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おこぼれ話250 追いかけっこ・ザ・登校時間

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僕は小学校1・2年~5年生あたりにかけて登校中、学校が見えてきたら猛ダッシュで学校の玄関まで向かうクセがあった。そして目の前をほかの生徒が歩いてたら彼らを追い抜かしたい衝動に襲われるクセもあった。
なんとか一番で学校内に入りたいという一心だ。もちろん先に校舎内に入っている生徒はすでに何十人もいるわけだからではないのだが、自分の視界に入っている自分を含めた人物の中で一番という意味だ。
朝の風を感じながらのほほんと歩いているほかの生徒たちをダッシュで追い抜かして校舎に入るのが気持ちよかったのだ。

しかしそんな僕にもライバルが現れる。5年生の時である。
その日、僕の前を歩いてたのは6年生男子と彼の友達と兄弟(僕より年下)の三人組。差は数メートル。
いつものようにわが目の前を歩くものは追い抜かしてやろうとその日もダッシュで追い抜かそうとした。
しかし僕が走り始めた数秒後、彼らは僕に気づき、そのままダッシュで走り始めた!
僕も必死で追い抜こうとするが、当然6年生と5年生の差は歴然(僕が足遅いってのもあるが)。結局彼らを追い抜かすことはできなかった。

その翌日以降も戦いは続いた。
毎回、僕の後ろを歩く3人を追い抜かそうとしたら逃げられ、追い抜かそうとしたら逃げられ…
それから1週間後、僕は真っ向勝負で勝てないなら頭脳戦で戦おうと作戦を考えた。
その作戦とは、相手がこちらに気づいてない間にダッシュし、気づかれそうになったら走るのをやめて何事もなかったかのように普通に歩き、また相手の注目がそれたら再び走り始め…といった具合にじわじわ相手に近づいていき、最終的にはスキを見て一気にダッシュして追い抜かす。その名も「だるまさんが転んだ作戦」だ。
しかしこの作戦も見事に破られる。1回目のダッシュを始めて数秒で相手に振り向かれて気づかれてダッシュされてしまい、その後もなんとかじわじわ近づこうとするもどれも気づかれてこの日は失敗に終わった。
ならば早めに走るのを切り上げて小刻みに走りと歩きを混ぜて近づく作戦ならどうだと再度練り直した。
しかしこちらも最初は順調であったが、半分ぐらい近づいたところで相手に気づかれ、これまた失敗。
結局その6年生が卒業するまで僕は彼を追い抜かすことはかなわなかった。

だが、短い期間だったが思わぬライバルが現れたのは意外に楽しかったのだ。
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