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おこぼれ話166 2/2 2:22:22~その時を共に

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5年生も終わりに近づいた2月22日。その日の朝の会でシュウジくんが先生に突然こんな提案をする。
「今日は2月22日ですよね?先生!2月22日2時22分22秒の時を一緒に過ごしましょう!」
…唐突すぎかつ、わずか1秒の瞬間を味わうという今考えればかなり無茶な提案であるが、担任のM上先生は何のためらいもなく快く「OK」をしてくれた。自分もこの瞬間をみんなと楽しもうと思った。ただゾロ目ってだけでなんてことない日も、みんなで騒げば特別な日になるような気がしたから。
その瞬間が来るのを僕は今か今かと待ちながら勉強して遊んで飯食ってといつも通り過ごした。
いつもと変わらない日が特別な日になる瞬間がこのあとやってくるのを待ちながら…

そして時は流れ2時17分ごろ、例の時間まであと5分ほど…
その時間は自習の時間だったが、先生とシュウジくんたち男子数人は教卓の上に先生の時計機能つきのストップウォッチを用意して、今か今かと待っていた。
その間に実はもよおしていた僕はトイレへ…そんなに長引かないであろうと思って特別な瞬間を前に出すものは出しておこうとの考えだ。
しかしこれが以外に長引いてしまったのだ。
まだ特別な瞬間は過ぎてないよな…と思いながら教室へ戻るとすでにシュウジくんたちは撤収して席に戻り、先生もストップウォッチをしまっていた。
「先生…2時22分22秒の瞬間って…」
「もう過ぎたよ…君がトイレに行ってる間に…」
…結局僕は2月22日2時22分22秒の特別な瞬間をただ一人トイレで過ごす結果となってしまった。
あの特別な瞬間に先生とシュウジくんたちはどれぐらい盛り上がっていたかは今となっては知るよしもない。
結局、僕は便意に負けて特別な瞬間に盛り上がるという特権を失ってしまったわけだ。

それから数日後、学級だよりに先生がこの時撮った「2時22分22秒」をさすストップウォッチの写真が掲載され「子供たちと2月22日2時22分22秒の瞬間を楽しみました」との一文が載ったが、その最後に「平成22年だとなおよかったな…(この年は平成23年)」とのオチが。
なんとなく「あと一年早くM上先生が僕らの担任になってくれてたら…」なんて考えてしまった2月の終わりであった。
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