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3章 紛争編
36話 シャノア姫の相談
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晩餐会の夜、テラスにてルネス卿と二人きりでお互いの近況について意見を交わした。
儂の方は近々カナリッジ共和国との小競り合いの事で話合い、ルネス卿の方は最近現れたダンジョンについて話が盛り上がっているところである。
「なるほど、そのダンジョンマスターには接触をもったという話だったが報告にはその辺書かれてはおらんかったのか?」
飲み干したワインの余韻を感じながら隣のルネス卿へ尋ねた。
「その辺については詳しくは書かれておらんかった。だが接触をした際、側にはA級指定のスライムとヴァンパイアがいたとあった。俄かには信じられん話だがな、それと主観の意見ではあるが成長型のそれも異常に早い成長を遂げる高難易度ダンジョンだともある」
「その話を聞くとますます詳しい調査が必要になってくるの。なるべく早い方がいいと思うが、まだ誰にも知られてはいないのだろ?」
「うむ、ギルドマスターとダンジョンを発見した冒険者の数人しか知らないらしい。噂が広まった時の事を考えて早めに調査するのが得策であろうとは思っている」
暫く二人でダンジョンについて会話をしそろそろ終わりも近くなったりテラスを背に振り向くと、そこには美しい女性が一人此方を見ながら佇んでいた。
(どうしてシャノア姫がこんな所に……)
シャノア姫は国王の娘で第三王女にあたる方だ。
上に二人の姉と一人の兄がおり、次期国王には一人息子のジルベルクが即位する予定である。
性格は温厚で他の貴族からの受けもよく姉妹共に仲がいい万人に愛されるお人柄だ。
先の話になるが今のところ縁談の話が幾つか上がっているらしく、以前はどこに嫁ぐかで揉めたと聞く。
そんなシャノア姫の登場に戸惑うが軽くお辞儀をして問いかける。
「シャノア姫、なぜこのような所へ?」
サラリと美しい金髪に儚げな表情をする顔立ち、誰もがその美貌に振り返るであろう。
シャノア姫は胸元で片手を包み込むよ姿勢で此方を窺っていたが、儂らが姫に気づくと口を開いた。
「その……お二人にお話があり此方へ伺いました」
小さくだが透き通る声音で口を開くと隣のルネス卿がすかさず問いかける。
「いったどのようなご用件ですかな?」
少々高圧的な物言いをするが、シャノア姫は臆することなく要件を話し出す。
「お話しというのは近々ダラム国が攻めて来ると耳にしました。その際、私を匿って欲しいのです」
(はて、匿ってどうするのだ? もしや誰かに狙われているとかかの)
「要件はわかりました。それで匿う理由をお教え願えますかな?」
根本的な事情を知らねば匿う事もできないため、続けて尋ねるルネス卿。
「それは……私が狙われているからです」
「誰にと窺っていいでしょうか?」
「……詳しくは言えません。ですがどうかお願いできないでしょうか?」
シャノア姫の真摯な態度にルネス卿と見合わせ儂は頷く。
「わかりました、ですが戦が起こった際にのみ私の方で匿いましょう。ぺトラ卿の領地ではいざこざもあるかもしれませんのでね」
(気を遣わせたようですまんなルネス卿)
目で礼をするとシャノア姫は晴れやかな笑みを浮かべた。
「ありがとうございます。その際は此方から直接伺いますのでよろしくお願いします。それでは」
軽く頭を下げドレスの端を右手で持ち上げ挨拶をするとテラスから出て行った。
「いったい何だったのだろうか?」
疑問に思った事がつい口に出てしまったが特に問題もないだろう。
「確かにな……匿うほどの何かがあるのだろう。誰かに狙われるような立場の方ではないと思うのだが、いった何があるのやら」
(どこもかしこも物騒な話ばかりで気が滅入るの)
「シャノア姫の要件は置いておくとしてだ、ダンジョンの調査は何時頃になりそうなのだ? 出来ればロマーリアを合流させてからがいいのじゃが……カナリッジがいつ動くやもしれんこの状況だ我がままは言っておられんか」
そんな儂の我がままに応えるのはルネス卿だ。
「なにそのくらいの時間はあると思うが、先発隊へは間に合わないだろうがその後の者と合流すればよかろう」
「ふむ、ルネス卿恩に着る」
「なに構わんよ。ぺトラ卿との仲だ気にしなくてよい」
ルネス卿の言葉に暫し頷き、もう一度テラスからの夜景を眺めた。
(やはり持つべきものは友だな)
夜景を少し眺めてからテラスを後にした。
その後、マリベルとロマーリアを連れて控室に戻ると早々王城を発つ準備をする。
「ぺトラ様、色々と聞き込みをしてみましたがやはり他の方達は知らないようでした」
「そうかご苦労であった」
「殆どの者はシャノア姫の登場でそれどころではなかったがな」
