上 下
9 / 343

Ⅰ-9 この世界の魔法

しおりを挟む
■エドウィン近くの森

食事を終えた俺とサリナはテントの中に移って横になった。
もちろん別々の寝袋の中にだ。
念のため枕元にはMP7の銃口をテントの外に向けて置いてある。

「さっきの話の続きだけど、なんでサリナは魔法力が沢山あるの?」

「私は、ご先祖様が偉大な魔法使いだったって聞いています。だから、おじいちゃんもお母さんも魔法力が凄くて、みんなから尊敬されていました」

「おじいさんとお母さんも癒しの魔法を使ってたの?」

「・・・二人とも全部使えていました。でも、サトルさんのは見たこと無いです」

「全部って言うのは何ができるんだ?」

「全部は全部ですけど、炎、水、風、土、そして光の魔法です。本当に知らないんですか?サトルさんの魔法はどれになるんですか?」

どうごまかすか? 
正直に言ってごまかすのが吉と見た。

「ああ、俺のはどれでもない。俺はサリナが知らない遠い国から来たんだ。だからこの国のことを全然知らないんだよ」

「???」

「それで、癒しの魔法はどの種類になるの?」

「それは、光の魔法ですけど・・・、本当に知らないんですね・・・」

「なるほどね、で、何でサリナは光の魔法しか使えないの?」

「・・・わかりません、でも、他のもいつか使えるようになるはずなんです!」

「お兄さんはいろいろ使えるの?」

「兄は炎が一番得意で光と水も少し使えます」

サリナには能力が引き継がれてないのか?
でも、親の能力を100%引き継がれるもんでもないし、そんなもんかもな。

「ところで、今日の魔法練習はどのぐらい役立ったの?」

「凄くです、スゴク役に立ってます。1日であんなに上達できれば凄いことです」

全く判らんな、凄い以外にバロメーターを持って居ないのかこいつは。

「骨折ぐらいは直せるって言ってたけど、治療魔法はどのぐらいの怪我まで治せるの?」

「大魔法士なら死んで無い人は治せるはずです」

「!」

それは凄いな。
そこまでたどり着けるなら、万一のために連れて行っても・・・

「サリナは本当に南へ行きたいの? それと、お金とかは持ってる?旅費も要るでしょ?」

「行きたいです! もうここには居ることができないし・・・、お金は・・・せん」

最後はあいまいだが、金は持ってないのか。

「一緒に行くなら俺の言うことを聞いて貰わないといけないけど、大丈夫?」

「連れてってくれるんですか!? でも、やっぱり酷いことを・・・」

「さあ、何をするかは約束できないけど、何をされても我慢するぐらいの覚悟が無いと連れて行けないな。それと、最後まで一緒に行けるかもわからない。途中で別れるかもしれない。それでも良ければ、明日から南へ行っても良いよ」

今のところは何をするつもりも無いが、脅しておけば頼みごとがしやすくなるだろう。

「・・・わかりました。酷いことでも・・・我慢します」

-だから、せえへんっちゅうねん。

「じゃあ、そろそろ寝るか」

俺はランタンの火を消して寝袋にもぐりこんだ。

「やっぱり、暗くしてから・・・酷いことを?」

-寝るだけや!


翌朝、トーストにバターを塗りながら南への行き方をサリナに聞いていた。
サリナたちが南と言っているのは南方州という場所だった。
そこにバーンと言う大きな町があって、ギルドメンバーはみんなそこを目指していた。
道中もモンスターが沢山出るが、バーン周辺では人が昼間も出歩けないレベルになっているそうだ。

バーンまでは馬車で10日ほど掛かるらしいが、途中に町が何箇所かあるのでそこで泊まって行けば昼間の移動だけで到着することができる。

ダイジェスト版にするとそう言うことだ。

俺は移動手段の変更を考えていた。
サリナにチャリを覚えさせるのも面倒だし原付ぐらいに挑戦してみるか。

タブレットで色々検索していると、4輪バギーと3輪のスクーターが目に留まった。
乗り慣れていないから転倒しないものが安心だ。
馬車を追い越しやすそうだったので、3輪スクーターをストレージから引っ張り出した。
YAMAHAの前輪が3輪になっているタイプだ。

