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インドで光る秀吉の手腕
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俺たちは東インドに来ていた。そう今度のターゲットはイギリス軍を撃滅することだ。この時代はスペイン、ポルトガルの海軍が世界中に植民地を作っている。しかし、イギリス海軍もアルマダの戦いでスペインの無敵艦隊を破っている。油断していると返り討ちにされかねない。
今回は秀吉からこんな命令をされた。「港には攻撃を加えるな」と。かなりの無茶振りだ。港を無傷で済ますには、砲撃で攻めることはできない。
「何を考えている?」いつの間にか秀吉が隣に立っていた。
「いや、どうやってイギリス軍を破ろうかと。あなたの無茶振りに応えつつね」
「無茶振りとは失礼な。これはお前たちの腕を見込んだの命令だ」
本当にそうだろうか? うまいこと誤魔化されている気がする。
「それで、いかにして撃滅する? 策はあるんだろう?」
俺は素直に策がないことを打ち明ける。
「なるほど。しかし、戦艦大和はデカく、丈夫だ。敵艦にぶつければ、港を傷つけずに済むのではないか?」
「ちょっと、待ってください! そんな名案があるなら、最初から言ってくださいよ」
「いや、これ以上の策が出てくると思っていたんだが……。未来人に期待しすぎたようだ」
いや、未来人だからって万能ではないのだ。期待しすぎも勘弁して欲しい。
「さて、実行に移そうではないか」
イギリス海軍に大和の舳先《へさき》を向けると「皆のもの、衝撃に備えよ!」と秀吉が号令をかける。いくら大和が頑丈でも、体当たりすれば大揺れするし、敵の帆船の一部が飛んでくるかもしれない。
「凪! 全速力を出せ! 派手にやろうぜ」
「おう、任せとけ!」
大和は徐々にスピードをあげて、敵艦に向かっていく。相手は慌てて大砲を放つがもう遅い。大和がぶつかると、敵は木っ端微塵に吹き飛ぶ。
「よっしゃ! これなら全滅させるのに時間はかからないな」
俺の予想通り、一時間もしないうちに決着はついた。当たり前の結果だった。
「それで、あなたの無茶振り通り、港には傷一つつけていませんが、どうするつもりですか?」
「インドには商社があると言っておったな。それを利用する」
「へ? 商社は戦力にはなりませんけど……」
「なに、商社の海路を利用して、日本に香辛料などの珍しいものを運ぶためだ。そして、他の国との貿易の拠点にする。お前も経済的な側面から物事を考えるように勉強するんだな」
秀吉は肩をぽんぽんと叩く。
経済面か。俺たちは未来の日本のために戦うことに意識が集中していた。秀吉の言う通り、経済面から将来の日本を強くするのも、一つの考え方だ。
「それで、次はどこを攻める?」
「いえ、まだここでやるべきことがあります。ムガル帝国のアクバル大帝への謁見です」
「謁見!? 何を言っている。向こうがこちらに来るように命令すればいい! 日本の覇者がへりくだることなど、あってはならない!」秀吉は怒り狂って拳を振り回している。
「続きを聞いてください。アクバル大帝は宗教に寛大です。それを利用して、仏教を広めるんです。今度は宗教面から日本の支配下に置くんです」
秀吉は顎に手をやって考えこむ。しばらくすると「よし、採用だ」と言う。「しかし、謁見ではなく、場所を用意してお互いに出向くことにしよう。へりくだっては、向こうをつけあがらせるだけだ」
沈黙が周囲を包み込んでいた。秀吉とアクバル大帝の間で静かな火花が散っていた。先に静寂を破ったのは秀吉だった。
「そなたは宗教の融和に積極的だと聞いている。そこで、提案だ。そちらの国内で仏教を取り入れて欲しい。仏教はそなたの国から我が国に伝わった宗教。もし、仏教を取り入れなければ、明《みん》らが自国がルーツだと主張するだろう」
大帝は秀吉の言葉に耳を傾けている。しかし、自分に有利か、天秤にかけて考えているようだった。もう一押し必要だ。
「一つ付け加えよう。香辛料を日本に輸出してもらう代わりに、こちらも壺などの骨董品を輸出しよう。あとは刀だ。これは日本独自の武器。そちらの剣は騎馬戦向きだと聞く。しかし、日本刀を取り入れれば、個人戦でも有利になり、戦略の幅が広がるはずだ」
これが決め手になったらしく、アクバル大帝はイスから立ち上がると、秀吉に手を差し出す。そして、二人は握手を交わした。どうやら、会合はうまくいったらしい。俺はホッと胸を撫で下ろす。
これで、インドも手中におさめた。次はサウジアラビアだ。いよいよ、オスマン帝国と接触し、戦うことになる。相手は陸での戦闘に引きずりこもうとするはず。久しぶりに武士たちの活躍の場になりそうだ。彼らも船での生活に飽き始めている。ここらでガス抜きすれば、反乱を起こすことはないだろう。
「次の戦では、武士の力が必要です。あなたの名将としての活躍を見られると思うと、今から楽しみです」
