上 下
10 / 343

Ⅰ-10 ゴブリン狩り

しおりを挟む
■スモークの町

俺とサリナは馬車で1日掛かる予定の隣町まで1時間で到着した。
馬車はどうやら時速5~7kmで走っているようだ、1日に10時間進んでも50km~70kmと言うことになる。
スクーターは平均時速50km弱で走ってきたから当然といえば当然だ。

街道は砂地だが大きな凸凹は少なかった、それでも3回ほどビックリするぐらい弾んで、後ろのサリナが悲鳴と共に俺に密着してくれた。
多少の役得はセクハラじゃあないはずだ。
サリナは怖すぎるのか、走っている間は一言も口を聞かない。

途中二つの町では、一旦スクーターから降りて町を歩いて迂回した。
通り抜けるだけで入市税を払うのが馬鹿馬鹿しかったからだ。

三つ目の町スモークに着いたら10時30分だったので、一度休憩することにした。
で、今は町を見学中だ。

ここにも組合(ギルド)があるから中を覗いてみる。
掲示板に出ている求人、仕事がエドウィンよりだいぶ多い。

求人は殆ど戦士、剣士、槍使いだったが、中には魔法士募集もあった。

-南方遠征、魔法士募集! 炎・治療必須! 
-戦士急募! 魔法士でも可、但し炎魔法必須 橙クラス以上!

残念ながら今のサリナでは失業中のままだろう。

仕事には狼以外にゴブリンの討伐もあった。

-至急ゴブリン討伐願う。国懸賞+銀貨1枚/1匹

国の懸賞はゴブリン5匹/銀貨1枚だから、5倍の追加だ! ビッグチャンス!
場所は東の森の奥か・・・、ちょっと聞いてみよう。

ここの受付のお姉さんはエドゥインと違って綺麗だった、優しい目でサトルを迎えてくれた。

「ゴブリン退治のことを聞きたいのですが、エドウィンの組合員でも大丈夫ですか?」

「初心者の方ですね? 大丈夫です、この国の中ならどこの組合(ギルド)でも証明書は有効ですよ」

綺麗な上に優しいお姉さんだ。

「森の奥のゴブリンですけど、何匹ぐらいいるんですか?」

「50匹ぐらいだと思います。ですが、お二人ですか? 絶対危ないですからおやめになった方が良いと思います。行かれるならお仲間を見つけてからになさって下さい」

眉を寄せて俺を心配してくれた。

「大丈夫です、外にも仲間がいますので。場所は何処になるんですか?」

「・・・そうですか、でしたら・・・」

お姉さんの説明ではここから歩いて1時間ぐらい行くと、森の奥で多くの木に赤い布が巻いてあるらしい。それより先に行くなと言うことだが、さらに奥にゴブリンの洞穴がある。

洞穴ならさっそく試してみたいことがあった。

ギルドを出た瞬間から「無理」、「死んじゃう」、「止めて」、「考え直して」、「お願い」を連呼したサリナを無視して町の外まで一旦出た。

「じゃあ、ここで別れることにしよう」

静かになったサリナをスクーターに乗せて、道なき道をゆっくり走り始めた。
森の入り口まで時速20kmで20分ほど走った。
ここから森の奥なら徒歩で30分かからないだろう。

森は背の高い木が鬱蒼と茂っていて、中に入ると昼でも薄暗かった。
人目がないことを確認してから俺は装備を整えた。
ヘルメット、防刀ベスト、タクティカルベストを着込んでから、グロックとMP7のホルスターをセットする。
MP7のマガジン6本をベストに入れ、アサルトライフルHK433を持って森の中へ進んでいく。
サリナは無口になったが、我慢して付いて来ている。
 
お姉さんの言う通り、20分ほど歩いた森の奥に赤い布が巻かれた木を発見する。
目印から200メートルほど先が小高い山のようになっているから、あの辺りに入り口があるのだろう。

見つけた洞窟の入り口は想像より小さかった、高さ1メートルほどだ。
大人はたって入れないだろうが、ゴブリンなら・・・
周囲を警戒しながら他の入り口を探したが、最初の入り口しか見つからない。

1箇所なら狩り放題だろう。

サトルはストレージから、大型扇風機、自家発電機、催涙弾×30を取り出した。
先に大型扇風機を動かして、強風を洞窟内に送り始める。

「サリナ、一緒にこれを洞窟の中に投げ込んで」

催涙弾のピンを抜く方法をサリナに説明して見本を見せた。
最初に投げた催涙弾から白い煙が上がり出した、扇風機の風で煙は奥に流れていく。
どんどん催涙弾を投げ込んでいく、30個投げ込むのに二人で1分ぐらいだったろうか?

