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記録ノ51 ひょうたんVSヘチマ

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僕の通っていた小学校では「ヘチマとひょうたんの栽培」という4年生の伝統行事があった。
学校敷地内のビニールハウスで毎年初夏ごろに種をまき、育てるのだ。

最初にひょうたんとヘチマ、どっちを育てたいかを児童一人一人が決める。
僕は迷わずひょうたんにした。なぜなら形が面白いからだ。
クラスメンバー約30人のうち、ひょうたんを選んだのは20人ほど。対してヘチマは10人ぐらいしかいなかった。
ひょうたんの圧勝だ。そりゃ形がユニークだもん。それ以外の理由もあるだろうが。

それから僕たちは水やりをしたりするなどしてひょうたんとヘチマを育てていった。実がなるのを楽しみにしながら。
やがて秋ごろになるとついに実をつけた。あのユニークな物体が大量にぶら下がっている光景がたまらなく好きだった。
しかし僕は一つ気になったことがある。「収穫した実は何に使うんだろう?」

そして収穫されたひょうたんとヘチマの実の末路…それは「教室の前に飾るだけ」であった。
まあ、ヘチマはたわしとして使われることもあるけど今時ヘチマで食器何ぞ洗わんと思うし、ひょうたんは酒を入れる容器としておなじみだが我々小学生は酒なんぞ当然飲めないし、親が使うにしろ使う機会は今時ないだろうし、ひょうたんは縁起物として玄関とかに飾る過程もあるが、家庭によっては持って帰ってこられても困るなんてとこもあるだろうが…

それでも展示期間中は僕は毎日のようにひょうたんに触りまくった。やっぱりあのユニークな形を手で味わいたかったからだ。
でも正直「何のためにひょうたんとヘチマを育てたんだオレらは?」という思いで頭がいっぱいだった。
小学校生活4年目、数多くの植物を育ててきたけれどもここまで育てた目的がわからなかった植物は初めてだった。
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