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第1部 アーケードカードゲーム史

アイドルと子犬~ラブ&ベリーを脅かした女児向けアーケードカード新勢力~

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2006年になると、それまでラブ&ベリーの独壇場であった女児向けアーケードカードゲーム業界に競合他社が続々参戦し、ひとり勝ち状態であったラブ&ベリーの独走に徐々に陰りが見え始め、やがてそれらの新勢力に飲み込まれ、2008年の稼働終了に追い込まれていくことになる。
今回はラブ&ベリーを脅かす存在となった女児向けアーケードカードゲームの中から代表的な2作品を分析してみよう。

まずは2006年稼働のアトラスの「きらりん☆レボリューションハッピー★アイドルライフ」。
当時アニメ化されていたちゃお連載の同名のマンガが原作。おそらく女児向けアーケードカードゲームにおいて初の原作付き作品であろう。当時のきらレボ人気は僕の周りの女子でもすさまじく、グッズを持ってる女子は何人いたことか。小学生男子の人気NO1がポケモン(ポケモンは一応男女関係なく人気だけどさ)なら、女子はきらりかラブ&ベリーかシナモンか…といったほどの人気であった。
こちらもラブ&ベリー同様の「オシャレ×リズムゲーム」であるが、決してキャラゲーあるあるの「人気作品の焼き直し」ではない。この作品ではカードを傾けるとコーデの色が変わるというシステムを採用。ただのスキャンではなく、カードを動かすことによって変化をもたらすというアーケードカード界の新たな可能性を示した。
だが稼働当初はまだまだラブ&ベリー1強時代だったのでその後塵をおす状況。女王の背中は遠いかに思われたが、きらレボ自体の人気がより高まっていくと稼働から1年後には絶対女王かと思われたラブ&ベリーを一気に追い抜かして女王の座を手に入れた。だがアニメが終わると当然ゲームの人気も落ち着き、アニメ終了の数カ月後の2009年夏に幕を閉じた。
人気のアニメはアーケードカード化。という後に定番となる戦略はきらレボと前回取り上げたドラゴンボールの成功によって作られたと僕は思う。このゲームの栄枯は原作となるアニメの人気が盛り上がると関連商品も売れる。そしてアニメが終わればその他のメディアミックスの盛り上がりも落ち着く。というテンプレ的な構図を絵に描いたような状況であったと言えよう。

次に分析するのはきらレボと同年に稼働のカプコンとタカラトミー共同開発の「ワンタメミュージックチャンネル」
カプコンのキッズ向け戦略と言えばアニメもヒットしたロックマンエグゼがすでに成功をおさめていた。ゲームだけでなくガイファードやリュウケンドーなど特撮にもかかわってきたメーカーだからキッズ向けコンテンツの実績は証明済み。一方これらはすべて男児向けコンテンツ。女児向けの実力は未知数だ。
そこで当時同社がスポンサーとなり関連商品がヒットしていたきらレボや、ロングセラーのリカちゃん人形など女児向けコンテンツにも強いタカラトミーとタッグを組むこととなったのだろう。タカラトミーと言えばこの年の春にタカラとトミーの合併により誕生したばかり。新会社の門出にふさわしいチャレンジと言えよう。
このゲームは子犬がアイドルとなるリズムゲーム。登場する犬たちは2足歩行のいわゆる獣人なのだが、顔はリアル調のグラフィック。犬好きにはたまらないだろう。ファンタジーとリアルグラフィックの融合という子供向け作品には珍しい組み合わせ…と思ったがムシキングや恐竜キングも実在の生物が派手な技かますから実質同じようなもんか。
そして玩具メーカーが関わっていることからタカラトミー側でもゲームと連動する玩具を発売。アーケードカードゲームと連動する玩具はおそらくこれが業界初。タカラトミー系列では後にポケモンのアーケードシリーズやプリティーシリーズでも連動玩具を発売。この時のノウハウが働いたのは間違いない。
思えばタカラトミーは旧タカラ・トミーの時代から未知のことに挑戦するのがお得意のメーカーである。ベイブレードのように伝統玩具を現代流にアレンジしたり、チョロQの実車を作ったり(これが合併を招いたとか言われてるけど)…子犬のアイドルと連動玩具という未知の組み合わせは、タカラトミーだからこそといったところだろう(最初に提案したのはどっちサイドかはわからないが)。
周りにはワンタメをプレイしてる女子はあまりいなかった記憶があるが。僕の中ではリアルな犬が2足歩行という点で異彩を放つ作品に感じていた。実際リアルなグラフィックを使用しているから犬好きユーザーも集まって、当時のアーケードカードゲームの中では比較的高めの年齢層にも支持されていたと聞く。数あるアーケードカードゲームの中で異彩を放つ存在だったのは間違いない。
個人的にこのワンタメのようにもっと冒険したアーケードカードゲームが令和に出てきてほしいと思う。

さて、次回はガラパゴス化していくアーケードカード業界、カード以外のものを使用するゲームを分析することにしよう。
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