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第2話 イカロスになりたい!
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初依頼から1週間後…あれからプロジェクトに反響があったかというと…
山田「ルネさん、アトリエのサイトやSNSに前回の依頼者さんの写真を載せて(もちろん許可はとってある)PRを測ってみましたけど、なかなか依頼来ませんね…」
「いいえ、たった今来たわ。今回の依頼は小学1年生の男の子よ。」
「ルネさんこんにちは!僕は小学1年生のタイチです!
僕は昔から怖がりで周りから”弱虫”とバカにされてきました。そんな中で小さいころから大好きなお話があります。
ギリシャ神話のイカロスのお話です。
イカロスは翼が溶けて真っ逆さまに落ちてしまいましたが、僕は勇気をもって蝋で固めた翼で飛び上がったイカロスを勇気を持ったカッコイイ人だと昔から尊敬してました。
そこで僕もイカロスのような翼をつけてバンジージャンプをしてみんなに勇気をみせたいです!
ルネさんたちの力でどうか僕にイカロスの翼を授けてください!」
山田「イカロスねえ…この少年の前では決して言えませんが僕は子供の頃”調子乗って太陽まで飛び上がったことが裏目に出た愚か者”なんて思ってた時期がありますよ…成長するにつれてその考えも変わってきましたけど。」
ルネ「確かにイカロスの物語は人間の愚かさを風刺する物語としてとられることもあれば、蝋で固めた翼で勇気をもって飛び上がったイカロスを勇気の象徴としてたたえることもあるわね…人や考え方によってここまでとらえ方が変わる物語も珍しいんじゃないんかしら?」
山田「ちなみにルネさんはイカロスをどう思ってるんですか?愚か者?それとも勇気あるもの?」
「さあ?でもあの少年に同じことを聞かれたら彼にショックのない返答を出すつもりよ。」
以来から数日後、タイチ少年にアトリエへ来てもらい、採寸。
それからさらに数日後、ルネは製作途中の翼を見てもらおうとタイチを再びアトリエに招く。
「ルネさんこんにちは…」
「あら、こんにちはタイチくん。向こうを見て、あれがイカロスの翼よ…」
「お~っ!スゴイ!デカイ!今にも羽ばたけそうな本物みたいな翼だ~!!もっと近くで見ていいですか?」
「ええ、どうぞ…」
「ありがとうございます!…スゴイ!羽1枚1枚が成功にできてて…よく見ると羽の周りに蝋で固めたような質ガンもある!」
「まだまだ製作途中よ…完成したら翼の迫力にあなたはもっと驚くと思うわ…本物のイカロスの翼のような質感を出すために私たちは労力を惜しまないわ…プロですから…」
「僕のためにありがとうございます!…そうだ!ルネさんに聞きたいことがあったんだ!」
「何かしら?」
「ルネさんはイカロスのことをどう思ってますか?周りは調子乗ったバカとか言ってますけど僕にとっては勇気あるヒーローです!」
山田「おっ!あの質問が出た!!さあルネさんどう答える!?」
「…私は”イカロスは自分”だと思っているわ…」
「?どういうことですか?」
「イカロスは時に英雄とされることもあれば無謀者・愚か者と言われることもある…だがそれでも彼は翼をつけて勇気をもって飛び立った。私はこのプロジェクトを始めたとき、人々から無謀と言われ続けた…残念ながら今でも世間の目はまだ変わってないわ…それでも私はこのプロジェクトを始めた私のことを良い意味で”勇気ある人”と思ってくれる人が少しでも増えるまでこのプロジェクトはやめないつもりよ。タイチくん、あなたには私のことがあなたにとってのイカロスと同じに見えるかしら?」
「…はい!ルネさんたちは僕のためにイカロスの翼を作ってくれてます!あなた達は僕のイカロスです!!」
山田「どこか哲学的な質問だったけどあの少年しっかり答えてくれてるな…そういう子が将来大成するもんなんだよな…」
それからさらに数日後、いよいよバンジージャンプの日。
タイチの家から車で20分ほどのところにある公園にあるバンジージャンプ台が彼がイカロスとなる舞台だ。
勇気を持った自分を見てほしいとクラスメイトたち数人も呼んだ。そして家族も見守っている。
ルネ「タイチくん、これがあなたのイカロスの翼よ…」
「わぁ~!完成品はもっとすごいや~!本当に勇気が湧いてきそうだ!ありがとうございます!」
翼を装着し、いよいよバンジー台へ。しかし…
タイチ「う~…足がすくんできた…ごめんなさいルネさん。僕はイカロスにはなれないかも…」
