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第2部
フェーズ7.9-21
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ロビーに足を踏み入れたとき、大人の階段を一段登ったような気がした。学会が終わったらラブホテルへ、と約束した通り、週末の今日、本当に連れてきてくれた。最近リニューアルオープンしたばかりのホテルで、外装も内装も新しくてきれいだ。
薄暗いロビーのタッチパネルで部屋を選ぶ。最上階はVIPルーム、他にもプールやサウナつきの部屋があるが、残念ながら空いていない。土曜日の夜だから仕方ないか。
私が部屋を選び、涼がフロントで清算をしてくれた。フロントには目隠しのカバーがついていて、普通のホテルとはあきらかに雰囲気が異なっていた。やはりここはそういう場所なんだ。自分から行きたいと頼み込んだのだから、怖気づくわけにはいかない。
「新しいし明るいし、汚らわしさもそんなにないから、いいか」
選んだ部屋に入り、室内を見回した涼が呟いた。廊下を進んだ先の広々とした空間に大きなベッドとソファセットがあり、左手がバスルームとトイレだ。シティホテルを思わせるスタイリッシュな内装で、イメージしていたようないかにもなケバケバしさはない。今回はお試しだから三時間の休憩にしたけれど、こんなに豪華ならいつか宿泊もしてみたい。
「ベッド、大きくてふかふかだよ」
大きなベッドに寝転んでみる。涼の部屋のダブルベッドよりも大きい。寝返りどころかごろごろ転がれる。二人で手を広げても余裕がありそうだ。
ベッドの上にバスローブが二着並べられている。枕元にはボタンがいくつもあるパネルと、その隣にコンドームやアダルトグッズが置いてある。なんか、やらしい。いくら内装がシティホテルのようでも、このあたりはしっかりラブホテルだ。
「先にシャワー浴びてくれば。それとも時間がもったいないからもう始める?」
私にバスローブを差し出しながら涼が言った。
「浴びる」
受け取ってバスルームへ向かう。その途中で気がついた。
「いつも一緒に入りたがるのに」
ベッドのパネルと同様に、お風呂にもわけのわからないスイッチ類があるかもしれない。なんとなく心細い。
「バスローブを着て出てきた彩を見たいから」
何を言ってるんだか。バスローブなら絶対に涼のほうが似合うと思う。
バスルームの扉を開けた私は歓声を上げた。こちらも広くてすごく豪華だ。グレーの石調タイルに白い丸形のバスタブが映えている。シティーホテルのスイートルームだったら一泊何万円もしそう。それが数千円で滞在できるのだから、ラブホテルはお得だ。
手前の洗面台にはアメニティが数種類用意されている。クレンジングオイルや化粧水、ボディーソープなど。その中に泡風呂入浴剤も見つけた。これはもしかして、憧れのぶくぶくしながらのもこもこの泡風呂が楽しめるやつでは。
「涼、ジェットバスだよ! 泡風呂だよ! あとで一緒に入ろうよ」
戻って興奮しながら伝えると、涼がくすっと笑った。
「積極的だな。もちろん入るよ。終わってからゆっくり」
しまった。「一緒に入ろう」なんて、はしゃぎすぎて普段は言わないことを口走った。一人で舞い上がってて恥ずかしい。シャワーを浴びながら少し落ち着こう。
あまり時間がないから体だけ洗って出た。初めてバスローブというものに袖を通す。下着はつけたほうがいいのだろうか。バスローブとはバスタオルを服にしたようなものだろうだから、素肌の上にそのまま羽織っていいような気がする。迷ったあげく、私は下だけ身につけることにした。
涼はベッドに寝転がってテレビを見ていた。テレビも大きくて、一般家庭にはなかなかなさそうなサイズだ。映画でも見たいところだけど、今日はそんな時間はない。
私に気がついた涼がこちらを見るなり、にやっと笑った。
「ノーブラ?」
私は両手でさっと胸元を隠した。
交代で涼がバスルームへ入った。その間に部屋の中を探索してみよう。
そういえば、涼が言ってたコスプレは実際にあるのだろうか。部屋に入ってすぐの壁にスリムな扉があったのを思い出した。位置からしてクローゼットかもしれない。
正解だった。中には非日常的な衣装の数々が掛けられていた。お目当ての白衣もある。でも、病院で勤務中に着てるからかっこいいのであって、本物の医者がこういうところでコスプレで着ても違和感があるなあ。他にもナース服とかチアリーダーとか、本当にいろいろ揃ってる。女子高生の制服もある。私が着ていたのと似たブレザーだ。懐かしい。卒業する前に一度だけ、制服を着て涼としたことがあった。コスプレがあるくらいだし、あのときは涼も興奮したのかな。どれももちろんクリーニングはされているだろうけど、それでもなんだか生々しい。気乗りせず、私は何も取らずに扉を閉めた。
