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第3部 アニメ・特撮総合史
ゴーカイジャーに見る「オールスターもの」の可能性
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スーパー戦隊シリーズ35周年記念作品として2011年に放送された「海賊戦隊ゴーカイジャー」。歴代戦隊総出演、1年にわたって歴代戦隊キャストが続々登場するお祭り作品。ライダーではすでにディケイドでこのようなオールスターもののTVシリーズをやっているが、戦隊のTVシリーズでは初。
今回はこの作品から「オールスターものをTVシリーズとして製作することへの可能性」を中心に紐解いていこう。
ゴーカイジャーの世界観は「前作”ゴセイジャー”までの34戦隊が地球を守り続けてきた世界」。基本的に戦隊は作品ごとに独立した世界観となっているが(デンジマンとサンバルカンの2作品同士のみ例外的に世界観がつながっている)、ゴーカイジャーでは例外的にこれまでの34作品が地続きの世界線となっている。もちろん、石ノ森章太郎氏原作のゴレンジャーとジャッカーも登場するので、OPの原作者表記は八手三郎とともに石ノ森章太郎も併記してクレジットされている。
そしてゴーカイジャーのキーアイテムとなるのが「レンジャーキー」。歴代戦隊の戦士達を模した形状で、USBメモリのようにモバイレーツに差し込むことで変身する。ゴーカイジャーのメンバーはゴーカイジャーだけでなく歴代戦隊にも変身するのが作品の楽しさ。
もちろんレンジャーキーは商品として展開。戦隊ごとのセット販売のほか、オーメダルのようにガシャポンや食玩に入浴剤、雑誌のふろくなど様々な販売経路で展開した。販売媒体ごとにそれぞれ異なる戦士をラインナップすることにより、全戦隊の商品化を実現。オーメダルで成功した多方向展開が功をなし。レンジャーキーは大成功を収め、ゴーカイジャーの玩具売り上げは130億円を記録した。
僕は多方向展開とラインナップの多さに加え、レンジャーキーの形状を各ヒーローを模した形状にしたのが成功の理由と考える。
安価な値段でたくさんのヒーローを手のひらに収められ、変身アイテムとしてだけでなく、ミニフィギュアとしても眺めて楽しめる。同じ戦隊同士で並べて感銘に浸るもよし、好きなヒーロー達を並べてオリジナル戦隊を作ってみるもよし、見て楽しい遊んでたのしい集めて楽しい。三拍子が見事にそろったアイテムだ。
ストーリー面では、変身後の姿だけでなく、一部は変身前の姿でも歴代戦隊が登場。各キャラクターの職業もオリジナルを踏襲していたり、オリジナルの後日談だったりと多彩に描かれる。これは原点の作品を見ていたファンにはうれしいところ。
さらにゴーカイジャーは各戦隊の戦士達から「大いなる力」を授かり、各戦隊にちなんだ大技などを使うことができる。すべての戦隊の力は残念ながら披露されなかったが、中にはマジレンジャーの「マジドラゴン」やライブマンの「スーパーライブロボ」のように巨大メカやロボを呼び出すものまである。
ドラマパート、通常戦闘パート、ロボ戦パート…どのパートでもレジェンド戦隊を惜しみなく使いあげ、見事に「すべての戦隊視聴経験者」が楽しめる作品へと変化してきた。
ここからが本題。劇場版やOV、配信などの単発系だけでなく「TVシリーズ」でこのようなオールスターものをやることの意義の大きさについてだ。僕は戦隊でこのようなオールスターものをTVシリーズとして製作したのは大きかったと思う。「タレントが多い」からだ。
仮面ライダーもちょうどこの年で40周年。この時にはすでにBLACKをリアタイで観てた世代も親となりはじめ、より親子2代の支持が強まってきた時期ではあるが、ライダーには複数回の中断期間がある。40年ぶっ通しで続いたわけじゃないし、この時点で40作重ねてたわけではない。制作会社は違うがウルトラもまた然り。この年45周年であったが、ライダー以上に休止期間を重ねている。現に当時も新作TVシリーズが休止中であった(この年の夏にウルトラマン列伝の放送が開始)。
当時の親世代にも幼少期にライダーやウルトラの休止期間を経験した世代も多いだろう(といっても当時の親世代が子供の頃は今よりも再放送が盛んにされていたから休止期間でもそれらで触れていた世代も多いが)。
それにライダーはディケイドで歴代平成ライダーを出したが、放送された2009年時点で平成第1作のクウガを見ていた世代はまだ中高生ぐらいだったわけだし、「平成ライダー」に限ればまだ親子2代の支持では当然なかった。ディケイドは「親子2代で楽しめる」というより「古くから見てくれているファンへのサービス」や「平成1期の集大成」との色合いが強かった。
一方戦隊は35周年と銘打っているが実際は「35作」。ゴレンジャーが1975年開始のため厳密には36周年。だが前述したようにゴーカイジャーを除いてもすでに34人の戦隊がいる。休止期間もジャッカー終了からバトルフィーバー開始までの約1年ちょっとほどのみだ。つまりライダーよりもタレントが多いわけだ。ただでさえ1組3人~5人以上いるというのに、それらが34組もいるわけだから多いってレベルの話じゃない。
親世代にとっては自分の子供時代に熱くなったあの戦隊にまた会える。子供たちにとっては自分が生まれる前の、まだ知らない戦隊に次々会える。「親子2代で楽しめるコンテンツ」として戦隊が見事に成長した証。それがゴーカイジャーと言えよう。親子でTVの前に集まってもらい、玩具を買ってもらうためにもTVシリーズでオールスターものをやったのはとても意義のあることだ。
