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記録ノ84 スポーツ記者リョーマ?

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秋のとある水曜日、僕はシュンくんからあるお願いをされる…
「リョーマ、今日のイナズマイレブンのあらすじ、メモに書いてオレにくれないか?試合の結果だけでいいから…」

…この日のイナズマはイナズマジャパンVS一之瀬・土門擁するアメリカ代表ユニコーンの試合の決着がつく回であった。
しかし彼はこの日レミオロメンのライブに行くためリアルタイムで見ることはできない。録画するのもめんどくさい。でも試合の決着がつく回だから結果は知らないとこの後のストーリーに追いつけない。それで僕にメモをお願いしたという訳だ。
僕は字が汚い。(クラス全員周知の事実)でも彼はそれをわかったうえで僕にお願いしたのだろう。友人の頼みなら断るわけにはいかない(グミの実は断ったけどね)。
僕の答えは「御意!」であった。

そして放送時間の19時26分。急いで夕飯を食べ終えた僕はさっそく鉛筆とメモを用意。
彼は結果だけでいいと言っていたが僕はそれだけでは申し訳ないと思い(彼にとってはおせっかいだったかもしれないが)常にTV画面とにらめっこしながら試合の展開をよくみてメモをした。使った必殺技の名前とか、選手交代とか。さながらスポーツ記者のようだった。
その情報量は「スポーツ紙の記事か!」ってぐらいだ。
両親は友人のためにメモを一生懸命にとる僕の姿を見て「友達はもちろん大事だけど勉強もこれぐらい真剣にやってくれれば…」と思ったことだろう。
字のほうも精いっぱいきれいに書くことを心がけた。あくまでも自分の中での精いっぱいであったが。

そして本編終了。彼が望んだこの回の試合の結果だけでなく、最後の「今日の格言」まできっちり書いた。
僕は「シュンくん専属スポーツ記者 イナズマジャパン担当」としての使命を全うしたのだ。

翌日、メモを渡されたシュンくんは「結果だけでよかったのに」と言いながらも感謝の言葉を口にした。
少しやりすぎてしまったかもしれないが、僕はこれで書く力が少しは…付いたのだろうか?
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