「少年…勇気を出して…私も世間の目という荒波と戦ってるのだから…」
そしてやってきた頂上。彼の年齢で飛ぶことができる最も高い高さだ。ロープも装着して後は飛ぶだけ…だが…
「う~…下を見たらやっぱり怖くなってきた…やっぱり僕はイカロスじゃない!ただの弱虫な人間なんだ!」
「ほ~ら!やっぱりダメじゃんかよ!お前はやっぱり弱虫タイチなんだ!そんなやつが無謀者のイカロスのコスプレしたって何ら変わらねえんだよ!」
…心無いクラスメイトからのヤジが飛ぶ…
「ほら!やっぱりこういわれるんだ!僕はイカロスなんかじゃないんだよ~!」
ルネ「(やっぱりこの子今の私と重なるとこがあるわ…)…タイチくん、あなたはイカロスよ。あなたにとってイカロスは勇気あるヒーローでしょ?ここで飛ばなきゃあなたが嫌がっているイカロスを無謀者とバカにする人たちを肯定してしまうことになるのよ!さあ!飛ぶのよイカロス!」
「…はい!僕はイカロス…勇気をもってこの当から飛び立つんだ!!」
タイチは息を大きく飲み込み、歯を食いしばって飛び降りた。
「お~スゲ~!」「アイツやるな~」「見直したぜ!」
さっきまで馬鹿にしていたクラスメイトも称賛の嵐。
「すごいわ、あの子自分から勇気をもって動けるなんて…」
見守っていたタイチの母の目からは光るものが…
ルネ「すごいわ!タイチくん、私の目にはあなたが本物のイカロスに見えたわ!」
クラスメイト「ごめんなタイチ、バカにしてて…お前の勇気には脱帽だ!お前こそ真の勇気を持ったもの…イカロスだ!!」
「ありがとう!ルネさん、みんな!」
それから数日後、タイチからお礼のメールが…
「ルネさん、先日は本当にありがとうございました!あの日以来僕はいろんなことにチャレンジする勇気が湧いてきました!そして新たなチャレンジをしたく今度体操教室に通うことになりました!イカロスじゃないけどトランポリンや鉄棒で華麗に舞えるように頑張りたいです!真っ向からチャレンジしていく僕の姿を見て僕のことを弱虫という人はいなくなりました。イカロスの翼は溶けても、あの時翼からもらったイカロスの勇気は僕の中に生き続けています!!ルネさんたちのおかげです!ありがとうございました!ルネさんたちは僕のイカロスです!」
ルネ「タイチくん…私たちがしてあげたのは勇気をあげることじゃない、背中を押すこと…本当のイカロスの翼はあなたの中に今もあるのだから…」
山田「ルネさん、アトリエのサイトやSNSに前回の依頼者さんの写真を載せて(もちろん許可はとってある)PRを測ってみましたけど、なかなか依頼来ませんね…」
「いいえ、たった今来たわ。今回の依頼は小学1年生の男の子よ。」
「ルネさんこんにちは!僕は小学1年生のタイチです!
僕は昔から怖がりで周りから”弱虫”とバカにされてきました。そんな中で小さいころから大好きなお話があります。
ギリシャ神話のイカロスのお話です。
イカロスは翼が溶けて真っ逆さまに落ちてしまいましたが、僕は勇気をもって蝋で固めた翼で飛び上がったイカロスを勇気を持ったカッコイイ人だと昔から尊敬してました。
そこで僕もイカロスのような翼をつけてバンジージャンプをしてみんなに勇気をみせたいです!
ルネさんたちの力でどうか僕にイカロスの翼を授けてください!」
山田「イカロスねえ…この少年の前では決して言えませんが僕は子供の頃”調子乗って太陽まで飛び上がったことが裏目に出た愚か者”なんて思ってた時期がありますよ…成長するにつれてその考えも変わってきましたけど。」
ルネ「確かにイカロスの物語は人間の愚かさを風刺する物語としてとられることもあれば、蝋で固めた翼で勇気をもって飛び上がったイカロスを勇気の象徴としてたたえることもあるわね…人や考え方によってここまでとらえ方が変わる物語も珍しいんじゃないんかしら?」
山田「ちなみにルネさんはイカロスをどう思ってるんですか?愚か者?それとも勇気あるもの?」
「さあ?でもあの少年に同じことを聞かれたら彼にショックのない返答を出すつもりよ。」
以来から数日後、タイチ少年にアトリエへ来てもらい、採寸。
それからさらに数日後、ルネは製作途中の翼を見てもらおうとタイチを再びアトリエに招く。
「ルネさんこんにちは…」
「あら、こんにちはタイチくん。向こうを見て、あれがイカロスの翼よ…」
「お~っ!スゴイ!デカイ!今にも羽ばたけそうな本物みたいな翼だ~!!もっと近くで見ていいですか?」
「ええ、どうぞ…」
「ありがとうございます!…スゴイ!羽1枚1枚が成功にできてて…よく見ると羽の周りに蝋で固めたような質ガンもある!」
