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とけない謎
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「ねえ、かき氷屋さん寄らない?」
それは東雲からの意外な提案だった。夏とはいえ、近所のかき氷屋に誘われるとは思ってもいなかった。もちろん、友人としてだ。
「いいよ。歩いて10分くらいだからな」
さて、かき氷屋に着いたわけだが、いつも困るのは何味にするかだ。いちご、ブルーハワイに練乳。他にも色々な種類がある。僕が「うーん」と唸っていると東雲は「いちご味で」と即決。きっといちご味が好きなのだろう。僕は迷った末にブルーハワイ味にした。
色々と雑談をしつつも、かき氷をかき込む。溶けたら嫌だし。そんな風にしていると、不思議なことに東雲のかき氷は溶けていない。おかしい、同じタイミングで頼んだはずだ。
「なあ、東雲。なんで、お前のかき氷は溶けないんだ? おかしくないか?」
「さあ、どうしてかしら?」
笑顔で言うが、はぐらかされた。少しムッとする。
それから少し経ってからだった。「知人がスペシャルドリンクのコンテストに出るの」と家族から聞かされたのは。
スペシャルドリンクのコンテスト当日。僕たち一家は知人の手伝いをすることにした。「このドリンクには絶対の自信がある」とのことだったので「忙しくなるぞ」と思っていたが、結果は違った。よそのドリンクの方が評判だったのだ。「他のドリンクよりも冷たさが長持ちする」と味よりも、その不思議さによって、集客が良かったのだ。なるほど、味が全てではないのか。
「なあ、東雲。特定の飲み物だけ冷たさを保つことなんて、できるのか?」と僕。
「もしかして、その飲み物の味はいちごじゃないかしら」
「ちょっと待った。東雲はコンテストに来ていないのに、なんで味が分かったんだ」
「この前、かき氷屋に寄ったのは覚えているわね?」
「もちろんさ。そこまで頭は悪くない」
「私はいちご味を即決したわね。あれはゆっくりと味わいたいからよ」
「そういえば、あの時、東雲のかき氷は溶けなかったよな。そこに今回の謎の鍵があるのか?」
「そう。いちごポリフェノールには、氷を溶けにくくする要素があるの。つまり、かき氷もドリンクコンテストも同じ。いちごポリフェノールの特徴を活かした、それだけよ」
「なるほどな。一つ賢くなったよ」
「もし、私が真にいちご味のドリンクを渡したら、気をつけることね」
「どうしてさ」
「今回の話を思い出しなさい。いちごポリフェノールは溶けにくい。うまくいくかは別として、アリバイトリックにも使えるわ。もちろん、そんな不確実な方法は使わないけどね」
それは東雲からの意外な提案だった。夏とはいえ、近所のかき氷屋に誘われるとは思ってもいなかった。もちろん、友人としてだ。
「いいよ。歩いて10分くらいだからな」
さて、かき氷屋に着いたわけだが、いつも困るのは何味にするかだ。いちご、ブルーハワイに練乳。他にも色々な種類がある。僕が「うーん」と唸っていると東雲は「いちご味で」と即決。きっといちご味が好きなのだろう。僕は迷った末にブルーハワイ味にした。
色々と雑談をしつつも、かき氷をかき込む。溶けたら嫌だし。そんな風にしていると、不思議なことに東雲のかき氷は溶けていない。おかしい、同じタイミングで頼んだはずだ。
「なあ、東雲。なんで、お前のかき氷は溶けないんだ? おかしくないか?」
「さあ、どうしてかしら?」
笑顔で言うが、はぐらかされた。少しムッとする。
それから少し経ってからだった。「知人がスペシャルドリンクのコンテストに出るの」と家族から聞かされたのは。
スペシャルドリンクのコンテスト当日。僕たち一家は知人の手伝いをすることにした。「このドリンクには絶対の自信がある」とのことだったので「忙しくなるぞ」と思っていたが、結果は違った。よそのドリンクの方が評判だったのだ。「他のドリンクよりも冷たさが長持ちする」と味よりも、その不思議さによって、集客が良かったのだ。なるほど、味が全てではないのか。
「なあ、東雲。特定の飲み物だけ冷たさを保つことなんて、できるのか?」と僕。
「もしかして、その飲み物の味はいちごじゃないかしら」
「ちょっと待った。東雲はコンテストに来ていないのに、なんで味が分かったんだ」
「この前、かき氷屋に寄ったのは覚えているわね?」
「もちろんさ。そこまで頭は悪くない」
「私はいちご味を即決したわね。あれはゆっくりと味わいたいからよ」
「そういえば、あの時、東雲のかき氷は溶けなかったよな。そこに今回の謎の鍵があるのか?」
「そう。いちごポリフェノールには、氷を溶けにくくする要素があるの。つまり、かき氷もドリンクコンテストも同じ。いちごポリフェノールの特徴を活かした、それだけよ」
「なるほどな。一つ賢くなったよ」
「もし、私が真にいちご味のドリンクを渡したら、気をつけることね」
「どうしてさ」
「今回の話を思い出しなさい。いちごポリフェノールは溶けにくい。うまくいくかは別として、アリバイトリックにも使えるわ。もちろん、そんな不確実な方法は使わないけどね」
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