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おこぼれ話66 牛乳パックは己の手で切り開け

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2年生まで、給食の牛乳パックは上の部分だけを開いた状態で回収していた。
だが3年生からは完璧に開かなければいけないことになった。
めんどくさいとは思ったが「これが中学年なんだ。成長すれば複雑なこともやらなければならないんだ」と自分の中では思っていた。

最初の頃はみんなハサミを使って開いていた。もちろん僕も例外ではなかった。
だが僕は周りよりも不器用な故、間違った開き方で開いてしまい、他の人のと重ねておけないという状態になってしまったほどであった。
先生やクラスメイトに教えてもらい、ようやくちゃんとした方法で開けるようになったがそこまで実に1ヵ月以上を要した。

3年生が始まって2カ月ほどたった6月半ばごろ、今度は先生から「ハサミではなく手で開けるようにしよう」との指示が。
だがこの時点では「すぐ手で開け」という強制的な意味ではなく「みんな徐々に手で開けるようになろう」という意味であった。故にすぐさま手で開いてた人もいたが、うまく開けなくてハサミを引き続き使ってた人もまだまだいて、ほぼ半々ぐらいの割合であった。不器用な僕はもちろん後者であった。
だが指示があってから1~2週間たったころにはクラスの8割方が手で開けるようになっていた。
だがこの時点でも僕はハサミであった。手で開けるのを何度か試みたがてこずったのだ。自分以外にもハサミで開けてる人はまだいるわけだから恥ずかしいことではない。手で開けるのはもうちょっと後でいいやと思っていた。
だが周りのクラスメイトが僕が人一倍手で開けるのに苦戦していた状況を見かねてか、手で開けるときの開け方を教えてくれた。すぐに身についたわけではなくキレイにできるようになるまでは時間がかかったが、人より遅い歩みながらもなんとかやり遂げることができるようになった。

だが僕が手で開けるのをマスターしてから1~2週間たった後もまだハサミで開いてる人がいて、ある日その人がクラスメイトから「ハサミなんて時代遅れだ」とバカにされて教室が騒然となる事件があった。
手で開けれるまで時間がかかった身としては「聞き捨てならないセリフだな」と許せなかった。
人はだれしも得意不得意があって当たり前。だからと言ってそれをバカにするのは言語道断だ。
自分が言われる立場だとおもったら…と考えた。
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