毎週TVの前に親子で集まって、親は我が子に自分が見ていた戦隊の思い出話に花を咲かせ、子供は未知の戦隊の登場にドキドキする…これこそがゴーカイジャーの持つ「大いなる力」なのだろう。
今回はこの作品から「オールスターものをTVシリーズとして製作することへの可能性」を中心に紐解いていこう。
ゴーカイジャーの世界観は「前作”ゴセイジャー”までの34戦隊が地球を守り続けてきた世界」。基本的に戦隊は作品ごとに独立した世界観となっているが(デンジマンとサンバルカンの2作品同士のみ例外的に世界観がつながっている)、ゴーカイジャーでは例外的にこれまでの34作品が地続きの世界線となっている。もちろん、石ノ森章太郎氏原作のゴレンジャーとジャッカーも登場するので、OPの原作者表記は八手三郎とともに石ノ森章太郎も併記してクレジットされている。
そしてゴーカイジャーのキーアイテムとなるのが「レンジャーキー」。歴代戦隊の戦士達を模した形状で、USBメモリのようにモバイレーツに差し込むことで変身する。ゴーカイジャーのメンバーはゴーカイジャーだけでなく歴代戦隊にも変身するのが作品の楽しさ。
もちろんレンジャーキーは商品として展開。戦隊ごとのセット販売のほか、オーメダルのようにガシャポンや食玩に入浴剤、雑誌のふろくなど様々な販売経路で展開した。販売媒体ごとにそれぞれ異なる戦士をラインナップすることにより、全戦隊の商品化を実現。オーメダルで成功した多方向展開が功をなし。レンジャーキーは大成功を収め、ゴーカイジャーの玩具売り上げは130億円を記録した。
僕は多方向展開とラインナップの多さに加え、レンジャーキーの形状を各ヒーローを模した形状にしたのが成功の理由と考える。
安価な値段でたくさんのヒーローを手のひらに収められ、変身アイテムとしてだけでなく、ミニフィギュアとしても眺めて楽しめる。同じ戦隊同士で並べて感銘に浸るもよし、好きなヒーロー達を並べてオリジナル戦隊を作ってみるもよし、見て楽しい遊んでたのしい集めて楽しい。三拍子が見事にそろったアイテムだ。
ストーリー面では、変身後の姿だけでなく、一部は変身前の姿でも歴代戦隊が登場。各キャラクターの職業もオリジナルを踏襲していたり、オリジナルの後日談だったりと多彩に描かれる。これは原点の作品を見ていたファンにはうれしいところ。
さらにゴーカイジャーは各戦隊の戦士達から「大いなる力」を授かり、各戦隊にちなんだ大技などを使うことができる。すべての戦隊の力は残念ながら披露されなかったが、中にはマジレンジャーの「マジドラゴン」やライブマンの「スーパーライブロボ」のように巨大メカやロボを呼び出すものまである。
ドラマパート、通常戦闘パート、ロボ戦パート…どのパートでもレジェンド戦隊を惜しみなく使いあげ、見事に「すべての戦隊視聴経験者」が楽しめる作品へと変化してきた。
ここからが本題。劇場版やOV、配信などの単発系だけでなく「TVシリーズ」でこのようなオールスターものをやることの意義の大きさについてだ。僕は戦隊でこのようなオールスターものをTVシリーズとして製作したのは大きかったと思う。「タレントが多い」からだ。
仮面ライダーもちょうどこの年で40周年。この時にはすでにBLACKをリアタイで観てた世代も親となりはじめ、より親子2代の支持が強まってきた時期ではあるが、ライダーには複数回の中断期間がある。40年ぶっ通しで続いたわけじゃないし、この時点で40作重ねてたわけではない。制作会社は違うがウルトラもまた然り。この年45周年であったが、ライダー以上に休止期間を重ねている。現に当時も新作TVシリーズが休止中であった(この年の夏にウルトラマン列伝の放送が開始)。
当時の親世代にも幼少期にライダーやウルトラの休止期間を経験した世代も多いだろう(といっても当時の親世代が子供の頃は今よりも再放送が盛んにされていたから休止期間でもそれらで触れていた世代も多いが)。
それにライダーはディケイドで歴代平成ライダーを出したが、放送された2009年時点で平成第1作のクウガを見ていた世代はまだ中高生ぐらいだったわけだし、「平成ライダー」に限ればまだ親子2代の支持では当然なかった。ディケイドは「親子2代で楽しめる」というより「古くから見てくれているファンへのサービス」や「平成1期の集大成」との色合いが強かった。
一方戦隊は35周年と銘打っているが実際は「35作」。ゴレンジャーが1975年開始のため厳密には36周年。だが前述したようにゴーカイジャーを除いてもすでに34人の戦隊がいる。休止期間もジャッカー終了からバトルフィーバー開始までの約1年ちょっとほどのみだ。つまりライダーよりもタレントが多いわけだ。ただでさえ1組3人~5人以上いるというのに、それらが34組もいるわけだから多いってレベルの話じゃない。
親世代にとっては自分の子供時代に熱くなったあの戦隊にまた会える。子供たちにとっては自分が生まれる前の、まだ知らない戦隊に次々会える。「親子2代で楽しめるコンテンツ」として戦隊が見事に成長した証。それがゴーカイジャーと言えよう。親子でTVの前に集まってもらい、玩具を買ってもらうためにもTVシリーズでオールスターものをやったのはとても意義のあることだ。
毎週TVの前に親子で集まって、親は我が子に自分が見ていた戦隊の思い出話に花を咲かせ、子供は未知の戦隊の登場にドキドキする…これこそがゴーカイジャーの持つ「大いなる力」なのだろう。
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