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第4部 漫画・出版史
不況に裸一貫で立ち向かった少年~ド根性小学生ボン・ビー太~
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2008年、世界をリーマンショックという歴史的大不況が襲い、国内外経済が混沌に包まれたとき、コロコロではこの逆風に立ち向かうかのような少年が主人公のひとつのギャグマンガが始まった。「ド根性小学生ボン・ビー太」。家無し服なし(常に全裸でマジックペンで体に服の模様を書いてある。途中から股間に「パンツ」として葉っぱをつけるが最後まで服は着ないまま)所持金0円の小学生「ボン・ビー太」のド根性生活を描くギャグだ。
元々春に2号連続読み切りとして掲載されたものが同年秋に連載に昇格。その後2013年まで5年にわたって連載が続き、ゲーム化やテレビ東京系「おはコロ」でコーナーが作られるなどじーさん、ケシカス、ペン問に並ぶコロコロオリジナルギャグの看板作品となった。
ビー太のウリのひとつが「様々なド根性技」。ビー太は金が無ければ家も服もない。だが計り知れないド根性とそれでどんな困難も乗り越える知恵なら有り余るぐらい持っている。
例えばエチケットとして体を清潔にきれいにするのはもちろんマナーだが、ビー太は家が無いから当然風呂もない。じゃあどうやって体を洗うか?そこで「ド根性シャンプー」。大量に降り注ぐ雨をシャワーにして体を洗うのだ。
第1話における記念すべき初登場シーンにおいてもいきなりこの技を披露した。多くの人にとっては厄介者の雨も、ビー太にとっては重要な生活インフラである。
次に現代っ子としてゲームはやりたいが当然ビー太には買えない。そこで「エアDS」。エアギターの要領で当時の携帯ゲーム機界のトップ、DSを再現。
このほかにも鋭い嗅覚で地球の裏側(すなわちブラジル)のコーヒーのにおいを嗅ぎ分けたり、お札を追いかけて空を飛んだり、静電気で発電したり(ゲームでは攻撃技に)…などと1回、数回のみのものも含めても多数のド根性技を披露してきた。
漫画的誇張とはいえ、少ない小遣いで趣味の世界を生きる子供たちにとってはどこか共感できるところもあっただろう。「自分だってほしいものはいっぱいあるけど小遣いが足りないから全部は買えない。でもビー太は1銭も持ってないのにド根性でなんとかやってる」と勇気を与えてくれたはずだ。
そしてこの作品にもまた、魅力的なサブキャラたちがいる。ビー太と並んで準主役級に活躍した2人を紹介しよう。
ひとり目は「オバマくん」。言うまでもなく時の某大統領がモデルなわけなのだが、ビー太と違ってこちらは財閥の息子で破格のお金持ち。登場の度に毎回数百万~億単位の金を使って様々なピンチを解決していくが、コンビニでトイレ借りた際に何か買わないと気まずいからと店を丸ごと買ったり、しりもちをついた際にその治療のためだけに病院を建てたり、かまくらを作るためになぜか貴金属と宝石類を用意したり、ペットの犬のために普通に人間の住めるサイズ…というか誰もが普通に人間の住む家と錯覚する大豪邸の犬小屋を建てたり…とあげたらキリがないぐらいの金の使いよう。
個人的にはビー太がすっぽんぽんなことに抗議がくるよりも、オバマくんがアメリカ大使館にクレームが来ないか心配だったぐらいだ。こんだけ金遣い荒いキャラだから。
もうひとりは「筋ちゃん」。ビー太やオバマくんと違って普通の家庭だが、とにかくムキムキ。家族までムキムキである。故に力や筋肉を駆使したギャグを繰り広げる。
「ボンビー・金持ち・筋肉バカ」…誰ひとり個性のかぶらない3人が見事に調和することによりより暴走した笑いを生み出していたのだ。
世がバブルに沸いていた80年代後半~90年代初頭、コロコロの看板を飾っていた作品のひとつが規格外の金持ちが主人公の上流階級ギャグ「おぼっちゃまくん」。一方世が不景気に陥った2000年代~10年代にコロコロの主力だった作品のひとつが金はないけどド根性とそれを工夫する知恵はある少年が主人公の「ボン・ビー太」。
おぼっちゃまくんがあの時代にヒットした理由のひとつは誰もがウハウハで元気だった時代にそれ以上にウハウハな御坊茶魔という規格外の金持ちを主人公にしたことだろう。最近おぼっちゃまくんのインドリメイクの話が出たが、同作がインドで人気の理由のひとつに好景気に沸いていた時代の日本で生まれた作風が経済成長の続く現在のインドでウケが良かったという理由がある。ビー太も歴史的な不景気が襲った時代の日本に金が無くてもド根性で乗り越える姿が(漫画的誇張があるとはいえ)マッチしたのではないか。
