15 / 57
【伊藤博文・勝海舟】やっと出番が来ましたか
しおりを挟む
イギリスとの同盟が成立してから、大日本帝国の次のターゲットはオランダ領東インド(現在のインドネシア)と決まっていた。オランダは東南アジアまで援軍を出すのに時間がかかるに違いないし、簡単に落とせるはずだ。伊藤博文は早くも勝った後のことを考えていた。
「勝、待たせたな。いよいよ、お前の出番だぞ!」
「やっと、海軍の出番ですか。北米では西郷将軍率いる陸軍が暴れ回りましたからね。今度は我々海軍の番です」
勝海舟は腕まくりをする。
「どうだ、落とすのにどれくらいのかかる?」
「そうですね、3日あれば十分かと思います」
勝海舟が豪語する。話を盛るのはいつものことだ。
「それで、本当のところはどうなんだ? あまり長いと国民への負担が大きくなる」
「数ヶ月はかかるでしょう。なにせ、我が国から遠いですから。現地への物資補給も問題です。戦争をするだけなら、すぐに片付くのですが……」
勝海舟は打って変わって真面目な表情で言う。
「それなら、インドに拠点を作るのはどうだ? もしかしたら、イギリスが協力してくれるかもしれない。私から話をしておこう」
「そうなれば、オランダ領東インド(現在のインドネシア)を陥落させるのも容易いでしょう。ぜひ、お願いします」
イギリスに相談すると「こちらも海岸を出しましょう」と意外な返事がきた。「領土も譲ります。代わりに、フランス領インドネシア連邦(現在のベトナム、カンボジア)の攻略時には手を貸して欲しい」という条件つきで。答えはもちろん「イエス」だった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
勝海舟は敵陣が見えてくると、鼓動が高鳴るのを感じた。アメリカのシアトル攻略戦以来の海戦だからだ。久しぶりの戦いで勘が鈍っていないか、不安があった。伊藤博文から指示を受けた時から脳内シミュレーションはしてきたが、実際の戦いでうまくいくとは限らない。
それに、今回はイギリス艦隊との共同戦線だ。しっかり連携してしなくては。もし、万が一、友軍を撃ってしまったら……。考えるだけでもゾッとした。勝海舟一人の命で片付く話ではない。イギリスとの全面戦争になる。いけない、弱気になっては駄目だ。リーダーがしっかりしていないと、味方の士気にも影響する。
「勝将軍。今回の戦い、勝てるのでしょうか?」
部下の一人が心配そうに聞く。もしかしたら、勝海舟の顔に不安が見えたのかもしれない。
「そんなわけあるか! 我が軍は無敵だ。それに、イギリスの助けもある。これで勝たなくては、笑いものにされてしまう。勝てるかじゃない。勝つんだ。何がなんでも」
部下は納得していない表情だったが、そんなことはどうでもいい。勝てば分かるに違いない。勝海舟の考えが正しかったと。
イギリス海軍の活躍は素晴らしかった。さすが「日の沈まない国」の海軍だ。数日もかからず海戦は終わった。大日本帝国の勝利という形で。あとは陸軍に任せればいい。勝海舟は物足りなさを感じた。もっと、手強い相手と戦いたいというのが本音だった。いつか、イギリスとも戦うことになるだろう。その時は、必ず勝ってみせる。
これで、オランダはアジアから締め出されたことになる。条約だの賠償金だのは伊藤博文に任せればいい。勝海舟の心配事は「次の海戦がいつになるか分からない」それだけだった。戦争だけが生きがいなのだから。
「勝、待たせたな。いよいよ、お前の出番だぞ!」
「やっと、海軍の出番ですか。北米では西郷将軍率いる陸軍が暴れ回りましたからね。今度は我々海軍の番です」
勝海舟は腕まくりをする。
「どうだ、落とすのにどれくらいのかかる?」
「そうですね、3日あれば十分かと思います」
勝海舟が豪語する。話を盛るのはいつものことだ。
「それで、本当のところはどうなんだ? あまり長いと国民への負担が大きくなる」
「数ヶ月はかかるでしょう。なにせ、我が国から遠いですから。現地への物資補給も問題です。戦争をするだけなら、すぐに片付くのですが……」
勝海舟は打って変わって真面目な表情で言う。
「それなら、インドに拠点を作るのはどうだ? もしかしたら、イギリスが協力してくれるかもしれない。私から話をしておこう」
「そうなれば、オランダ領東インド(現在のインドネシア)を陥落させるのも容易いでしょう。ぜひ、お願いします」
イギリスに相談すると「こちらも海岸を出しましょう」と意外な返事がきた。「領土も譲ります。代わりに、フランス領インドネシア連邦(現在のベトナム、カンボジア)の攻略時には手を貸して欲しい」という条件つきで。答えはもちろん「イエス」だった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
勝海舟は敵陣が見えてくると、鼓動が高鳴るのを感じた。アメリカのシアトル攻略戦以来の海戦だからだ。久しぶりの戦いで勘が鈍っていないか、不安があった。伊藤博文から指示を受けた時から脳内シミュレーションはしてきたが、実際の戦いでうまくいくとは限らない。
それに、今回はイギリス艦隊との共同戦線だ。しっかり連携してしなくては。もし、万が一、友軍を撃ってしまったら……。考えるだけでもゾッとした。勝海舟一人の命で片付く話ではない。イギリスとの全面戦争になる。いけない、弱気になっては駄目だ。リーダーがしっかりしていないと、味方の士気にも影響する。
「勝将軍。今回の戦い、勝てるのでしょうか?」
部下の一人が心配そうに聞く。もしかしたら、勝海舟の顔に不安が見えたのかもしれない。
「そんなわけあるか! 我が軍は無敵だ。それに、イギリスの助けもある。これで勝たなくては、笑いものにされてしまう。勝てるかじゃない。勝つんだ。何がなんでも」
部下は納得していない表情だったが、そんなことはどうでもいい。勝てば分かるに違いない。勝海舟の考えが正しかったと。
イギリス海軍の活躍は素晴らしかった。さすが「日の沈まない国」の海軍だ。数日もかからず海戦は終わった。大日本帝国の勝利という形で。あとは陸軍に任せればいい。勝海舟は物足りなさを感じた。もっと、手強い相手と戦いたいというのが本音だった。いつか、イギリスとも戦うことになるだろう。その時は、必ず勝ってみせる。
これで、オランダはアジアから締め出されたことになる。条約だの賠償金だのは伊藤博文に任せればいい。勝海舟の心配事は「次の海戦がいつになるか分からない」それだけだった。戦争だけが生きがいなのだから。
12
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説

