ドクターダーリン【完結】

桃華れい

文字の大きさ
上 下
47 / 136
第1部

フェーズ5-1

しおりを挟む
 リビングに移動し、もみの木モチーフのキャンドルに火を灯す。キャンドルの隣にはプレゼントしてくれたバラも飾ってある。部屋の明かりを消すと、ここだけクリスマスムードに包まれた。
「クリスマスプレゼントってほどでもないんだけど、これ」
 私はキャンドルの他にもうひとつ買ったものをバッグから取り出した。
「ハンドクリーム?」
「仕事中に何度も手を洗うでしょ? 手荒れすると思って」
「もしかしてお前、医者と付き合ったことある?」
 渡したチューブを見つめながら涼が驚いている。
「あるわけないでしょ」
 付き合うのも初めてなんだから。
「ハンドクリームはありがたいよ。無香料だし、完璧」
 無香料でオイルフリーの、ちょっといいのを選んだ。喜んでもらえてよかった。実は涼とお揃いで使いたくて、自分用にも同じものを買った。
「ありがとな」
「私のほうこそ、お花ありがとう」
 見つめ合い、どちらからともなくキスをして、ソファに倒れ込んだ。お互いを味わうようにねっとりと舌を絡ませる。今日のキスは優しい。これはこれで、大事にされてる、愛されてるのが伝わってきて、やっぱり息が上がってしまう。
 涼の手が私のスカートの中に入ってきて、太ももを撫でた。初めて触れられる場所に、ドキッとした。
「彩……」
 唇を離して見つめ合う。
「ここ、触っていい?」
 どこ、と思った瞬間、パンツの上から涼が割れ目にそっと触れた。思わぬ場所を触られて、一瞬、体が強ばった。
「そこ、は……」
「そんなとろんとした顔して……つらいだろうから、もっとよくしてやりたい」
「でも、そんなこと……」
 そんなことをしたら、最後までしたくなってしまうのでは。戸惑う私を見透かしたように涼が優しく言った。
「最後まではしない。彩が気持ちよくなってくれればそれでいい。な? クリスマスプレゼント」
 プレゼントならもうもらったのに。涼が見つめる。本当にいいのかな。私はゆっくりと頷いた。
「あっ……!」
 パンツの中に手を入れて、直接触られた。全身にビリッと電気が流れたかのような強い刺激を感じた。
「こんな顔になるわけだ」
 涼が勝手に納得している。
「や……」
 彼が指を動かす。往復する度に湿った音がしてぬるぬるになっていくのがわかる。
「彩、ここ、わかるか?」
 指の先端が窪んだ部分に当てられた。窪みというか、もしかしてそこは……。
「俺とお前が繋がるところ」
 耳元で囁かれて、どうにかなってしまいそう。
「でも今日はまだ、な」
 そのまま首筋を舐めるように口づけながら、指の動きが速くなっていく。
「や、待っ……んん」
 待って、と言おうとしたら唇を塞がれた。また舌が入ってくるが、応える余裕はない。本当に待って。これ以上されたらおかしくなっちゃう。胸を触られて吸われたときとは比べものにならないくらい、気持ちいいの。
「っ……はあっ」
 唇が解放された。
「あっ、ダメ……あっ……あっ!」
 涼に見つめられる中、自分の意思とは無関係に脚が震え出した。やがて体が大きく跳ね、同時に頭の中が真っ白になった。こんな感覚は初めて。何も考えられない。
 呼吸を荒くしている私の額に、涼が優しくキスをする。私、触られてしまった。初めて、涼に。でも涼だから、いい。とりあえず今は、恥ずかしくて顔が見られない。
 ふわふわする。疲れたのとは少し違う。なんだかとても心地よい。しばらくこのままでいさせて。

 薄暗い灯りの中で目を覚ました。ここはどこだっけ。私の部屋? すぐに意識がはっきりした。違う、涼の部屋だ。どうしてベッドにいるんだっけ。さっきソファで涼に触られてすごく気持ちよくなって、ふわふわした気分のまま眠ってしまったんだ。そこまで記憶を呼び起こしたところで、私は勢いよく起き上がった。今、何時だろう!?
「ん……?」
 すぐ隣で眠っていたらしい涼も目を覚ました。電気スタンドの灯りの中、サイドテーブルの置時計で時間を確認する。
「十時!?」
 夜の十時を回っている。どうしよう、家に連絡していない。
「家には俺から連絡しといたよ」
「なんて?」
「『クリスマスで張り切って料理作ったせいで疲れて寝てるから、泊まらせます。まだ手は出さないのでご心配なく』って」
 顔がサーッと青ざめる。
「最後のは嘘だよね?」
 この人は勝手になんてことを言ってるの。親にそういう話をされるのは恥ずかしい。どんな顔をして帰ったらいいかわからない。
「嘘だよ。とにかく連絡はして了承ももらったから」
「ありがと」
 安心して私は背中をベッドに戻した。服はさっきと同じ、涼に買ってもらったもこもこ素材のルームウェアのままだから、このまま眠っても大丈夫だ。ただ、ベッドに移動してきた憶えがない。
「ベッドまで運んでくれたの?」
「よく寝てたから、起こすのもったいない気がして」
 もったいないとは。何かたくらんでたのだろうか。さっき触られただけでそれ以上のことはしてないと思う。触られただけでも私にとってはすごいことだ。恥ずかしい声も出してしまった。思い出したら顔から火が出そう。
 ちらりと涼を見る。眠そう、というかまた眠っちゃったのかな。私が眠っている間にシャワーを浴びたようで、体から石鹸とシャンプーの香りが漂っている。
 結局、イブにお泊まりすることになってしまった。学校はすでに冬休みに入っている。明日の朝、涼を見送ってからバスで家に帰ることにしよう。待って、つまり朝帰りだ。イブの翌日に朝帰りなんてとてつもなく気まずい。
「手は出さないってのは、前に彩のお母さんに話したよ」
 あ、起きてた。
「え? いつ?」
 嘘、本当に言ったの?
「二連泊した日。婚約してるとはいえお前はまだ高校生なんだから、心配かけないほうがいいと思って。意外だったみたいで、大笑いされたよ」
 合間に一緒に帰ったときだ。私が部屋にいる間に母とそんな話をしていたなんて。それなら変な想像をされることはないと思うから、安心かな。でも今日は、まったく何もしていないわけではない。平然とした顔で帰れるだろうか。花には絶対にまたからかわれそうだ。にやにやした顔が目に浮かぶ。
 今日はいろいろあったな。昼間は、涼が呼び出されて出かけてしまって、いつ帰ってくるかわからない状況にがっかりしたけれど、夜はちゃんと一緒に過ごせた。さっきソファでされたことは、これからクリスマスのたびに思い出してしまいそうだ。恋人同士での最初で最後のクリスマスの思い出は、しっかり作れたかも。サプライズでもらったバラの花束のことも忘れない。
 横を向くと涼はすでに寝息を立てて眠っていた。妙にすっきりした顔で。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