「じゃあ、下がろう」

サリナを連れて入り口から30メートル程後退した。
アサルトライフルを肩につけて洞窟の入り口を狙う。

かなり待ったような気がしたが、洞窟の中からわめき声聞こえて来た。
段々大きくなって来て・・・、小さい緑の固まりがいくつも飛び出してきた!

-パ、パ、パン!-  ギャウ!
-パ、パ、パ、パン!- ギャ!
-パ、パ、パン!- グェ!

飛び出してくるゴブリン目掛けて短い連射を繰り返した。
5.56mm弾を食らったゴブリンがはじけ飛んでいく。
マガジンが空になったHK433を地面において、MP7に持ち替える。

-パラ!-パラ!-パラ!  グェ!
-パラ!-パラ!-パラ!-パラ! グェ! グェ!

連射しすぎないように注意してトリガーを短く何度も引いた。
MP’7のマガジンが5本空になったところでゴブリンは出てこなくなった。

HK433にマガジンを再セットして、慎重に倒れているゴブリンに近づいていく。
動いている奴が何匹かいたので頭を撃ち抜いていく。

周りも確認したが、催涙弾の煙が出ているところは小さな穴ばかりだった。
やはり洞穴の入り口はあそこだけのようだ。

扇風機の周りで散乱するゴブリンの死体を数えるのはやめにして組合員証を見た。

-狼4 ゴブリン47

50には届かないが、銀貨47+9+α? で銀貨56枚はもらえるはずだ。

「サトルさん、今の魔法は?」

「そうだな・・・、スモーク&ガンってところだね」

「???」

予定通り洞窟に入らずに大量のゴブリンを仕留めた俺は満足して扇風機と発電機をストレージに戻した。
出しっ放しでもいいような気もするが・・・、

俺にとっては今日の方が狼よりも達成感がある、戦術どおりに行ったからだろう。
ほぼノーリスクで撃てるのは最高だ。
まだまだ撃ち足りないが、楽しみはこれからもあるだろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

現代兵器で異世界無双

wyvern
ファンタジー
サバゲ好き以外どこにでもいるようなサラリーマンの主人公は、 ある日気づけば見知らぬ森の中にいた。 その手にはLiSMと呼ばれるip〇d似の端末を持たされていた。 これはアサルトライフルや戦闘機に戦車や空母、果ては缶コーヒーまで召喚できてしまうチート端末だった。 森を出た主人公は見る風景、人、町をみて中近世のような異世界に転移させられと悟った。 そしてこちらの世界に来てから幾日か経った時、 主人公を転移させた張本人のコンダート王国女王に会い、 この国がデスニア帝国という強大な隣国に陸・海・空から同時に攻められ敗戦色濃厚ということを知る。 主人公は、自分が召喚されたのはLiSMで召喚した現代兵器を使ってこの国を救って欲しいからだと知り、 圧倒的不利なこの状況を現代兵器を駆使して立ち向かっていく! そして軍事のみならず、社会インフラなどを現代と引けを取らない状態まで成長させ、 超大国となったコンダート王国はデスニア帝国に逆襲を始める そしてせっかく異世界来たのでついでにハーレム(軍団)も作っちゃいます笑! Twitterやってます→https://twitter.com/wyvern34765592

【完結】復讐の館〜私はあなたを待っています〜

リオール
ホラー
愛しています愛しています 私はあなたを愛しています 恨みます呪います憎みます 私は あなたを 許さない

【完結】愛されなかった私が幸せになるまで 〜旦那様には大切な幼馴染がいる〜

高瀬船
恋愛
2年前に婚約し、婚姻式を終えた夜。 フィファナはドキドキと逸る鼓動を落ち着かせるため、夫婦の寝室で夫を待っていた。 湯上りで温まった体が夜の冷たい空気に冷えて来た頃やってきた夫、ヨードはベッドにぽつりと所在なさげに座り、待っていたフィファナを嫌悪感の籠った瞳で一瞥し呆れたように「まだ起きていたのか」と吐き捨てた。 夫婦になるつもりはないと冷たく告げて寝室を去っていくヨードの後ろ姿を見ながら、フィファナは悲しげに唇を噛み締めたのだった。