ロマーリアが会場でのことを話ながら専属のメイドと支度をしている。
素早く準備を終えた儂らは宿屋で夜を明かし、次の日に首都ヴィニオン出発しグラストルへ戻った。
儂の方は近々カナリッジ共和国との小競り合いの事で話合い、ルネス卿の方は最近現れたダンジョンについて話が盛り上がっているところである。
「なるほど、そのダンジョンマスターには接触をもったという話だったが報告にはその辺書かれてはおらんかったのか?」
飲み干したワインの余韻を感じながら隣のルネス卿へ尋ねた。
「その辺については詳しくは書かれておらんかった。だが接触をした際、側にはA級指定のスライムとヴァンパイアがいたとあった。俄かには信じられん話だがな、それと主観の意見ではあるが成長型のそれも異常に早い成長を遂げる高難易度ダンジョンだともある」
「その話を聞くとますます詳しい調査が必要になってくるの。なるべく早い方がいいと思うが、まだ誰にも知られてはいないのだろ?」
「うむ、ギルドマスターとダンジョンを発見した冒険者の数人しか知らないらしい。噂が広まった時の事を考えて早めに調査するのが得策であろうとは思っている」
暫く二人でダンジョンについて会話をしそろそろ終わりも近くなったりテラスを背に振り向くと、そこには美しい女性が一人此方を見ながら佇んでいた。
(どうしてシャノア姫がこんな所に……)
シャノア姫は国王の娘で第三王女にあたる方だ。
上に二人の姉と一人の兄がおり、次期国王には一人息子のジルベルクが即位する予定である。
性格は温厚で他の貴族からの受けもよく姉妹共に仲がいい万人に愛されるお人柄だ。
先の話になるが今のところ縁談の話が幾つか上がっているらしく、以前はどこに嫁ぐかで揉めたと聞く。
そんなシャノア姫の登場に戸惑うが軽くお辞儀をして問いかける。
「シャノア姫、なぜこのような所へ?」
サラリと美しい金髪に儚げな表情をする顔立ち、誰もがその美貌に振り返るであろう。
シャノア姫は胸元で片手を包み込むよ姿勢で此方を窺っていたが、儂らが姫に気づくと口を開いた。
「その……お二人にお話があり此方へ伺いました」
小さくだが透き通る声音で口を開くと隣のルネス卿がすかさず問いかける。
「いったどのようなご用件ですかな?」
少々高圧的な物言いをするが、シャノア姫は臆することなく要件を話し出す。
「お話しというのは近々ダラム国が攻めて来ると耳にしました。その際、私を匿って欲しいのです」
(はて、匿ってどうするのだ? もしや誰かに狙われているとかかの)
「要件はわかりました。それで匿う理由をお教え願えますかな?」
根本的な事情を知らねば匿う事もできないため、続けて尋ねるルネス卿。
「それは……私が狙われているからです」
「誰にと窺っていいでしょうか?」
「……詳しくは言えません。ですがどうかお願いできないでしょうか?」
シャノア姫の真摯な態度にルネス卿と見合わせ儂は頷く。
「わかりました、ですが戦が起こった際にのみ私の方で匿いましょう。ぺトラ卿の領地ではいざこざもあるかもしれませんのでね」
(気を遣わせたようですまんなルネス卿)
目で礼をするとシャノア姫は晴れやかな笑みを浮かべた。
「ありがとうございます。その際は此方から直接伺いますのでよろしくお願いします。それでは」
軽く頭を下げドレスの端を右手で持ち上げ挨拶をするとテラスから出て行った。
「いったい何だったのだろうか?」
疑問に思った事がつい口に出てしまったが特に問題もないだろう。
「確かにな……匿うほどの何かがあるのだろう。誰かに狙われるような立場の方ではないと思うのだが、いった何があるのやら」
(どこもかしこも物騒な話ばかりで気が滅入るの)
「シャノア姫の要件は置いておくとしてだ、ダンジョンの調査は何時頃になりそうなのだ? 出来ればロマーリアを合流させてからがいいのじゃが……カナリッジがいつ動くやもしれんこの状況だ我がままは言っておられんか」
そんな儂の我がままに応えるのはルネス卿だ。
「なにそのくらいの時間はあると思うが、先発隊へは間に合わないだろうがその後の者と合流すればよかろう」
「ふむ、ルネス卿恩に着る」
「なに構わんよ。ぺトラ卿との仲だ気にしなくてよい」
ルネス卿の言葉に暫し頷き、もう一度テラスからの夜景を眺めた。
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その後、マリベルとロマーリアを連れて控室に戻ると早々王城を発つ準備をする。
「ぺトラ様、色々と聞き込みをしてみましたがやはり他の方達は知らないようでした」
「そうかご苦労であった」
「殆どの者はシャノア姫の登場でそれどころではなかったがな」
ロマーリアが会場でのことを話ながら専属のメイドと支度をしている。
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