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おこぼれ話344 いちねんせいっていいな 1+1ばっかりやるんだよな。

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小4~小5あたりになると勉強に行き詰った時に誰かしらがこんなことを口にするのがお約束であった。
「あ~あ、1年生はいいな~1+1とかばっかで…」
このフレーズが出ると僕含めたクラスの数人が「わかるわかる」と口々に言っていた。

…ごもっともだ。僕も勉強が難しくて行き詰まると1+1とか単純な計算や、五十音と簡単な漢字ばっかりやってた1年生の頃が懐かしく感じたものだ。
難しい問題に絶望を覚えたら、簡単な問題ばかりだった幼き日を思い出し、心の穴を埋める。自分のルーティンでもあった。
だが過去を振り返った後はすぐさま現実に戻り、また難しい問題ばかりが立ちはだかるという現状に絶望する。

…でも同じように簡単な問題ばかりのあの頃を懐かしむ同志が少なからずいるとわかるだけで少し心が晴れるのだ。
やはり一人じゃないというのはどんな時でも心強い。「1年生は1+1ばっかでいいな」ってよくよく考えるとくだらん事言ってるなっておもうけどこうやって懐かしむことで僕らは「難しい勉強」という「逃げれれないことに対する逃げ道」を作っていたのだろう。
人から見たらくだらない現実逃避なのかもしれないが、僕らにとってはほんの一瞬だけどこの思いを共有することで心のよりどころとなっていたのだ。
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