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おこぼれ話52 目に見えぬもの、信じるべからず!?

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小学生の頃僕が夢中になって集めてたもののひとつ、それが「ペンギンの問題面白大図鑑プレート」である。
当時コロコロコミックに連載されアニメ化もされた「ペンギンの問題」のホビーで、カードより厚めの「プレート」に様々な姿に変身した同作の主人公の木下ベッカムをはじめとするキャラクターが描かれている。見た目もタイトル通りのギャグ系のものからヒーロー然としたカッコイイ系までさまざまで子供たちのコレクション心をくすぐる。さらにバックグラウンドで描かれるファンタジー・SF調の壮大なストーリーも魅力だ。
当時すでに主流であった対戦要素を排除したという部分もあるが(第2部となる未来編からは別売りのスキャナーという玩具と連動する)、自分はカードゲームはほとんどやらなかったから問題に思わなかったし、それもペン問らしいギャグ性ととらえていた。というか自分は集めるの好きだし。
このホビーは僕だけでなくクラスのたくさんの男子たちが集めており、人気となっていた。すでにカード=バトルと認識されていた時代に集めるだけのカードホビーがかえって新鮮に感じられたのだろう。
前置きは長くなってしまったが、今回はこのホビーにまつわるエピソードだ。

それは小4の頃のある日、父が仕事帰りにコンビニでプレートを買ってきてくれた時のこと。
父曰く「お前がいつも言ってる通りに後ろにあったパックを買った」のこと。
当時僕の周りでは「後ろのパックのほうがレアが出やすい」との都市伝説が出回っており、実際それでレアを引き当てた子がいた。僕もそれを鵜呑みにしてプレートを買うときは実践してたのだ。実際後ろから引いたほうがレアが出やすいような気がした。もちろんでないときもあるがやめるとレアが当たらなくなりそうな気がしてやめられなかった。
父は自分のふだんの行動・会話からそのことを知っており、実践してくれたのだ。

父への感謝を胸に期待を膨らませながら僕はパックを開封。すると出てきたのは…
「ダ、ダイヤモンドプレートだ!まだコロコロにも載ってないヤツ!オレ初めて当たったよ!」
ダイヤモンドプレートは基本のレア度の中てもっとも最上位に位置する。今回僕が引き当てたのは第5弾・続魔界編の「ギガドラゴンベッカム」だ。
ダイヤモンドプレートは基本発売した翌月のコロコロで情報が解禁され、それまでは名前やイラストが伏せられている。つまりプレートの最新弾発売から次のコロコロ発売日までの間にそれを手にすることができたものには周りの誰よりも早くダイヤモンドプレートのキャラを拝むことができるという特権がついてくるのだ。これだけでも十分嬉しいが、周りの友達には1個下の「ゴールドプレート」をあてた子はいてもダイヤモンドプレートをあてた子はいない。クラスで一番乗りでゲットできたというのがさらにうれしさを増す。

その翌日、もちろん僕は教室に入って来るや否やさっそく開口一番大声で叫んだ。
「ダイヤモンドプレートゲットしたぞ~!ギガドラゴンベッカムってヤツ!」
そして僕は同じくプレートを集めているトモくんやソラくんなどといった友達にギガドラゴンベッカムの特徴などを教えた。もちろんみんな驚いた表情で、まるで神を拝むかのような目で僕に目線を向けてくれていた。ただ一人、セイタくんをのぞいて…

「リョーマ、オレは信じないからな。お前がダイヤモンドプレートをゲットしたことを…」

彼だけは「僕がダイヤモンドプレートを持っているのを自分の目で見ていない」という理由で僕がダイヤモンドプレートを手に入れた事実を受け入れようとしなかった。
「目に見えてない情報を鵜呑みにしない」…これは決して間違ってない、というか社会に出てからはとても重要なことではあるが、彼は自分よりも先にダイヤモンドプレートを僕にゲットされた悔しさで言い返せない「自分の目で確かめてない情報を安易に信じない」という正論を盾に言い訳していたところもあるのだろう。ホントのことは彼にしかわからないが。
それから数日後、セイタくんが僕の家に遊びに来て、僕のプレートのファイルからギガドラゴンを確認し始めた。
ファイルの表紙をめくった彼の第一声はこうだ。
「どこにギガドラゴンあるんだよ…」
やはり認めたくないものだな的なのがあったのだろう。僕はこの発言を聞いて「だれも1ページ目にあるなんていってね~よ!つべこべ言わずにページめくってみろってんだ!なんて心の中で叫んだものだ。
基本僕はプレートを入手順にファイリングしている。ギガドラゴンをしまっていたのは5~6ページあたりだ。
そしてとうとう彼はギガドラゴンのあるページにたどり着く。ページの中段あたりに燦然とかがやくギガドラゴンを見た瞬間彼はこういった。
「あ、あった…」
確認した直後、彼はバタンとファイルを無言で閉じた。信じたくない事実も目の当たりにしてしまったことの何とも言えない気持ちが込み上げてきたというのが伝わってくる。もちろん真相は彼にしかわからないが。

こうしてギガドラゴンをめぐるプチ騒動は幕を閉じた。
しかしそれから数週間後、僕はもっとすごいプレートを手にしていたことを知る!
以下次回!
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