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【伊藤博文】昨日の友は今日の敵

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 フランスと通商条約を結んでから数ヶ月。なんの問題もなく順調に交流が進んでいた。大日本帝国からは金で買った武器を、フランスからは穀物などの食料品をといった具合にお互いを助け合っていた。伊藤博文はこの結果に満足していた。イギリスとの同盟はあくまでも戦争を目的としており、ビジネス的な側面が強かった。逆にフランスとの交流は人と人との交流もあり、温かみを感じた。


 フランスのトップとの会談を重ねるごとに向こうも大日本帝国に好意を持っていることが伝わってきた。特にクロード・モネの話で盛り上がった。モネは印象派として有名だが、日本好きでも有名だったからだ。モネのジャポニズムは素晴らしいものがあった。こうして、商業だけではなく、文化面でも交流が深まっていった。そんなある日だった。


「伊藤首相、フランスと同盟関係になりませんか?」という話をされたのは。


 伊藤博文は考えるまでもなく「イエス」と答えた。これほど仲が良くなったのだ。考える必要はなかった。フランスとの関係は友達から親友へと変わっていた。


 同盟なのだから、当然どちらかが戦争に巻き込まれたら、助け合うのだ。今、フランスはイギリスと小競り合いを繰り返している。幸いにも全面戦争にはなっていない。しかし、全面戦争に発展するのも時間の問題だろう。そのときはイギリスと戦うことになる。裏切り者であるイギリスと。伊藤博文は心の中で誓った。そのときは徹底的にイギリスを叩きのめすと。




 伊藤博文が決意を固めてから数ヶ月後だっま。フランスとイギリスが戦争状態になったのは。場所はアフリカ。大日本帝国からは距離がありすぎる。伊藤博文は西郷隆盛と勝海舟を呼び出すと、早速、作戦会議を始める。


「まずは西郷からだ。今回の戦争、フランスの手助けができるだろうか?」


「陸軍としては難しいですな。なにせ、アフリカまでは距離がある。いくら海軍が軍艦で運んでくれても、向かう途中で決着がついていることもありえる。フランスの負けという形で」


 その通りだと伊藤博文は思った。フランスが支配しているのはアフリカ西部。対してイギリスはアフリカ東部を植民地にしている。挟撃することは可能だが、時間がなさすぎる。


「勝、お前はどう考える? やはり、西郷とと同じか?」


 勝海舟は目を閉じて考え込む。しばらくするとこう言った。


「確かにアフリカは遠すぎます。でも、インドなら? あそこもイギリスの領土です。インドを我が軍が襲撃すれば、戦力を二分せざるを得ないでしょう。それに、インドは私が詳しい。なにせ、イギリスに裏切られたとき、インドにいましたから」


 勝海舟はそのときのことを思い出したのか、苦笑いをしている。


 二人の意見を統合するとこうだ。アフリカは遠すぎるが、インドを攻撃して戦力を分散させて、フランスを援護できるのでは、ということだ。伊藤博文も同意見だった。それだけではない。今度は我が軍がイギリスに大日本帝国を裏切ったことを後悔させる機会でもある。それにうまくいけば、インドを大日本帝国の領土に加えられる。


「勝、軍艦で陸軍を運んでくれ。海岸から砲撃し、上陸が完了したら自動式機関銃で一斉攻撃だ。幸いにもフランスにも機関銃を輸出している。当分は抵抗できるだろう。さあ、すぐにとりかかれ。時間との勝負だ。何があっても、フランスを助けるぞ。大日本帝国の意地として」
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