「馬車? 馬は?」

サリナの「?」に付き合っているとキリが無いので、エンジンをかけて操作を確認する。
アクセルがあること以外は自転車と大差ない。

20メートルほどゆっくり走らせたが不安は無かった。
携行缶からガソリンを移して満タンにする。

ヘルメット、ゴーグル、マスクも用意して、サリナと二人で装着した。
サリナは「?」の数が多すぎて、ついて来れ無いようだが言われた通りに用意して、俺の後ろに跨った。

さあ、南へ出発だ!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

とあるオタが勇者召喚に巻き込まれた件~イレギュラーバグチートスキルで異世界漫遊~

剣伎 竜星
ファンタジー
仕事の修羅場を乗り越えて、徹夜明けもなんのその、年2回ある有○の戦場を駆けた夏。長期休暇を取得し、自宅に引きこもって戦利品を堪能すべく、帰宅の途上で食材を購入して後はただ帰るだけだった。しかし、学生4人組とすれ違ったと思ったら、俺はスマホの電波が届かない中世ヨーロッパと思しき建築物の複雑な幾何学模様の上にいた。学生4人組とともに。やってきた召喚者と思しき王女様達の魔族侵略の話を聞いて、俺は察した。これあかん系異世界勇者召喚だと。しかも、どうやら肝心の勇者は学生4人組みの方で俺は巻き込まれた一般人らしい。【鑑定】や【空間収納】といった鉄板スキルを保有して、とんでもないバグと思えるチートスキルいるが、違うらしい。そして、安定の「元の世界に帰る方法」は不明→絶望的な難易度。勇者系の称号がないとわかると王女達は掌返しをして俺を奴隷扱いするのは必至。1人を除いて学生共も俺を馬鹿にしだしたので俺は迷惑料を(強制的に)もらって早々に国を脱出し、この異世界をチートスキルを駆使して漫遊することにした。※10話前後までスタート地点の王城での話になります。

おおぅ、神よ……ここからってマジですか?

夢限
ファンタジー
 俺こと高良雄星は39歳の一見すると普通の日本人だったが、実際は違った。  人見知りやトラウマなどが原因で、友人も恋人もいない、孤独だった。  そんな俺は、突如病に倒れ死亡。  次に気が付いたときそこには神様がいた。  どうやら、異世界転生ができるらしい。  よーし、今度こそまっとうに生きてやるぞー。  ……なんて、思っていた時が、ありました。  なんで、奴隷スタートなんだよ。  最底辺過ぎる。  そんな俺の新たな人生が始まったわけだが、問題があった。  それは、新たな俺には名前がない。  そこで、知っている人に聞きに行ったり、復讐したり。  それから、旅に出て生涯の友と出会い、恩を返したりと。  まぁ、いろいろやってみようと思う。  これは、そんな俺の新たな人生の物語だ。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

万能知識チートの軍師は無血連勝してきましたが無能として解任されました

フルーツパフェ
ファンタジー
 全世界で唯一無二の覇権国家を目指すべく、極端な軍備増強を進める帝国。  その辺境第十四区士官学校に一人の少年、レムダ=ゲオルグが通うこととなった。  血塗られた一族の異名を持つゲオルグ家の末息子でありながら、武勇や魔法では頭角を現さず、代わりに軍事とは直接関係のない多種多様な産業や学問に関心を持ち、辣腕ぶりを発揮する。  その背景にはかつて、厳しい環境下での善戦を強いられた前世での体験があった。  群雄割拠の戦乱において、無能と評判のレムダは一見軍事に関係ない万能の知識と奇想天外の戦略を武器に活躍する。

退屈な人生を歩んでいたおっさんが異世界に飛ばされるも無自覚チートで無双しながらネットショッピングしたり奴隷を買ったりする話

菊池 快晴
ファンタジー
無難に生きて、真面目に勉強して、最悪なブラック企業に就職した男、君内志賀(45歳)。 そんな人生を歩んできたおっさんだったが、異世界に転生してチートを授かる。 超成熟、四大魔法、召喚術、剣術、魔力、どれをとっても異世界最高峰。 極めつけは異世界にいながら元の世界の『ネットショッピング』まで。 生真面目で不器用、そんなおっさんが、奴隷幼女を即購入!? これは、無自覚チートで無双する真面目なおっさんが、元の世界のネットショッピングを楽しみつつ、奴隷少女と異世界をマイペースに旅するほんわか物語です。

処理中です...