好景気に沸けば金持ちで不景気に苦しめばボンビー…時代が変わると主人公も変わる。ビー太はあの時代の子供たち、そして日本人にどんな困難も工夫で乗り越える日本人古来の精神を呼び覚ます存在だったかもしれない。
元々春に2号連続読み切りとして掲載されたものが同年秋に連載に昇格。その後2013年まで5年にわたって連載が続き、ゲーム化やテレビ東京系「おはコロ」でコーナーが作られるなどじーさん、ケシカス、ペン問に並ぶコロコロオリジナルギャグの看板作品となった。
ビー太のウリのひとつが「様々なド根性技」。ビー太は金が無ければ家も服もない。だが計り知れないド根性とそれでどんな困難も乗り越える知恵なら有り余るぐらい持っている。
例えばエチケットとして体を清潔にきれいにするのはもちろんマナーだが、ビー太は家が無いから当然風呂もない。じゃあどうやって体を洗うか?そこで「ド根性シャンプー」。大量に降り注ぐ雨をシャワーにして体を洗うのだ。
第1話における記念すべき初登場シーンにおいてもいきなりこの技を披露した。多くの人にとっては厄介者の雨も、ビー太にとっては重要な生活インフラである。
次に現代っ子としてゲームはやりたいが当然ビー太には買えない。そこで「エアDS」。エアギターの要領で当時の携帯ゲーム機界のトップ、DSを再現。
このほかにも鋭い嗅覚で地球の裏側(すなわちブラジル)のコーヒーのにおいを嗅ぎ分けたり、お札を追いかけて空を飛んだり、静電気で発電したり(ゲームでは攻撃技に)…などと1回、数回のみのものも含めても多数のド根性技を披露してきた。
漫画的誇張とはいえ、少ない小遣いで趣味の世界を生きる子供たちにとってはどこか共感できるところもあっただろう。「自分だってほしいものはいっぱいあるけど小遣いが足りないから全部は買えない。でもビー太は1銭も持ってないのにド根性でなんとかやってる」と勇気を与えてくれたはずだ。
そしてこの作品にもまた、魅力的なサブキャラたちがいる。ビー太と並んで準主役級に活躍した2人を紹介しよう。
ひとり目は「オバマくん」。言うまでもなく時の某大統領がモデルなわけなのだが、ビー太と違ってこちらは財閥の息子で破格のお金持ち。登場の度に毎回数百万~億単位の金を使って様々なピンチを解決していくが、コンビニでトイレ借りた際に何か買わないと気まずいからと店を丸ごと買ったり、しりもちをついた際にその治療のためだけに病院を建てたり、かまくらを作るためになぜか貴金属と宝石類を用意したり、ペットの犬のために普通に人間の住めるサイズ…というか誰もが普通に人間の住む家と錯覚する大豪邸の犬小屋を建てたり…とあげたらキリがないぐらいの金の使いよう。
個人的にはビー太がすっぽんぽんなことに抗議がくるよりも、オバマくんがアメリカ大使館にクレームが来ないか心配だったぐらいだ。こんだけ金遣い荒いキャラだから。
もうひとりは「筋ちゃん」。ビー太やオバマくんと違って普通の家庭だが、とにかくムキムキ。家族までムキムキである。故に力や筋肉を駆使したギャグを繰り広げる。
「ボンビー・金持ち・筋肉バカ」…誰ひとり個性のかぶらない3人が見事に調和することによりより暴走した笑いを生み出していたのだ。
世がバブルに沸いていた80年代後半~90年代初頭、コロコロの看板を飾っていた作品のひとつが規格外の金持ちが主人公の上流階級ギャグ「おぼっちゃまくん」。一方世が不景気に陥った2000年代~10年代にコロコロの主力だった作品のひとつが金はないけどド根性とそれを工夫する知恵はある少年が主人公の「ボン・ビー太」。
おぼっちゃまくんがあの時代にヒットした理由のひとつは誰もがウハウハで元気だった時代にそれ以上にウハウハな御坊茶魔という規格外の金持ちを主人公にしたことだろう。最近おぼっちゃまくんのインドリメイクの話が出たが、同作がインドで人気の理由のひとつに好景気に沸いていた時代の日本で生まれた作風が経済成長の続く現在のインドでウケが良かったという理由がある。ビー太も歴史的な不景気が襲った時代の日本に金が無くてもド根性で乗り越える姿が(漫画的誇張があるとはいえ)マッチしたのではないか。
好景気に沸けば金持ちで不景気に苦しめばボンビー…時代が変わると主人公も変わる。ビー太はあの時代の子供たち、そして日本人にどんな困難も工夫で乗り越える日本人古来の精神を呼び覚ます存在だったかもしれない。
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