リョーマ伝～小学生編～

記録ノ82 グットラックU先生

すっかりクラスに溶け込んできた実習生のU先生。毎日授業に参加して、休み時間には生徒たちと遊んで、クラブ活動にも顔を出して…みんなU先生のことが好きになっていった。
そしてU先生もこれまでの成果を見せるため、単独での授業も行った。U先生の授業はプロの先生のM上先生に負けず劣らずのわかりやすさととっつきやすさであった。
しかしそんなU先生とももうすぐお別れの日が…

U先生の実習期間最終日まで2週間を切ったある日、我がクラスはU先生に感謝を伝えるべく、U先生にサプライズでお別れ会を実習最終日の数日前の6時間目の学活の時間を使って行うことを決定した。
そして僕はそのお別れ会で司会を担当することとなったのだ！…といってもゴリゴリ進行を担当するわけでなく、ほかの複数人とともに単にあらかじめ用意されたセリフを読み上げるだけだが。
だが僕が担当するセリフは一番最初のセリフだ。会を成功させるためにも最初をキッチリ決めるのが肝心だ。プレッシャーは大きい。
U先生に1ヵ月の感謝を伝え、送り出すための会だ。暖かな気持ちで送り出すためにも失敗はできない。

それから毎日、総合の時間や学活の時間を使って、U先生が教室にいない間に僕たちはセリフの練習や進行の確認、飾りの制作などを行い着々と準備を進めてきた。
僕も当時かんだりすることがないようセリフをしっかり確認して練習した。
M上先生と皆で進行の通し練習中にU先生が教室に入ってきてクラス中がパニックになりかけたけど何とかばれずにごまかせた（と思う）。

そしてお別れ会当日。もちろんギリギリまでU先生には内緒だ。U先生が教室にいる間は一切お別れ会の話題には触れなかった。
時は流れていよいよ6時間目。何も知らない（と思う）U先生は女子数人に連れられ、僕たちが待機する会場の視聴覚室へ。
飾り付けられた視聴覚室を見て驚きの表情のU先生。U先生が完全に会場に入ったらいよいよ僕のセリフだ。

「U先生と一緒に過ごせる時間も残りわずかとなりました」
…何とかセリフは完璧だ。僕の役割は果たした。
続いて他の子が「今日はU先生に感謝の気持ちを伝えるべく、皆でお別れ会を開きたいと思います。」と続く。
そしていよいよ会本番。まずは皆で「なんでもバスケット」のU先生版である「U先生バスケット」を行った。
「なんでもバスケット」に当たる掛け声が「U先生バスケット」に変更されている以外はほぼなんでもバスケットと変わらないが、U先生に関するお題も多数出された。
続いてU先生へのチャレンジ企画として野球をやっているU先生がストラックアウトにチャレンジ。
結果は完璧ではなかったがU先生の投球にクラス中が震えあがった。

そしてエンディングではU先生へクラス皆からの寄せ書きカードをプレゼント。
カードにはクラスの女子が休み時間に学校敷地内で見つけた四葉のクローバーがふたつ貼られており、それぞれ「U先生が先生になれますように」「U先生が幸せになれますように」との願いが込められていた。
最後は歌のプレゼント。U先生も小学生のころ歌った思い出の歌、合唱曲「マイバラード」をクラス全員で合唱して会を締めくくった。暖かな雰囲気の中、会は大成功に終わった。

それから数日後の実習期間最終日、U先生はサプライズで5-2の生徒一人一人に直筆の手紙をプレゼントしてくれた。
僕にあてた手紙にはこのようなことが書かれていた。

「リョーマくん、僕が初めて学校に来た時に真っ先に声をかけてくれたね。うれしかったよ。
リョーマくんはたくさんの人に愛されているよ。そのことを忘れないでね。1ヵ月間ありがとう。」

僕たちは1ヵ月間、U先生を通してたくさんのことを学び、たくさんの思い出ができた。
U先生も先生になるための大切のことはもちろん、本来の学校の授業では学べない大切なことを学べるいいきっかけになったことだろう。
U先生にとっても、僕たちにとっても濃密な1ヵ月間だったことに違いない。