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第1部 アーケードカードゲーム史
ラブ&ベリーが開拓した「女児向けアーケードカードゲーム」市場
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ムシキングが稼動して1年後の2004年、同じセガよりアーケードカードゲーム界のもうひとつのパイオニア的存在が産声を上げた。「オシャレ魔女ラブ&ベリー」である。
それまで「女児向けアーケードカードゲーム」というか「女児向けカードゲーム」というものがなかった市場に「オシャレ」ど「ダンス」という女児が大好きな要素を取り入れ、こちらもムシキング同様社会現象となり、女児向けアーケードカードゲームのパイオニアとなった。
全盛期はムシキング同様、ショッピングセンターやファミリー向けのゲーセンにはおいてない店はないと言われるほどの普及率となり、当時は緑色のムシキングの筐体の隣にピンクのラブ&ベリーの筐体が置かれるという組み合わせはゲーセンのおなじみの光景となっていた。当時を知るものならこの文章を読んであの頃の光景がよみがえった方も多いのではないか。
アーケードゲームの歴史を振り返ると「男性色の強いゲーセンに女性を呼び込む」という考えはラブ&ベリー以前から存在していた。
例えば1980年に稼働開始した「パックマン」はインベーダーブーム以降、戦争ものや戦闘系のゲームが増えた中で「女性が入りにくくなる」と危機感を覚えたデザイナーの岩谷徹氏が女性やカップル層をターゲットに開発したものであり、今やゲーセンの定番であるプリクラ(プリントシール機)だって、ラブ&ベリー同様男性色が圧倒的強いゲーセンに女性を呼び込む役割を果たした。そうして考えるとラブ&ベリーもこの系譜に入ると言えるだろう。
ラブ&ベリーのヒットにより「カードゲームは男児のもの」というイメージが払拭され、「女児向けアーケードカードゲーム」という新ジャンルの開拓に成功したのだ。
さて、ここからが本題だ。なぜラブ&ベリーが社会現象となり、女児向けアーケードカードゲームのパイオニアとなることができたのか?いくつか理由を自分なりに分析してみた。
僕が思うひとつ目の要因は「敵がいなかった」こと。
…これは当時他に女児向けアーケードカードゲームが無かったから当然のことだが、誰もやっていないことをやるというのは当然受けるかどうかは未知数なわけだからリスクも大きい。だが「誰もやっていない」ということは同時に「敵がいない」ということでもある。出てきたときは女児向けアーケードカードゲームの戦場にはラブ&ベリーただひとりなわけだから敵のいぬ間に一気にユーザーを拡大することができたのだ。
その後、2006年ごろを境に各社から競合作品が登場したのと同時に徐々に低迷期へと陥っていったことからもそれが見て取れるだろう。
2つ目の要因は「オシャレ×ダンスという女児受けする黄金タッグ」。
これはムシキングが男児が誰もが一度は興味を持つムシを題材にとったのと同じく、ターゲット層である女児ならだれもが興味を持つ「オシャレ」に同じく子供人気の高い「ダンス」という要素を取り入れたこと。男児にとってのムシは、女児にとってのオシャレなのだ。
ゲーム内容をムシキングのような戦闘ものではなくリズムゲームにしたのも正解だった(でも個人的に女児向けアーケードカードゲームでも戦闘もの出てもいいと思うんだけれどね)。これが受けたことによって以降アイカツにしろプリティーシリーズにしろ、女児向けアーケードカードゲームはリズムゲームというテンプレができあがったのだ。
ラブ&ベリーの成功は女児向けゲームの教科書といっても過言ではないだろう。
3つ目の要因は「親に受け入れらる内容だった」こと。
当時は「ゲームばっかりするんじゃない」と子供たちが親からしつこく言われる風潮が今以上に強い時代。当時の子供たちの親世代と言えば、小学生~若者時代にインベーダーブームやその後のファミコンの登場を経験した世代。
だが僕の両親がそうであるように、インベーダーが登場したのが中高生時代で、小学生時代はゲームのない時代を生きていた世代も親世代には多かったことだろう。そういった層ほどゲームへの抵抗は強い(あくまでも僕の見解だが)。
しかしラブ&ベリーはゲームの得点の評価にはカードの組み合わせも影響する。
服のトータルコーディネートはもちろんのこと、コーデがステージにマッチしているか、すなわち「TPOにあった着こなしができているか」まで評価される。
「TPOにあわせたファッション」というのもターゲット層には難しかったかもしれないが、逆に当時の子供たちはこれで「最低限の着こなし」や「TPOにあわせた服装」を学んだ事だろう。
そう、こういった「ファッションの勉強」的な要素が入っていることから親の目線から見ると子供たちがゲームで楽しみながらファッションを自然に学べるラブ&ベリーは大歓迎だったことだろう。
「子供たちに受け入れられるコンテンツ」は「親にも受け入れられるコンテンツ」であるべきだと僕は思う。ラブ&ベリーはまさにそれだったのだ。
