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第3部 アニメ・特撮総合史
ケロロ軍曹に見る「少年漫画原作アニメのファミリー向け化」
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当たり前だがアニメというものは原作を知らない人間も観る。
漫画原作のアニメなら原作の掲載誌の読者層より下の層だって普通に観る。その作品をどうしても観たい人がお金払って観る劇場版やOVA、有料配信とは違って無料で観れるTVシリーズや無料配信系ならなおさらだ。
だがらある程度限られた層に向けて書く漫画と違ってアニメ、特にTVシリーズは多くの層に向けて作らなければいけない。でも多くの層に向けて作ったことで原作の人気もより幅広い層に拡大していったケースは多々ある。
例えばクレヨンしんちゃんは元々青年誌原作で子供が読むにはきわどいネタ(プロレスごっことか)も原作初期には多く、アニメ開始と同時に刊行開始された単行本も青年誌の常としてふりがながついてなかったが、アニメの人気が社会現象となるとともに子供層にも人気が拡大していき、以降原作においても振り仮名をつけるようになったり、徐々に青年誌じみたギャグがなりを潜めてファミリー向け路線にシフトしていったという例がある。
今回はそんな「アニメのヒットによって低年齢層にも人気が拡大した」例として「ケロロ軍曹」における内容のファミリー化を分析してみよう。
ケロロ軍曹の掲載誌は角川の「月刊少年エース」。同誌は1994年10月に創刊した雑誌で、古くからアニメやラノベのコミカライズを多く掲載する仰臥位でも指折りのサブカル色の強いマンガ誌だ。特に創刊第3号より連載開始した「新世紀エヴァンゲリオン」のコミカライズのヒットがその礎を築いていった。故に読者層も中高生以上のマニア層が中心となっているイメージの強い雑誌でもある。
マニア色の強い雑誌の作品ゆえ、ケロロ軍曹という作品もまた、ガンダムをはじめとするアニメやマンガのパロディを大きな柱のひとつとし、それに読者層が大好物のお色気シーンなども登場するとことん思春期のマニア層たちに媚びた(誉め言葉のつもり)作品であった。とてもキッズ層が喜んで飛びつくタイプの作品ではない。
だがケロロのアニメはそのキッズ層が主要顧客となるテレ東系土曜朝10時という時間で放送が始まることとなる。果たしてこの作品をキッズ・ファミリー層に受ける作品にできるのか?アニメ化前から原作を読んでいたファンの中にはそう思った人も少なくないだろう。
だがスタッフも試行錯誤しながらケロロを多くの層に受ける作品に仕上げていく。
例えばお色気や暴力シーンなどは基本カット、もしくはソフト化され、ちゃんと全日帯で流せるようにアレンジをした。
一方で完全にファミリー向けに振って原作ファンをないがしろにすることは一切なく、原作にあるパロネタは基本そのまま。さらにアニメオリジナルの回でもパロディネタを盛り込み、同じテレ東で土曜の朝、それもケロロの手前の時間(関東のみ。他地域では別時間に遅れネットで放送)に放送された「しゅごキャラ!」のパロディである「しゅごケロ」のように丸々1話(1パート)パロディにつぎ込んだ回も存在する。
そしてなんといってもこの作品で外せないのは「ガンプラ」。「ケロロとガンプラ」は「ドラえもんとどら焼き」のように切っても切り離せない存在である。
だがアニメを見てくれる原作を知らない低年齢層の中にはガンプラを知らない…というかガンダム自体を知らない子も多い。そもそも権利上の問題もある。だが前述の通りケロロを語るうえではガンプラは外せない。そこで低年齢層も話についてこれるようマニアック度合いを「ゆるく」したうえ(それでも熱量は変わらないが)、さらにアニメはガンダムと同じサンライズの制作、スポンサーもガンプラ発売元のバンダイがついたことにより許可を得て劇中には市販されているガンプラがパッケージに至るまでそのままのデザインで登場。きちんと原作ファンを裏切ることなく新たな層を取り込む施策もバッチリ。
そしてストーリー面でも2年目以降は1年目で当時の原作を消化しきったこともありアニメオリジナルが大半になるが、それらもファミリー向けカラーを強めた作品が多い。
例えば紅しょうがや刺身のツマなどのないがしろにされがちなわき役食材の悲哀と嘆き、そして少しでもいいから食べてもらいたいという真なる思いを描いた4年目の「戦えワキレンジャー」のような教育的な色のあるエピソードも作られ、それ以外の話でもナレーションやキャラクターが視聴者に日常マナーを呼びかけるシーンが描かれるなど親世代にとっても子供に安心して与えられる作品となった。それも説教クサくはなく、ちゃんとギャグもからめて原作ファンも失望しない作りになっている。
こういった試みが成功し、ケロロアニメは7年にわたって続き、劇場版も5本作られるなどハム太郎やポケモンと並びこの時代のテレ東を代表するアニメとなった。