鉱夫剣を持つ 〜ツルハシ振ってたら人類最強の肉体を手に入れていた〜

犬斗
ファンタジー
〜転生なし、スキルなし、魔法なし、勇者も魔王もいない異世界ファンタジー〜 危険なモンスターが生態系の頂点に君臨。 蔓延る詐欺、盗賊、犯罪組織。 人の命は軽く殺伐とした世界。 冒険者がモンスターを狩り、騎士団が犯罪を取り締まる。 人々は商売で金を稼ぎ、たくましく生きていく。 そんな現実とは隔離された世界で最も高い山に、一人で暮らす心優しい青年鉱夫。 青年はひたすら鉱石を採掘し、市場で売って生計を立てる。 だが、人が生きていけない高度でツルハシを振り続けた結果、無意識に身体が鍛えられ人類最強の肉体を手に入れていた。 自分の能力には無自覚で、日々採掘しては鉱石を売り、稼いだ金でたまの贅沢をして満足する青年。 絶世の美女との偶然の出会いから、真面目な青年鉱夫の人生は急展開。 人智を超えた肉体と、鉱石やモンスターの素材でクラフトした装備や道具で活躍していく。 そして素朴な鉱夫青年は、素晴らしい仲間に支えられて世界へ羽ばたく。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。

【完結】何度時(とき)が戻っても、私を殺し続けた家族へ贈る言葉「みんな死んでください」

リオール
恋愛
「リリア、お前は要らない子だ」 「リリア、可愛いミリスの為に死んでくれ」 「リリア、お前が死んでも誰も悲しまないさ」  リリア  リリア  リリア  何度も名前を呼ばれた。  何度呼ばれても、けして目が合うことは無かった。  何度話しかけられても、彼らが見つめる視線の先はただ一人。  血の繋がらない、義理の妹ミリス。  父も母も兄も弟も。  誰も彼もが彼女を愛した。  実の娘である、妹である私ではなく。  真っ赤な他人のミリスを。  そして私は彼女の身代わりに死ぬのだ。  何度も何度も何度だって。苦しめられて殺されて。  そして、何度死んでも過去に戻る。繰り返される苦しみ、死の恐怖。私はけしてそこから逃れられない。  だけど、もういい、と思うの。  どうせ繰り返すならば、同じように生きなくて良いと思うの。  どうして貴方達だけ好き勝手生きてるの? どうして幸せになることが許されるの?  そんなこと、許さない。私が許さない。  もう何度目か数える事もしなかった時間の戻りを経て──私はようやく家族に告げる事が出来た。  最初で最後の贈り物。私から贈る、大切な言葉。 「お父様、お母様、兄弟にミリス」  みんなみんな 「死んでください」  どうぞ受け取ってくださいませ。 ※ダークシリアス基本に途中明るかったりもします ※他サイトにも掲載してます

【完結】浮気者と婚約破棄をして幼馴染と白い結婚をしたはずなのに溺愛してくる

ユユ
恋愛
私の婚約者と幼馴染の婚約者が浮気をしていた。 私も幼馴染も婚約破棄をして、醜聞付きの売れ残り状態に。 浮気された者同士の婚姻が決まり直ぐに夫婦に。 白い結婚という条件だったのに幼馴染が変わっていく。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ

歩くだけでレベルアップ!~駄女神と一緒に異世界旅行~

なつきいろ
ファンタジー
 極々平凡なサラリーマンの『舞日 歩』は、駄女神こと『アテナ』のいい加減な神罰によって、異世界旅行の付き人となってしまう。  そこで、主人公に与えられた加護は、なんと歩くだけでレベルが上がってしまうというとんでもチートだった。  しかし、せっかくとんでもないチートを貰えたにも関わらず、思った以上に異世界無双が出来ないどころか、むしろ様々な問題が主人公を襲う結果に.....。 これは平凡なサラリーマンだった青年と駄女神が繰り広げるちょっとHな異世界旅行。

没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!

日之影ソラ
ファンタジー
 かつては騎士の名門と呼ばれたブレイブ公爵家は、代々王族の専属護衛を任されていた。 しかし数世代前から優秀な騎士が生まれず、ついに専属護衛の任を解かれてしまう。それ以降も目立った活躍はなく、貴族としての地位や立場は薄れて行く。  ブレイブ家の長女として生まれたミスティアは、才能がないながらも剣士として研鑽をつみ、騎士となった父の背中を見て育った。彼女は父を尊敬していたが、周囲の目は冷ややかであり、落ちぶれた騎士の一族と馬鹿にされてしまう。  そんなある日、父が戦場で命を落としてしまった。残されたのは母も病に倒れ、ついにはミスティア一人になってしまう。土地、お金、人、多くを失ってしまったミスティアは、亡き両親の想いを受け継ぎ、再びブレイブ家を最高の騎士の名家にするため、第一王子の護衛騎士になることを決意する。 こちらの作品の連載版です。 https://ncode.syosetu.com/n8177jc/

処理中です...