「おいおい、持ち上げても何も出ないぞ。まあ、見ておれ。武士の戦いを未来人に見せつけてやろうぞ」
秀吉の目は輝き、自らの腕を振るうのを待ちわびているようだった。彼らの戦いを目に焼き付けておこう。未来への土産として。
今回は秀吉からこんな命令をされた。「港には攻撃を加えるな」と。かなりの無茶振りだ。港を無傷で済ますには、砲撃で攻めることはできない。
「何を考えている?」いつの間にか秀吉が隣に立っていた。
「いや、どうやってイギリス軍を破ろうかと。あなたの無茶振りに応えつつね」
「無茶振りとは失礼な。これはお前たちの腕を見込んだの命令だ」
本当にそうだろうか? うまいこと誤魔化されている気がする。
「それで、いかにして撃滅する? 策はあるんだろう?」
俺は素直に策がないことを打ち明ける。
「なるほど。しかし、戦艦大和はデカく、丈夫だ。敵艦にぶつければ、港を傷つけずに済むのではないか?」
「ちょっと、待ってください! そんな名案があるなら、最初から言ってくださいよ」
「いや、これ以上の策が出てくると思っていたんだが……。未来人に期待しすぎたようだ」
いや、未来人だからって万能ではないのだ。期待しすぎも勘弁して欲しい。
「さて、実行に移そうではないか」
イギリス海軍に大和の舳先《へさき》を向けると「皆のもの、衝撃に備えよ!」と秀吉が号令をかける。いくら大和が頑丈でも、体当たりすれば大揺れするし、敵の帆船の一部が飛んでくるかもしれない。
「凪! 全速力を出せ! 派手にやろうぜ」
「おう、任せとけ!」
大和は徐々にスピードをあげて、敵艦に向かっていく。相手は慌てて大砲を放つがもう遅い。大和がぶつかると、敵は木っ端微塵に吹き飛ぶ。
「よっしゃ! これなら全滅させるのに時間はかからないな」
俺の予想通り、一時間もしないうちに決着はついた。当たり前の結果だった。
「それで、あなたの無茶振り通り、港には傷一つつけていませんが、どうするつもりですか?」
「インドには商社があると言っておったな。それを利用する」
「へ? 商社は戦力にはなりませんけど……」
「なに、商社の海路を利用して、日本に香辛料などの珍しいものを運ぶためだ。そして、他の国との貿易の拠点にする。お前も経済的な側面から物事を考えるように勉強するんだな」
秀吉は肩をぽんぽんと叩く。
経済面か。俺たちは未来の日本のために戦うことに意識が集中していた。秀吉の言う通り、経済面から将来の日本を強くするのも、一つの考え方だ。
「それで、次はどこを攻める?」
「いえ、まだここでやるべきことがあります。ムガル帝国のアクバル大帝への謁見です」
「謁見!? 何を言っている。向こうがこちらに来るように命令すればいい! 日本の覇者がへりくだることなど、あってはならない!」秀吉は怒り狂って拳を振り回している。
「続きを聞いてください。アクバル大帝は宗教に寛大です。それを利用して、仏教を広めるんです。今度は宗教面から日本の支配下に置くんです」
秀吉は顎に手をやって考えこむ。しばらくすると「よし、採用だ」と言う。「しかし、謁見ではなく、場所を用意してお互いに出向くことにしよう。へりくだっては、向こうをつけあがらせるだけだ」
沈黙が周囲を包み込んでいた。秀吉とアクバル大帝の間で静かな火花が散っていた。先に静寂を破ったのは秀吉だった。
「そなたは宗教の融和に積極的だと聞いている。そこで、提案だ。そちらの国内で仏教を取り入れて欲しい。仏教はそなたの国から我が国に伝わった宗教。もし、仏教を取り入れなければ、明《みん》らが自国がルーツだと主張するだろう」
大帝は秀吉の言葉に耳を傾けている。しかし、自分に有利か、天秤にかけて考えているようだった。もう一押し必要だ。
「一つ付け加えよう。香辛料を日本に輸出してもらう代わりに、こちらも壺などの骨董品を輸出しよう。あとは刀だ。これは日本独自の武器。そちらの剣は騎馬戦向きだと聞く。しかし、日本刀を取り入れれば、個人戦でも有利になり、戦略の幅が広がるはずだ」
これが決め手になったらしく、アクバル大帝はイスから立ち上がると、秀吉に手を差し出す。そして、二人は握手を交わした。どうやら、会合はうまくいったらしい。俺はホッと胸を撫で下ろす。
これで、インドも手中におさめた。次はサウジアラビアだ。いよいよ、オスマン帝国と接触し、戦うことになる。相手は陸での戦闘に引きずりこもうとするはず。久しぶりに武士たちの活躍の場になりそうだ。彼らも船での生活に飽き始めている。ここらでガス抜きすれば、反乱を起こすことはないだろう。
「次の戦では、武士の力が必要です。あなたの名将としての活躍を見られると思うと、今から楽しみです」
「おいおい、持ち上げても何も出ないぞ。まあ、見ておれ。武士の戦いを未来人に見せつけてやろうぞ」
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