原作の特徴をある程度守りながら原作読者層より下の層もしっかり取り込む。ケロロはその良いモデルケースと言えるだろう。
漫画原作のアニメなら原作の掲載誌の読者層より下の層だって普通に観る。その作品をどうしても観たい人がお金払って観る劇場版やOVA、有料配信とは違って無料で観れるTVシリーズや無料配信系ならなおさらだ。
だがらある程度限られた層に向けて書く漫画と違ってアニメ、特にTVシリーズは多くの層に向けて作らなければいけない。でも多くの層に向けて作ったことで原作の人気もより幅広い層に拡大していったケースは多々ある。
例えばクレヨンしんちゃんは元々青年誌原作で子供が読むにはきわどいネタ(プロレスごっことか)も原作初期には多く、アニメ開始と同時に刊行開始された単行本も青年誌の常としてふりがながついてなかったが、アニメの人気が社会現象となるとともに子供層にも人気が拡大していき、以降原作においても振り仮名をつけるようになったり、徐々に青年誌じみたギャグがなりを潜めてファミリー向け路線にシフトしていったという例がある。
今回はそんな「アニメのヒットによって低年齢層にも人気が拡大した」例として「ケロロ軍曹」における内容のファミリー化を分析してみよう。
ケロロ軍曹の掲載誌は角川の「月刊少年エース」。同誌は1994年10月に創刊した雑誌で、古くからアニメやラノベのコミカライズを多く掲載する仰臥位でも指折りのサブカル色の強いマンガ誌だ。特に創刊第3号より連載開始した「新世紀エヴァンゲリオン」のコミカライズのヒットがその礎を築いていった。故に読者層も中高生以上のマニア層が中心となっているイメージの強い雑誌でもある。
マニア色の強い雑誌の作品ゆえ、ケロロ軍曹という作品もまた、ガンダムをはじめとするアニメやマンガのパロディを大きな柱のひとつとし、それに読者層が大好物のお色気シーンなども登場するとことん思春期のマニア層たちに媚びた(誉め言葉のつもり)作品であった。とてもキッズ層が喜んで飛びつくタイプの作品ではない。
だがケロロのアニメはそのキッズ層が主要顧客となるテレ東系土曜朝10時という時間で放送が始まることとなる。果たしてこの作品をキッズ・ファミリー層に受ける作品にできるのか?アニメ化前から原作を読んでいたファンの中にはそう思った人も少なくないだろう。
だがスタッフも試行錯誤しながらケロロを多くの層に受ける作品に仕上げていく。
例えばお色気や暴力シーンなどは基本カット、もしくはソフト化され、ちゃんと全日帯で流せるようにアレンジをした。
一方で完全にファミリー向けに振って原作ファンをないがしろにすることは一切なく、原作にあるパロネタは基本そのまま。さらにアニメオリジナルの回でもパロディネタを盛り込み、同じテレ東で土曜の朝、それもケロロの手前の時間(関東のみ。他地域では別時間に遅れネットで放送)に放送された「しゅごキャラ!」のパロディである「しゅごケロ」のように丸々1話(1パート)パロディにつぎ込んだ回も存在する。
そしてなんといってもこの作品で外せないのは「ガンプラ」。「ケロロとガンプラ」は「ドラえもんとどら焼き」のように切っても切り離せない存在である。
だがアニメを見てくれる原作を知らない低年齢層の中にはガンプラを知らない…というかガンダム自体を知らない子も多い。そもそも権利上の問題もある。だが前述の通りケロロを語るうえではガンプラは外せない。そこで低年齢層も話についてこれるようマニアック度合いを「ゆるく」したうえ(それでも熱量は変わらないが)、さらにアニメはガンダムと同じサンライズの制作、スポンサーもガンプラ発売元のバンダイがついたことにより許可を得て劇中には市販されているガンプラがパッケージに至るまでそのままのデザインで登場。きちんと原作ファンを裏切ることなく新たな層を取り込む施策もバッチリ。
そしてストーリー面でも2年目以降は1年目で当時の原作を消化しきったこともありアニメオリジナルが大半になるが、それらもファミリー向けカラーを強めた作品が多い。
例えば紅しょうがや刺身のツマなどのないがしろにされがちなわき役食材の悲哀と嘆き、そして少しでもいいから食べてもらいたいという真なる思いを描いた4年目の「戦えワキレンジャー」のような教育的な色のあるエピソードも作られ、それ以外の話でもナレーションやキャラクターが視聴者に日常マナーを呼びかけるシーンが描かれるなど親世代にとっても子供に安心して与えられる作品となった。それも説教クサくはなく、ちゃんとギャグもからめて原作ファンも失望しない作りになっている。
こういった試みが成功し、ケロロアニメは7年にわたって続き、劇場版も5本作られるなどハム太郎やポケモンと並びこの時代のテレ東を代表するアニメとなった。
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