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記録ノ72 親の栄光をもちあげる息子

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6月、僕の父が会社のゴルフ大会で優勝した。ハンデ戦だったが…
父にはには立派なトロフィーが贈られた。スイングするゴルファーをかたどった本格的なものだ。
ハンデ戦とはいえ、自分の父が優勝したのだから僕は大喜び。家の玄関の下駄箱の上に飾られたトロフィーを毎日眺めていたものだ。これまで父のことを誇らしく思ったことは失礼ながらなかったが、人生で初めて父のことを誇らしく思えた。

その翌日以降、僕はクラス中でこのことを自慢しまくり「オレの父ちゃん社内ゴルフ大会で優勝したんだぜ!」と。
さらには学級新聞を作る新聞係が新聞の記事にするネタを募集するとくれば、僕はすぐさまこのことを記事にしてくれと頼みこみ、見事に記事に。
新聞には生徒たちから持ち込まれた生徒たちの日常での話題が並ぶなか、”生徒の親”の話題はいささか異彩を放っていたことだろう。この記事を皆がどういう気持ちで読んでいたかはわからないが、記事にしてくれた新聞係には感謝している。

そして我が家に友達が遊びに来るとくればすぐさま下駄箱の上のトロフィーを指さし自慢する。
みんな「すごい!」という目で見てくれていた。父もうれし恥ずかしな感じであった。

しかしこの一刀星リョーマという少年は自分の手柄でもないのにここまで自らの親の功績を持ち上げるとは…そこまでして目立ちたいのかキミは!

この大会は半年に1回ペースで開催。トロフィーは半年後には返還せねばならない。
そして半年後の大会では父は敗北。そしてあのトロフィーはその後我が家に戻ってくることはなかった…
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