上 下
73 / 496

記録ノ73 水泳授業の乱

しおりを挟む
5年生のある日の水泳授業。
グループに分かれて練習を行うことになった。
泳げる人と少し泳げる人と泳げない人の3グループだ。
僕はほとんど泳げない。市民プールに結構な頻度で行ってたが犬かきと平泳ぎもどきで進むのがやっとだ。
だが僕は少し泳げるグループに入ると決めた。
なぜならそのグループにはセイタくんがいたからだ。
セイタくんからは当然「お前泳げるのか?」と疑いの目を向けられたが、僕は動きでごまかせば何とかなるだろう。と思っていた。

しかし、いざ授業が始まると少し泳げるグループのやることは僕にはレベルが高い。動きでごまかすなんてことは到底通用しなかった。
すぐさまグループ担当の先生の令により、泳げないグループへ強制移籍となった。

泳げないグループにだっていっぱい人はいる。ごまかしに失敗しての移籍とはいえ移籍のことは恥ずかしいとは思わなかった。ここが本来の自分の居場所、本来のレベルはここなんだと。
しかしグループ担当のM上先生はグループの中でも僕は極端に泳げないと判断し、僕にあるものを差し出した。
「リョーマ、これをつけろ。」

先生が持ってきたのはうきわのように体につけるブイ。
ぼくはこれをつければ絶対周りから「ダサイ」とか「おこちゃま」とか言われてバカにされる。先生はこれをつければ僕がどうなるかなんてわかっちゃいない。と思ってキレ気味に「イヤです」と断った。
しかし先生は「そんなこと言ってたら一生泳げないままだぞ!」とキレた。
僕もキレ返して「それでもイヤです!」とかたくなに断った。

僕は泳げないとか失敗するとかがイヤなわけじゃない。「失敗したり、挑戦することでバカにされる」のがイヤだったのだ。
仮にそれをつけて泳げるようになっても、バカにされるのであれば泳げなくていい。それが僕の考えだったのだ。
もしあの時他にブイをつけてる人がいて、その人がバカにされてなければ僕はつけるという道を選んでいた。
それでも先生は僕のためを思っての行動だったのだ。
それを理解できず、キレてしまったのは申し訳ないと思っている。
しおりを挟む

処理中です...