…さて、ムシキングやラブ&ベリーの成功以降は各社からキッズアーケードカードゲームが登場し「アーケードカードゲーム戦国時代」が到来する。
次回はその時代に登場した作品から、あの「古代王者」を分析してみることにしよう。
それまで「女児向けアーケードカードゲーム」というか「女児向けカードゲーム」というものがなかった市場に「オシャレ」ど「ダンス」という女児が大好きな要素を取り入れ、こちらもムシキング同様社会現象となり、女児向けアーケードカードゲームのパイオニアとなった。
全盛期はムシキング同様、ショッピングセンターやファミリー向けのゲーセンにはおいてない店はないと言われるほどの普及率となり、当時は緑色のムシキングの筐体の隣にピンクのラブ&ベリーの筐体が置かれるという組み合わせはゲーセンのおなじみの光景となっていた。当時を知るものならこの文章を読んであの頃の光景がよみがえった方も多いのではないか。
アーケードゲームの歴史を振り返ると「男性色の強いゲーセンに女性を呼び込む」という考えはラブ&ベリー以前から存在していた。
例えば1980年に稼働開始した「パックマン」はインベーダーブーム以降、戦争ものや戦闘系のゲームが増えた中で「女性が入りにくくなる」と危機感を覚えたデザイナーの岩谷徹氏が女性やカップル層をターゲットに開発したものであり、今やゲーセンの定番であるプリクラ(プリントシール機)だって、ラブ&ベリー同様男性色が圧倒的強いゲーセンに女性を呼び込む役割を果たした。そうして考えるとラブ&ベリーもこの系譜に入ると言えるだろう。
ラブ&ベリーのヒットにより「カードゲームは男児のもの」というイメージが払拭され、「女児向けアーケードカードゲーム」という新ジャンルの開拓に成功したのだ。
さて、ここからが本題だ。なぜラブ&ベリーが社会現象となり、女児向けアーケードカードゲームのパイオニアとなることができたのか?いくつか理由を自分なりに分析してみた。
僕が思うひとつ目の要因は「敵がいなかった」こと。
…これは当時他に女児向けアーケードカードゲームが無かったから当然のことだが、誰もやっていないことをやるというのは当然受けるかどうかは未知数なわけだからリスクも大きい。だが「誰もやっていない」ということは同時に「敵がいない」ということでもある。出てきたときは女児向けアーケードカードゲームの戦場にはラブ&ベリーただひとりなわけだから敵のいぬ間に一気にユーザーを拡大することができたのだ。
その後、2006年ごろを境に各社から競合作品が登場したのと同時に徐々に低迷期へと陥っていったことからもそれが見て取れるだろう。
2つ目の要因は「オシャレ×ダンスという女児受けする黄金タッグ」。
これはムシキングが男児が誰もが一度は興味を持つムシを題材にとったのと同じく、ターゲット層である女児ならだれもが興味を持つ「オシャレ」に同じく子供人気の高い「ダンス」という要素を取り入れたこと。男児にとってのムシは、女児にとってのオシャレなのだ。
ゲーム内容をムシキングのような戦闘ものではなくリズムゲームにしたのも正解だった(でも個人的に女児向けアーケードカードゲームでも戦闘もの出てもいいと思うんだけれどね)。これが受けたことによって以降アイカツにしろプリティーシリーズにしろ、女児向けアーケードカードゲームはリズムゲームというテンプレができあがったのだ。
ラブ&ベリーの成功は女児向けゲームの教科書といっても過言ではないだろう。
3つ目の要因は「親に受け入れらる内容だった」こと。
当時は「ゲームばっかりするんじゃない」と子供たちが親からしつこく言われる風潮が今以上に強い時代。当時の子供たちの親世代と言えば、小学生~若者時代にインベーダーブームやその後のファミコンの登場を経験した世代。
だが僕の両親がそうであるように、インベーダーが登場したのが中高生時代で、小学生時代はゲームのない時代を生きていた世代も親世代には多かったことだろう。そういった層ほどゲームへの抵抗は強い(あくまでも僕の見解だが)。
しかしラブ&ベリーはゲームの得点の評価にはカードの組み合わせも影響する。
服のトータルコーディネートはもちろんのこと、コーデがステージにマッチしているか、すなわち「TPOにあった着こなしができているか」まで評価される。
「TPOにあわせたファッション」というのもターゲット層には難しかったかもしれないが、逆に当時の子供たちはこれで「最低限の着こなし」や「TPOにあわせた服装」を学んだ事だろう。
そう、こういった「ファッションの勉強」的な要素が入っていることから親の目線から見ると子供たちがゲームで楽しみながらファッションを自然に学べるラブ&ベリーは大歓迎だったことだろう。
「子供たちに受け入れられるコンテンツ」は「親にも受け入れられるコンテンツ」であるべきだと僕は思う。ラブ&ベリーはまさにそれだったのだ。
…さて、ムシキングやラブ&ベリーの成功以降は各社からキッズアーケードカードゲームが登場し「アーケードカードゲーム戦国時代」が到来する。
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