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Ⅰ-7 売られる少女

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■エドウィンの町

「売られるって言うのは、サリナちゃんが?」

「はい、今は兄の知り合いの家にいるんですけど、兄がその人達からお金を借りていて、でも、兄と連絡が取れなくなったから・・・。返済の代わりに私を奴隷商人に売るって昨日家で話しているのを聞いちゃったんです。だ、だから・・・」

-ワチャー、泣いちゃったよ。どうすんの俺。
-こういうのは俺の異世界には必要ないんだよな~。
-でも、無視する度胸も無い。

「で、俺について行きたいって言うけど、俺が奴隷商人より酷いことしたらどうするの?」

「そんな酷いことするんですか?」

-いや、しないけどね。
-男は信じちゃダメでしょ。

「それは、わからないだろ?」

「大丈夫だと思います」

-だから、下から見上げんなっちゅうのに。
-ま、良いか。なんかあっても俺のせいじゃないし。

「じゃぁ、狼のいるところで野宿でもいいなら、ついてきて良いよ」

「はい、守ってくれるんですよね?」

-いや、俺は一人でストレージに・・・とは言えんか。

二人で町を出る頃には外は既に暗闇になっていた。

俺はストレージからフラッシュライトを2本取り出し、1本を点けてやってからサリナに渡した。

「凄い!これは、何の魔法なんですか!?」

-何でも食いつくな。

「これはね、光の魔法道具。ここを押すとついたり消えたりする」

「ウワ! 本当だ! 私にも光魔法が使えた!」

-違うっちゅうねん。それは乾電池様の力や。

俺は普段は使わないが、一緒にいる不思議ちゃんに耐えかねて、子供の頃使っていた関西弁を使って心の中でも突っ込み出した。
何でも魔法だと思う不思議ちゃんだが、売られる少女が少し明るくなってくれたなら良いことだと思うことにする。
女子を喜ばせた経験なんてないけど、これが異世界効果なのか?

俺は昨日狼を狩った場所から1kmぐらい離れた場所まで二人で歩いていった。
手元の時計では19時20分だ。

ストレージからマット、テント、寝袋、ランタン等を取り出した。
先に寝られる場所を作っておくつもりだった。

サリナにも手伝わせて設営したが30分以上掛った。
腹が減ってきたのを無視して先に罠を仕掛けに行くことにした。
狼を生け捕りにしてサリナに試して欲しいことがあるからだ。

昨日のうちに調べていた『くくり罠』をテントの200メートル程風上に5つ仕掛けておく。
エサの生肉は1kgをわなの中心部に3つ置いておく。
この準備には小一時間掛った。

「今のは何をしたんですか?」

「狼を捕まえる罠を仕掛けた、とりあえずテントに入って待ってて」

「・・・やっぱり、酷いことを・・・」

サリナは唇をかみ締めながら俺を見上げた。

「何もしないって! そこから狼が来るのを待つだけ! お腹すいただろう、これ上げるからテントの中で食べて良いよ」

何が気に入るかわからなかったが、ビーフジャーキーとミネラルウオーターを出しておく。

「?」

そうか、どっちも開け方が判らないのか。
俺が自分のペットボトルを開けて飲んで見せた。
サリナはちょっとてこずったが自分で開けて、一人で飲めるようになった。

「これも魔法ですか!?」

-それも飲料メーカーさんの力ですわ。

ジャーキーを食べさせてやると気に入ったようだ、こんな美味しい干し肉は食べたことないと騒ぎ出した。
静かにするように諌めて、俺も水とジャーキーをかじりながら獲物を待つことにした。
予想よりも早い30分後に獲物が暗視装置の中に現れた。

2匹いたが、エサの周りをぐるぐる回っている。

-罠に気づいたのか?

-キャンッ! ウォーン、ウォゥッ!!

そう思ったとたんに一匹が罠に掛ってくれた。

「いくぞ、ところでサリナは動物の治療もできるよな?」

「はい、足をくじいた猫を治療したことがあります」

それなら良かった、だったら動物愛護団体に叱られることをしてもらおう。
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