薄暗いロビーのタッチパネルで部屋を選ぶ。最上階はVIPルーム、他にもプールやサウナつきの部屋があるが、残念ながら空いていない。土曜日の夜だから仕方ないか。
私が部屋を選び、涼がフロントで清算をしてくれた。フロントには目隠しのカバーがついていて、普通のホテルとはあきらかに雰囲気が異なっていた。やはりここはそういう場所なんだ。自分から行きたいと頼み込んだのだから、怖気づくわけにはいかない。
「新しいし明るいし、汚らわしさもそんなにないから、いいか」
選んだ部屋に入り、室内を見回した涼が呟いた。廊下を進んだ先の広々とした空間に大きなベッドとソファセットがあり、左手がバスルームとトイレだ。シティホテルを思わせるスタイリッシュな内装で、イメージしていたようないかにもなケバケバしさはない。今回はお試しだから三時間の休憩にしたけれど、こんなに豪華ならいつか宿泊もしてみたい。
「ベッド、大きくてふかふかだよ」
大きなベッドに寝転んでみる。涼の部屋のダブルベッドよりも大きい。寝返りどころかごろごろ転がれる。二人で手を広げても余裕がありそうだ。
ベッドの上にバスローブが二着並べられている。枕元にはボタンがいくつもあるパネルと、その隣にコンドームやアダルトグッズが置いてある。なんか、やらしい。いくら内装がシティホテルのようでも、このあたりはしっかりラブホテルだ。
「先にシャワー浴びてくれば。それとも時間がもったいないからもう始める?」
私にバスローブを差し出しながら涼が言った。
「浴びる」
受け取ってバスルームへ向かう。その途中で気がついた。
「いつも一緒に入りたがるのに」
ベッドのパネルと同様に、お風呂にもわけのわからないスイッチ類があるかもしれない。なんとなく心細い。
「バスローブを着て出てきた彩を見たいから」
何を言ってるんだか。バスローブなら絶対に涼のほうが似合うと思う。
バスルームの扉を開けた私は歓声を上げた。こちらも広くてすごく豪華だ。グレーの石調タイルに白い丸形のバスタブが映えている。シティーホテルのスイートルームだったら一泊何万円もしそう。それが数千円で滞在できるのだから、ラブホテルはお得だ。
手前の洗面台にはアメニティが数種類用意されている。クレンジングオイルや化粧水、ボディーソープなど。その中に泡風呂入浴剤も見つけた。これはもしかして、憧れのぶくぶくしながらのもこもこの泡風呂が楽しめるやつでは。
「涼、ジェットバスだよ! 泡風呂だよ! あとで一緒に入ろうよ」
戻って興奮しながら伝えると、涼がくすっと笑った。
「積極的だな。もちろん入るよ。終わってからゆっくり」
しまった。「一緒に入ろう」なんて、はしゃぎすぎて普段は言わないことを口走った。一人で舞い上がってて恥ずかしい。シャワーを浴びながら少し落ち着こう。
あまり時間がないから体だけ洗って出た。初めてバスローブというものに袖を通す。下着はつけたほうがいいのだろうか。バスローブとはバスタオルを服にしたようなものだろうだから、素肌の上にそのまま羽織っていいような気がする。迷ったあげく、私は下だけ身につけることにした。
涼はベッドに寝転がってテレビを見ていた。テレビも大きくて、一般家庭にはなかなかなさそうなサイズだ。映画でも見たいところだけど、今日はそんな時間はない。
私に気がついた涼がこちらを見るなり、にやっと笑った。
「ノーブラ?」
私は両手でさっと胸元を隠した。
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そういえば、涼が言ってたコスプレは実際にあるのだろうか。部屋に入ってすぐの壁にスリムな扉があったのを思い出した。位置からしてクローゼットかもしれない。
正解だった。中には非日常的な衣装の数々が掛けられていた。お目当ての白衣もある。でも、病院で勤務中に着てるからかっこいいのであって、本物の医者がこういうところでコスプレで着ても違和感があるなあ。他にもナース服とかチアリーダーとか、本当にいろいろ揃ってる。女子高生の制服もある。私が着ていたのと似たブレザーだ。懐かしい。卒業する前に一度だけ、制服を着て涼としたことがあった。コスプレがあるくらいだし、あのときは涼も興奮したのかな。どれももちろんクリーニングはされているだろうけど、それでもなんだか生々しい。気乗りせず、私は何も取らずに扉を閉めた。
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