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おこぼれ話16 ヒゲ仙人活劇絵巻

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2・4年の時の担任であったM田先生は算数の授業中、例題を出題するときに文章中に謎のキャラクターを登場させ、黒板にそのキャラクターのイラスト(裏にマグネットがついてる)を貼って物語形式で説明していた。
そのキャラクターの名は「ヒゲ仙人」。その名の通り髭をたくわえ丸い目にハゲ頭で雲に乗っているといういかにもマンガチックなデフォルトのきいた絵柄のステレオタイプな仙人キャラである。
そのユーモラスな見た目で一気にクラスの人気者になった。

ヒゲ仙人の物語の中には時たまクラスのメンバーの名前が入ることがある。
「リョーマくんは薬草を取りにヒゲ仙人のもとを訪ねました」的な感じで。
自分の名前が例題に出てくることは恥ずかしさを感じる子もいるかもしれないが、自分の名前が入ることによって授業への関心と没入感、学習意欲が生まれるので良いことだと思う。ぼくも自分の名前が出てきたときはうれしかったものだ。
上記の例文のように、ヒゲ仙人の物語はクラスメンバーの誰か(複数人の場合あり)が何らかのアイテムを手に入れるために彼のもとを訪ねるというのが基本の流れだ。
特に多い頻度で登場するアイテムが「ゲジゲジクッキー」である。
実際のイラストは描かれてないのでいかなるものかは不明だが、名前からしてマズイことには間違いない。みんなその名が出るたびに「まずそ~」とか口々にいっていたものだ。
これも生徒を楽しませ、その流れで授業への集中力と学習意欲を高めようとするM田先生の狙いがあるのだろう。

ヒゲ仙人には派生キャラが2人いた。
バージョン2ともいえるもう一人のヒゲ仙人(以下、バージョン2と表記)は元祖ヒゲ仙人に比べてシャープな風貌でつり目という少しいかついデザインであった。
そのため、最初に生徒の前に姿を現したときは驚きの声とともに「怖い」との意見もちらほら聞かれた。
M田先生も彼を演じるときはいかつい感じの声で演じた。
もう一人はバージョン2にもよく似ているが、筆を持ってキメ顔の「習字仙人」。
ほかの2人が全身図に対してこちらは顔と上半身しか映っていない。
3人の仙人がそろうことはめったにない。初めて3人が勢ぞろいしたときには驚きの声も上がったぐらいだ。

しかし僕が気になっていたのはこのヒゲ仙人の出自である。
M田先生は絵がうまくない。だが仙人たちはプロのイラストレーターが描いたようなクオリティだ。
元々は何かのキャラだったに違いない。
そんな中、4年生のある日の算数の授業中1人のクラスメイトが先生にヒゲ仙人は元々何のキャラだったかを質問してきた。
そしてM田先生の口から「元々は10年ほど前(2009年の話なので1999年ごろ)NHKの算数の学校放送番組のキャラだった」との衝撃発言が!
ヒゲ仙人の出自は天下のNHK!まさかの事実!
さらに話を進めると、授業で使われているヒゲ仙人、および派生キャラはその番組の放送当時に先生向けに配布された学校放送番組の解説ブックレットに書かれたイラストからコピーしたものだとか。
ただ、その番組のタイトルは先生も残念ながら忘れてしまった模様。番組名を忘れているのであれば、ヒゲ仙人という名前も正式名称かはわからない。先生がつけたかもしれないし。
生まれてくる時代がちがければ、僕もTV画面で動くヒゲ仙人たちと一緒に勉強していたのかもしれない
一度でいいからみてみたいなあ、動くヒゲ仙人。
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