「まだまだ製作途中よ…完成したら翼の迫力にあなたはもっと驚くと思うわ…本物のイカロスの翼のような質感を出すために私たちは労力を惜しまないわ…プロですから…」
「僕のためにありがとうございます!…そうだ!ルネさんに聞きたいことがあったんだ!」
「何かしら?」
「ルネさんはイカロスのことをどう思ってますか?周りは調子乗ったバカとか言ってますけど僕にとっては勇気あるヒーローです!」
山田「おっ!あの質問が出た!!さあルネさんどう答える!?」
「…私は”イカロスは自分”だと思っているわ…」
「?どういうことですか?」
「イカロスは時に英雄とされることもあれば無謀者・愚か者と言われることもある…だがそれでも彼は翼をつけて勇気をもって飛び立った。私はこのプロジェクトを始めたとき、人々から無謀と言われ続けた…残念ながら今でも世間の目はまだ変わってないわ…それでも私はこのプロジェクトを始めた私のことを良い意味で”勇気ある人”と思ってくれる人が少しでも増えるまでこのプロジェクトはやめないつもりよ。タイチくん、あなたには私のことがあなたにとってのイカロスと同じに見えるかしら?」
「…はい!ルネさんたちは僕のためにイカロスの翼を作ってくれてます!あなた達は僕のイカロスです!!」
山田「どこか哲学的な質問だったけどあの少年しっかり答えてくれてるな…そういう子が将来大成するもんなんだよな…」
それからさらに数日後、いよいよバンジージャンプの日。
タイチの家から車で20分ほどのところにある公園にあるバンジージャンプ台が彼がイカロスとなる舞台だ。
勇気を持った自分を見てほしいとクラスメイトたち数人も呼んだ。そして家族も見守っている。
ルネ「タイチくん、これがあなたのイカロスの翼よ…」
「わぁ~!完成品はもっとすごいや~!本当に勇気が湧いてきそうだ!ありがとうございます!」
翼を装着し、いよいよバンジー台へ。しかし…
タイチ「う~…足がすくんできた…ごめんなさいルネさん。僕はイカロスにはなれないかも…」
「少年…勇気を出して…私も世間の目という荒波と戦ってるのだから…」
そしてやってきた頂上。彼の年齢で飛ぶことができる最も高い高さだ。ロープも装着して後は飛ぶだけ…だが…
「う~…下を見たらやっぱり怖くなってきた…やっぱり僕はイカロスじゃない!ただの弱虫な人間なんだ!」
「ほ~ら!やっぱりダメじゃんかよ!お前はやっぱり弱虫タイチなんだ!そんなやつが無謀者のイカロスのコスプレしたって何ら変わらねえんだよ!」
…心無いクラスメイトからのヤジが飛ぶ…
「ほら!やっぱりこういわれるんだ!僕はイカロスなんかじゃないんだよ~!」
ルネ「(やっぱりこの子今の私と重なるとこがあるわ…)…タイチくん、あなたはイカロスよ。あなたにとってイカロスは勇気あるヒーローでしょ?ここで飛ばなきゃあなたが嫌がっているイカロスを無謀者とバカにする人たちを肯定してしまうことになるのよ!さあ!飛ぶのよイカロス!」
「…はい!僕はイカロス…勇気をもってこの当から飛び立つんだ!!」
タイチは息を大きく飲み込み、歯を食いしばって飛び降りた。
「お~スゲ~!」「アイツやるな~」「見直したぜ!」
さっきまで馬鹿にしていたクラスメイトも称賛の嵐。
「すごいわ、あの子自分から勇気をもって動けるなんて…」
見守っていたタイチの母の目からは光るものが…
ルネ「すごいわ!タイチくん、私の目にはあなたが本物のイカロスに見えたわ!」
クラスメイト「ごめんなタイチ、バカにしてて…お前の勇気には脱帽だ!お前こそ真の勇気を持ったもの…イカロスだ!!」
「ありがとう!ルネさん、みんな!」
それから数日後、タイチからお礼のメールが…
「ルネさん、先日は本当にありがとうございました!あの日以来僕はいろんなことにチャレンジする勇気が湧いてきました!そして新たなチャレンジをしたく今度体操教室に通うことになりました!イカロスじゃないけどトランポリンや鉄棒で華麗に舞えるように頑張りたいです!真っ向からチャレンジしていく僕の姿を見て僕のことを弱虫という人はいなくなりました。イカロスの翼は溶けても、あの時翼からもらったイカロスの勇気は僕の中に生き続けています!!ルネさんたちのおかげです!ありがとうございました!ルネさんたちは僕のイカロスです!」
ルネ「タイチくん…私たちがしてあげたのは勇気をあげることじゃない、背中を押すこと…本当のイカロスの翼はあなたの中に今もあるのだから…」
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