リョーマ伝～小学生編～

おこぼれ話205 傷口はマグマの世界

小3の頃、進研ゼミのふろくとしてついてきた「ミクロ観察スコープ」を愛用していた。
最大20倍まで拡大してミクロの世界を見ることができる手のひらサイズのスコープだ。

僕はこれを使って届いた日から毎日のようにミクロの世界をのぞきまくった。雑誌のカラーページを拡大して点々で印刷が成り立ってるのを知り、服を拡大して繊維の細かな編み込みを見て見えないところで働く細かな技術力のすごさに圧倒され…それはどんな授業よりも楽しい理科の勉強であった。

だが僕が一番拡大して面白く感じたのは傷口である。
自転車で転倒してすりむいて出血したとき、僕はその傷口も拡大して観察した。
出血の後で赤くなった傷口を拡大したさまはまるでマグマが煮えたぎる火山の火口、もしくは地獄のようであった。恐ろしくも美しい深紅の世界に僕は魅了された。

僕の父も拡大してみてみると「ホントにマグマの世界だ！」と驚いていた光景を思い出す。
傷口という負の遺産がスコープを通すことでここまでも神秘的なものになるとは奥が深い。