駆け引きから始まる、溺れるほどの甘い愛

玖羽 望月
恋愛
 雪代 恵舞(ゆきしろ えま)28歳は、ある日祖父から婚約者候補を紹介される。  アメリカの企業で部長職に就いているという彼は、竹篠 依澄(たけしの いずみ)32歳だった。  恵舞は依澄の顔を見て驚く。10年以上前に別れたきりの、初恋の人にそっくりだったからだ。けれど名前すら違う別人。  戸惑いながらも、祖父の顔を立てるためお試し交際からスタートという条件で受け入れる恵舞。結婚願望などなく、そのうち断るつもりだった。  一方依澄は、早く婚約者として受け入れてもらいたいと、まずお互いを知るために簡単なゲームをしようと言い出す。 「俺が勝ったら唇をもらおうか」  ――この駆け引きの勝者はどちら? *付きはR描写ありです。 エブリスタにも投稿しています。

ma.chaaaa
恋愛
病弱な女の子美雪の日常のお話です。 ーーーーー 生まれつき病弱体質であり、病院が苦手な主人公 月城美雪(ツキシロ ミユキ) 中学2年生の13歳。喘息と心臓病を患ってい、病院にはかなりお世話になっているが病院はとても苦手。 美雪の双子の兄 月城葵 (ツキシロアオイ) 月城家の長男。クールでいつでも冷静沈着。とてもしっかりしてい、ダメなことはダメと厳しくよく美雪とバトっている。優秀な小児外科医兼小児救急医であるためとても多忙であり、家にいることが少ない。 双子の弟 月城宏(ツキシロヒロ) 月城家の次男。葵同様に医師免許は持っているが、医師は辞めて教員になった。美雪が通う中高一貫の数学の教師である。とても優しく、フレンドリーであり、美雪にとても甘いためお願いは体調に関すること以外はなんでも聞く。お母さんのような。 双子は2人とも勉強面でもとても優秀、スポーツ万能、イケメンのスタイル抜群なので狙っている人もとても多い。 父は医療機器メーカー月城グループの代表兼社長であり、海外を飛び回っている。母は、ドイツの元モデルでありとても美人で美雪の憧れの人である。 四宮 遥斗(シノミヤ ハルト) 美雪の担当医。とても優しく子ども達に限らず、保護者、看護師からとても人気。美雪の兄達と同級生であり、小児外科医をしている。美雪にはとても手をやかされている… 橘 咲(タチバナ サキ) 美雪と同級生の女の子。美雪の親友。とても可愛く、スタイルが良いためとてもモテるが、少し気の強い女の子。双子の姉。 橘 透(タチバナ トオル) 美雪と同級生の男の子。咲の弟。美雪とは幼なじみ。美雪に対して密かに恋心を抱いている。サッカーがとても好きな不器用男子。こちらもかなりモテる

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

白衣の下 先生無茶振りはやめて‼️

アーキテクト
恋愛
弟の主治医と女子大生の恋模様

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

オオカミ課長は、部下のウサギちゃんを溺愛したくてたまらない

若松だんご
恋愛
 ――俺には、将来を誓った相手がいるんです。  お昼休み。通りがかった一階ロビーで繰り広げられてた修羅場。あ~課長だあ~、大変だな~、女性の方、とっても美人だな~、ぐらいで通り過ぎようと思ってたのに。  ――この人です! この人と結婚を前提につき合ってるんです。  ほげええっ!?  ちょっ、ちょっと待ってください、課長!  あたしと課長って、ただの上司と部下ですよねっ!? いつから本人の了承もなく、そういう関係になったんですかっ!? あたし、おっそろしいオオカミ課長とそんな未来は予定しておりませんがっ!?  課長が、専務の令嬢とのおつき合いを断るネタにされてしまったあたし。それだけでも大変なのに、あたしの住むアパートの部屋が、上の住人の失態で水浸しになって引っ越しを余儀なくされて。  ――俺のところに来い。  オオカミ課長に、強引に同居させられた。  ――この方が、恋人らしいだろ。  うん。そうなんだけど。そうなんですけど。  気分は、オオカミの巣穴に連れ込まれたウサギ。  イケメンだけどおっかないオオカミ課長と、どんくさくって天然の部下ウサギ。  (仮)の恋人なのに、どうやらオオカミ課長は、ウサギをかまいたくてしかたないようで――???  すれ違いと勘違いと溺愛がすぎる二人の物語。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...