謎解きは東雲舞にお任せを

両替男の謎

　今日もだ。これで３日連続。謎の男が両替だけして帰るのは。


「ねえ、真。不気味じゃない？　1000札を50円玉20枚に替えるだけなんて」

　アルバイト仲間の咲の言葉に真は頷く。この謎、クラス一のミステリーマニア東雲に相談すれば、解けるかもしれない。


「なるほどね。面白い話ね。ミステリー小説に『50円玉20枚の謎』という本があるわ。今回とは逆で、50円玉20枚を1000円札に替える話だけれど。なんにせよ、それだけじゃ、情報不足ね」

「流石に東雲でも解けないか」

「犯罪ではないけれど、迷惑行為で警察に突き出せるかもしれないわね」


　それから数日してからだった。今度は男が50円玉20枚を1000円札に両替しだしたのは。


「ふーん、なるほどね。ねえ、真は知ってる？　最近、近所で起こった殺人事件」

「ああ、あれだろ？　夫婦喧嘩が原因で、夫が妻を殺したんじゃないかっていう事件。でも、凶器が見つからず、逮捕できてないんだよなぁ」

「あくまでも、推測だけれど。その謎の男、例の事件の男じゃないかしら」

「何を根拠に？」

「真もブラックジャックっていう凶器は知ってるわね？」

「あれだろ？　袋に小銭とかを入れて、殴り殺すっていうやつ」

「そうそれ。もし、謎の男が犯人なら？　まずは1000札を両替して、50円玉にする。そして、ブラックジャックにして、妻を殴り殺す。次は証拠隠滅のために、50円玉を1000円札に替える。どうかしら？」

「面白い推理だな」


　翌日、男から50円玉を受け取った時だった。小銭の縁に赤黒いものがついていることに気づいたのは。