リョーマ伝～小学生編～

記録ノ136 カレンダーハック

卒業が近づくにつれて、僕たちは卒業制作に取り掛かった。
僕たちがこの学校で学んだ証、そして6年間過ごした学び舎への感謝として学校に送るプレゼントと言える。

卒業制作は複数あり、好きなものを選んで行う。
僕が選んだのはカレンダー作り。パソコンを使い、事前に用意されたカレンダーのテンプレートに画像を張り付けてカレンダーを作る。このカレンダーは新年度から在校生の教室で使われることとなる。
制作の監督は1組の先生が行う。製作時間中はパソコン室で印刷の管理や各種説明を行っている。

さっそく僕はいろいろと画像を張り付けていく。
画像はパソコンの制作ソフトに入っているものを使ってもいいし、ネットで見つけたものを張り付けてもいい。
だが僕はすべて前者で済ませた。ネットの画像の保存の仕方がいまいちわからなかったからである。
選んだ画像は4月は桜、5月はこいのぼり…などと無難で安易な季節ネタで統一。
しかし7月だったか8月だったかはイギリス国旗（パソコン内には国旗の画像もいっぱい入っていた）にした。この年がロンドン五輪イヤーであり、その開催時期に合わせたこの年しかできないセレクトだ。
様子を見学に来た別の先生からは「なぜこの月にイギリス国旗？」と聞かれたが「オリンピックがあるから」と返答したら「あ～！なるほど！」とうなずいた。
この他、一緒に作業していたソラくんはネットで見つけた某ファストフードチェーンのマスコットがヤバいこと言ってる画像を4月のページに使おうとしたが、先生に「季節に合ってない」ということで却下された。

順調に思われた作業期間。しかしある日の制作中、僕のパソコンに突然「コンピューター操作中」の文字が表示された。
他の人のパソコンを見せてもらったがそんな表示はない。先生に聞こうにもその時席を外していた。
「これはパソコンがハッキングされたに違いない！早く手を打たないと学校中のパソコンが大変なことになる！」
僕は慌てて1組の先生を呼びにパソコン室を飛び出した（他のみんなには声がけしてる）。
そのとき階段でちょうどM上先生に出くわしたので先生に見てもらおうと呼び止めて「操作中とか変な表示が出てるのでパソコン室に来てください！」とお願いしたが「2組の教室の作業がひと段落したら来ます」と去っていこうとしてしまう。
しかしそれではハッキングが進行してしまう。と思った僕は「ハッキングされてるかもしれないんですよ！このままでは学校のパソコンが大変なことになるかもしれないんですよ！」と必死に呼び止めた。しかしM上先生は「自分のこと考えすぎです！」と一蹴されてしまった。
学校のパソコンなんかが簡単にハッキングされるはずがない。と思ったのだろうか。ドジな僕のことだから変な操作を誤ってしただけだと思ったのだろうか。だが僕としては本当にハッキングされていると思っていたのだ。

その後、パソコン室に戻ると1組の先生が戻ってきており、僕のパソコン画面を先生のパソコンで操作し、それをすべてのパソコンに映す形でカレンダー作りの裏ワザや操作のコツを説明していた。「操作中」の正体はこれだったのだ。
先生からは「なんの説明もなく勝手にやってごめんね」との謝罪のコメントがあった。
M上先生がかけつけたのはその数分後。到着した直後に「何の問題もなかった」と僕は説明した。
誤解があったとはいえあの時は必死に呼び止めようとして申し訳なかった。

いろいろあったがカレンダーは期間内に無事完成。
中学生になってしばらくも、「あのカレンダーは今頃どの教室で使われているのだろうか？」と考えることが時々あった。