるよ」
「やったー! これで絶対に大丈夫!」
相変らずテンションが高い、最初に会った時よりも幼児化が進んでるような気がするのは俺が面倒を見すぎたからなのかもしれない。もう少し自立させるようにしないと・・・、あれ?やっぱり父親になった気分だな。
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