世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記
颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。
ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。
また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。
その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。
この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。
またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。
この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず…
大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。
【重要】
不定期更新。超絶不定期更新です。

大日本帝国領ハワイから始まる太平洋戦争〜真珠湾攻撃?そんなの知りません!〜
雨宮 徹
歴史・時代
1898年アメリカはスペインと戦争に敗れる。本来、アメリカが支配下に置くはずだったハワイを、大日本帝国は手中に収めることに成功する。
そして、時は1941年。太平洋戦争が始まると、大日本帝国はハワイを起点に太平洋全域への攻撃を開始する。
これは、史実とは異なる太平洋戦争の物語。
主要登場人物……山本五十六、南雲忠一、井上成美
※歴史考証は皆無です。中には現実性のない作戦もあります。ぶっ飛んだ物語をお楽しみください。
※根本から史実と異なるため、艦隊の動き、編成などは史実と大きく異なります。
※歴史初心者にも分かりやすいように、言葉などを現代風にしています。

土方歳三ら、西南戦争に参戦す
山家
歴史・時代
榎本艦隊北上せず。
それによって、戊辰戦争の流れが変わり、五稜郭の戦いは起こらず、土方歳三は戊辰戦争の戦野を生き延びることになった。
生き延びた土方歳三は、北の大地に屯田兵として赴き、明治初期を生き抜く。
また、五稜郭の戦い等で散った他の多くの男達も、史実と違えた人生を送ることになった。
そして、台湾出兵に土方歳三は赴いた後、西南戦争が勃発する。
土方歳三は屯田兵として、そして幕府歩兵隊の末裔といえる海兵隊の一員として、西南戦争に赴く。
そして、北の大地で再生された誠の旗を掲げる土方歳三の周囲には、かつての新選組の仲間、永倉新八、斎藤一、島田魁らが集い、共に戦おうとしており、他にも男達が集っていた。
(「小説家になろう」に投稿している「新選組、西南戦争へ」の加筆修正版です)

転生一九三六〜戦いたくない八人の若者たち〜
紫 和春
SF
二〇二〇年の現代から、一九三六年の世界に転生した八人の若者たち。彼らはスマートフォンでつながっている。
第二次世界大戦直前の緊張感が高まった世界で、彼ら彼女らはどのように歴史を改変していくのか。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
織田信長IF… 天下統一再び!!
華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。
この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。
主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。
※この物語はフィクションです。
【新訳】帝国の海~大日本帝国海軍よ、世界に平和をもたらせ!第一部
山本 双六
歴史・時代
たくさんの人が亡くなった太平洋戦争。では、もし日本が勝てば原爆が落とされず、何万人の人が助かったかもしれないそう思い執筆しました。(一部史実と異なることがあるためご了承ください)初投稿ということで俊也さんの『re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ』を参考にさせて頂きました。
これからどうかよろしくお願い致します!
ちなみに、作品の表紙は、AIで生成しております。
暁のミッドウェー
三笠 陣
歴史・時代
一九四二年七月五日、日本海軍はその空母戦力の総力を挙げて中部太平洋ミッドウェー島へと進撃していた。
真珠湾以来の歴戦の六空母、赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴が目指すのは、アメリカ海軍空母部隊の撃滅。
一方のアメリカ海軍は、暗号解読によって日本海軍の作戦を察知していた。
そしてアメリカ海軍もまた、太平洋にある空母部隊の総力を結集して日本艦隊の迎撃に向かう。
ミッドウェー沖で、レキシントン、サラトガ、ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネットが、日本艦隊を待ち構えていた。
日米数百機の航空機が入り乱れる激戦となった、日米初の空母決戦たるミッドウェー海戦。
その幕が、今まさに切って落とされようとしていた。
(※本作は、「小説家になろう」様にて連載中の同名の作品を転載したものです。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる