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想いが重なる1月2日(3)※
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「なんか俺、だんだん心配になってきた」
はぁ、はぁと忙しなく息継ぎをする美雲は、「え?」と聞き返した。
「いやだってさ。こんなに感じてくれて嬉しいんだけど、これ以上やったら壊しちゃうんじゃないかって心配になる」
織也は美雲の目隠しを外して、閉じられた瞼にキスをした。
ゆっくりと目を開けると、織也が困ったように微笑んだ。
「まだまだシたいことあるんだけど。俺どうしたら良いんだろ……」
「そんなこと訊かれても」
視線を下げ、美雲は目を丸めて固まった。
胸の至る所に赤い痕が付いている。
織也は赤い痕をペロリ、ペロリと一つずつ舐めて見せつけた。
「はっきり嫌って言わないってことは、続けて良いんだよな」
やめたくない、と蒼い瞳が訴えかけてくる。
美雲はおずおずと織也の頭に手を伸ばし、優しく撫でた。こくりと頷くと、織也は目を瞬いた。
「っ! ……あぁもう……壊れるなよ」
美雲の下着を脚から抜き取ると、太ももを持ち上げて大きく開かせた。
美雲を見つめながら太ももの内側を頬ずりし、舐め回して、股の間に頭を沈めていく。
割れ目を指で拡げると、薄い皮の下から花芽が顔を覗かせた。
あまりにじっと見られて、美雲は堪らず手で隠した。
「隠すなよ。もっとよく見たい」
「それは嫌ですっ」
「ふっ。もう見ないから、手どけて。これじゃ、続きできないだろ?」
続きを望んでいるのは美雲も一緒だった。
大人しく手をどけると、脚を抱えているように言われ、両手を太ももまで誘導された。
「この体勢、いいな。今すぐ挿れたくなる。けど、まだ我慢。あ、汁が……尻まで伝ってる」
「お、お尻はダメですからね! 絶対ダメ!」
「じゃあ、ここから舐める」
後門のすぐ手前に舌先をつけて、愛液を掬い取るように蜜壺の入口まで一気に舐め上げた。
ザラザラの舌が、強い刺激を与えてくる。
「アァァッ!」
織也は何度も同じところを舐めて、入口をこしょこしょと舌先でくすぐった。
ヒクつく入口に織也の唾液が滴って、蜜壺から溢れ出した愛液と混ざり、股をはしたなく汚した。
美雲の嬌声が止まらないうちに、花芽を濡れた唇で挟んだ。花芽にちゅっ、ちゅっとキスの雨を降らせる。続けて指で皮を剥いて、美雲をチラリと見た。
美雲は視線を外せないまま、息を震わせる。
織也は赤い舌を伸ばして、露出した花芽をペロッと舐めた。
「ひゃっ」
「痛い?」
「大丈夫です……たぶん……」
「うん、痛くなったら教えて。ちゃんと痛いって言って。嫌とかダメじゃ止めてやらないからな」
愛液を掬って溜めた舌で、花芽を潤し、か弱いそこを翻弄した。
「ンアッ、アッ、アァッ、気持ち、いい」
ビリビリとした強い刺激に下半身が揺れ、膣と入口がキュウと締まる。
一瞬だけ痛いと感じるのに、すぐに名残惜しくなり、焦れてしまう。焦れたところを舐められ、痛みと同時に快感が生まれて、もう何が何だか分からなくなった。
(痛いのが気持ちいいなんて。もっと、ヒリヒリするまで舐められたい)
美雲は自ら秘部を拡げた。
蜜壺に舌を突き入れられて、グチャグチャにかき回され、また花芽を愛される。
忘れた頃に、膣に指を埋め込まれ、抜き差しされた。
指が一本から二本に増えたことにも気付かず、美雲は涙声で喘ぎ続けた。
「はぁ、はぁ……すごい……。何回イッたの?」
美雲は乱れた浴衣姿で起き上がり、織也に抱きつくと、押し倒して唇を奪った。
「んっ、ちょっと……どうし……んんっ」
「もっと。もっと欲しい……」
「んー、はぁっ……どんだけ俺の舌好きなんだよ」
織也はキスに応えながら、再び美雲の膣に指を忍び込ませた。
「はっ、ふっ……これじゃ、どっちが盛ってんのか分かんないな。そろそろ挿れていい? 苦しくなってきた」
「ナマで、ですか?」
「バッ--んなわけあるか!」
生でするわけじゃないよね、と暗に訊いたのだが、織也は別の意味で捉えたらしい。
頬を赤く染め、珍しいことに白い猫耳をピンと立てていた。
美雲を腰から下ろして起き上がると、枕の下に隠していた避妊具の箱を取り出した。背を向けたまま浴衣と下着を脱いで、避妊具をつけている。
その様子を見守っていた美雲は、ゆらゆらと揺れる白い尻尾に手を伸ばし、何とはなしに掴んだ。
手の中でビクンッと尻尾が跳ねる。
「うわっ! 急に触るなよ」
「ご、ごめんなさい」
「ったく、萎えたらどうすんの?」
向きを変えた織也は、美雲を引き寄せるなり、自分の上にまたがせて、美雲の肩から浴衣を落とした。
されるがまま浴衣とキャミソールを脱いだ美雲は、織也の質問に答える。
「えっと、舐めておっきくします?」
「なんでそこは恥ずかしげもなく言えて、俺には好きって言えないの。アンタの羞恥心の基準どうなってんの?」
織也はやれやれと頭を振って、ベッドサイドのパネルに手を伸ばすと、部屋の照明を間接照明だけにした。
「ムード台無しにされたから、仕切り直し」
「ごめんなさい……」
謝る美雲に微苦笑して、優しく口づけをする。
「俺の言う通りにしてくれたら許す」
「なにをすれば良いですか?」
「このまま、自分で挿れて」
「えぇっ」
「ほら。やってみせて。俺のしゃぶって大きくするって言えるくらいなんだから、出来るだろ」
美雲はやや躊躇って、恐る恐る織也の硬い熱に触れた。
ピクッと熱棒が反応し一瞬手を引いたが、織也の眼差しに促されて、しっかりと手で包み込んだ。
数回上下にしごいてから、蜜壺の入口にあてがう。
「それじゃスムーズに入っていかないよ。ぬるぬるをこすりつけて、濡らして……んっ、そう……はぁ、エロい……」
熱棒の先端が花芽に触れて、言いようのない快感を得る。ぐにっ、ぐにっと花芽をこね回していると、膣が熱棒を咥えたがった。
もう一度、蜜壺の入口にあてがって、ゆっくりと腰を沈めた。
織也の手が腰を支えてくれる。
「美雲」
「な、んですか?」
「好きだよ」
挿入したところから、ゾクゾクッと快感が駆け上る。
「美雲は?」
「好き、です」
「もう一回。目見て、言って」
「好き、好きっ--ンァアア!」
バチュンッと腰を打ち付けられ、美雲は一気に上り詰めた。
くたりと織也の肩にもたれかかる美雲を織也はギュッと抱きしめた。
「っ……膣イキしてる美雲のここ、すげー気持ちいい」
「急に、ひどいです……」
「ふっ、ごめん。ずっと我慢してたから、早く奥まで挿れたくなった」
視界が回って、押し倒されたと知る。
織也は美雲の胸を揉み、熟れた尖りを指先でこねながら、腰を揺らして快感を追い求めた。
美雲は、焦れて、焦れて仕方がなかった奥を責め立てられ、何度も達してしまう。愛液をダラダラとこぼし、織也の股さえも濡らした。
求め合うようにしがみついてキスをして、首筋や肩に舌を這わせて愛し合う。
(こんなっ、無我夢中でシたの、初めて……)
激しくなる抽送。艶かしい摩擦音が静かな部屋に響き渡るようだった。
美雲は前からも、後ろからも貫かれて、目に涙を溜めて、ひたすら甘い声を上げ続けた。
向き合って交わっていると、織也が表情を歪ませた。
「美雲、そろそろ出すよっ」
「出してっ、出して! いっぱい突いて出して!」
「くっ……あぁっ……それ、わざと?!」
「織也さんっ、キス、して……」
重ね過ぎてヒリつく唇を貪られる。
美雲も織也の動きに合わせて腰を揺らして、膣をきつく締め上げた。
織也は小さくうめくと、美雲の奥で果てた。
「はぁ~まずいな。こんな気持ちのいいセックス、初めてだ。抜きたくない……このまま二回戦、ダメ?」
「もう、無理です……」
全身に力を入れ過ぎて、四肢がガクガクと震えていた。
織也は残念そうに鼻を鳴らして、美雲の胸に頭を乗せた。
白い髪を撫でると、弾んだ声が返ってくる。
「美雲に撫でてもらうの好きだよ。時々、猫になりたくなる。猫のまま美雲と暮らすのも悪くないなって、ちょっと思ってたんだ」
「そうなんですか?」
「仙河家の跡継ぎっていう役目も、親からの期待も、何もかも捨ててしまいたかった。人としての理性も失って、ただ美雲が好きだっていう感情を抱いたまま、一生を終えるのも悪くないなって」
「そんな寂しいこと言わないでください」
「うん。もう言わないし、逃げないよ。逃げても結局、あの家に戻ることになったから」
織也は起き上がって、今度は美雲を腕に抱いた。
優しく頭を撫でられて目を閉じる。
頭を撫でられるのはこんなに気持ちがいいのか。
「美雲」
「ん?」
「美雲が俺のこと信じて、好きでいてくれる限り、俺は美雲を諦めたくない」
美雲は目を瞬き、織也の蒼い瞳を見つめた。
「俺と美雲は、いろんな隔たりを持ってる。環境も種族も、年齢も。だけど、俺はそれでも美雲が好きだ。理想論だけじゃアンタを繋ぎ止められないって分かってる。だから、努力するよ。美雲に、俺の隣に居たいって思ってもらえるよう」
「織也さん……」
「全力で守るから、俺の恋人になって」
そんなの答えは決まっている。
全て覚悟の上でこの部屋に来たのだから。
美雲は織也にちゅっとキスを送って微笑んだ。
「よろしくお願いします」
織也は嬉しそうに目を細めて、美雲をもう一度抱きしめた。
一月二日--この恋は、まだ始まったばかりだった。
はぁ、はぁと忙しなく息継ぎをする美雲は、「え?」と聞き返した。
「いやだってさ。こんなに感じてくれて嬉しいんだけど、これ以上やったら壊しちゃうんじゃないかって心配になる」
織也は美雲の目隠しを外して、閉じられた瞼にキスをした。
ゆっくりと目を開けると、織也が困ったように微笑んだ。
「まだまだシたいことあるんだけど。俺どうしたら良いんだろ……」
「そんなこと訊かれても」
視線を下げ、美雲は目を丸めて固まった。
胸の至る所に赤い痕が付いている。
織也は赤い痕をペロリ、ペロリと一つずつ舐めて見せつけた。
「はっきり嫌って言わないってことは、続けて良いんだよな」
やめたくない、と蒼い瞳が訴えかけてくる。
美雲はおずおずと織也の頭に手を伸ばし、優しく撫でた。こくりと頷くと、織也は目を瞬いた。
「っ! ……あぁもう……壊れるなよ」
美雲の下着を脚から抜き取ると、太ももを持ち上げて大きく開かせた。
美雲を見つめながら太ももの内側を頬ずりし、舐め回して、股の間に頭を沈めていく。
割れ目を指で拡げると、薄い皮の下から花芽が顔を覗かせた。
あまりにじっと見られて、美雲は堪らず手で隠した。
「隠すなよ。もっとよく見たい」
「それは嫌ですっ」
「ふっ。もう見ないから、手どけて。これじゃ、続きできないだろ?」
続きを望んでいるのは美雲も一緒だった。
大人しく手をどけると、脚を抱えているように言われ、両手を太ももまで誘導された。
「この体勢、いいな。今すぐ挿れたくなる。けど、まだ我慢。あ、汁が……尻まで伝ってる」
「お、お尻はダメですからね! 絶対ダメ!」
「じゃあ、ここから舐める」
後門のすぐ手前に舌先をつけて、愛液を掬い取るように蜜壺の入口まで一気に舐め上げた。
ザラザラの舌が、強い刺激を与えてくる。
「アァァッ!」
織也は何度も同じところを舐めて、入口をこしょこしょと舌先でくすぐった。
ヒクつく入口に織也の唾液が滴って、蜜壺から溢れ出した愛液と混ざり、股をはしたなく汚した。
美雲の嬌声が止まらないうちに、花芽を濡れた唇で挟んだ。花芽にちゅっ、ちゅっとキスの雨を降らせる。続けて指で皮を剥いて、美雲をチラリと見た。
美雲は視線を外せないまま、息を震わせる。
織也は赤い舌を伸ばして、露出した花芽をペロッと舐めた。
「ひゃっ」
「痛い?」
「大丈夫です……たぶん……」
「うん、痛くなったら教えて。ちゃんと痛いって言って。嫌とかダメじゃ止めてやらないからな」
愛液を掬って溜めた舌で、花芽を潤し、か弱いそこを翻弄した。
「ンアッ、アッ、アァッ、気持ち、いい」
ビリビリとした強い刺激に下半身が揺れ、膣と入口がキュウと締まる。
一瞬だけ痛いと感じるのに、すぐに名残惜しくなり、焦れてしまう。焦れたところを舐められ、痛みと同時に快感が生まれて、もう何が何だか分からなくなった。
(痛いのが気持ちいいなんて。もっと、ヒリヒリするまで舐められたい)
美雲は自ら秘部を拡げた。
蜜壺に舌を突き入れられて、グチャグチャにかき回され、また花芽を愛される。
忘れた頃に、膣に指を埋め込まれ、抜き差しされた。
指が一本から二本に増えたことにも気付かず、美雲は涙声で喘ぎ続けた。
「はぁ、はぁ……すごい……。何回イッたの?」
美雲は乱れた浴衣姿で起き上がり、織也に抱きつくと、押し倒して唇を奪った。
「んっ、ちょっと……どうし……んんっ」
「もっと。もっと欲しい……」
「んー、はぁっ……どんだけ俺の舌好きなんだよ」
織也はキスに応えながら、再び美雲の膣に指を忍び込ませた。
「はっ、ふっ……これじゃ、どっちが盛ってんのか分かんないな。そろそろ挿れていい? 苦しくなってきた」
「ナマで、ですか?」
「バッ--んなわけあるか!」
生でするわけじゃないよね、と暗に訊いたのだが、織也は別の意味で捉えたらしい。
頬を赤く染め、珍しいことに白い猫耳をピンと立てていた。
美雲を腰から下ろして起き上がると、枕の下に隠していた避妊具の箱を取り出した。背を向けたまま浴衣と下着を脱いで、避妊具をつけている。
その様子を見守っていた美雲は、ゆらゆらと揺れる白い尻尾に手を伸ばし、何とはなしに掴んだ。
手の中でビクンッと尻尾が跳ねる。
「うわっ! 急に触るなよ」
「ご、ごめんなさい」
「ったく、萎えたらどうすんの?」
向きを変えた織也は、美雲を引き寄せるなり、自分の上にまたがせて、美雲の肩から浴衣を落とした。
されるがまま浴衣とキャミソールを脱いだ美雲は、織也の質問に答える。
「えっと、舐めておっきくします?」
「なんでそこは恥ずかしげもなく言えて、俺には好きって言えないの。アンタの羞恥心の基準どうなってんの?」
織也はやれやれと頭を振って、ベッドサイドのパネルに手を伸ばすと、部屋の照明を間接照明だけにした。
「ムード台無しにされたから、仕切り直し」
「ごめんなさい……」
謝る美雲に微苦笑して、優しく口づけをする。
「俺の言う通りにしてくれたら許す」
「なにをすれば良いですか?」
「このまま、自分で挿れて」
「えぇっ」
「ほら。やってみせて。俺のしゃぶって大きくするって言えるくらいなんだから、出来るだろ」
美雲はやや躊躇って、恐る恐る織也の硬い熱に触れた。
ピクッと熱棒が反応し一瞬手を引いたが、織也の眼差しに促されて、しっかりと手で包み込んだ。
数回上下にしごいてから、蜜壺の入口にあてがう。
「それじゃスムーズに入っていかないよ。ぬるぬるをこすりつけて、濡らして……んっ、そう……はぁ、エロい……」
熱棒の先端が花芽に触れて、言いようのない快感を得る。ぐにっ、ぐにっと花芽をこね回していると、膣が熱棒を咥えたがった。
もう一度、蜜壺の入口にあてがって、ゆっくりと腰を沈めた。
織也の手が腰を支えてくれる。
「美雲」
「な、んですか?」
「好きだよ」
挿入したところから、ゾクゾクッと快感が駆け上る。
「美雲は?」
「好き、です」
「もう一回。目見て、言って」
「好き、好きっ--ンァアア!」
バチュンッと腰を打ち付けられ、美雲は一気に上り詰めた。
くたりと織也の肩にもたれかかる美雲を織也はギュッと抱きしめた。
「っ……膣イキしてる美雲のここ、すげー気持ちいい」
「急に、ひどいです……」
「ふっ、ごめん。ずっと我慢してたから、早く奥まで挿れたくなった」
視界が回って、押し倒されたと知る。
織也は美雲の胸を揉み、熟れた尖りを指先でこねながら、腰を揺らして快感を追い求めた。
美雲は、焦れて、焦れて仕方がなかった奥を責め立てられ、何度も達してしまう。愛液をダラダラとこぼし、織也の股さえも濡らした。
求め合うようにしがみついてキスをして、首筋や肩に舌を這わせて愛し合う。
(こんなっ、無我夢中でシたの、初めて……)
激しくなる抽送。艶かしい摩擦音が静かな部屋に響き渡るようだった。
美雲は前からも、後ろからも貫かれて、目に涙を溜めて、ひたすら甘い声を上げ続けた。
向き合って交わっていると、織也が表情を歪ませた。
「美雲、そろそろ出すよっ」
「出してっ、出して! いっぱい突いて出して!」
「くっ……あぁっ……それ、わざと?!」
「織也さんっ、キス、して……」
重ね過ぎてヒリつく唇を貪られる。
美雲も織也の動きに合わせて腰を揺らして、膣をきつく締め上げた。
織也は小さくうめくと、美雲の奥で果てた。
「はぁ~まずいな。こんな気持ちのいいセックス、初めてだ。抜きたくない……このまま二回戦、ダメ?」
「もう、無理です……」
全身に力を入れ過ぎて、四肢がガクガクと震えていた。
織也は残念そうに鼻を鳴らして、美雲の胸に頭を乗せた。
白い髪を撫でると、弾んだ声が返ってくる。
「美雲に撫でてもらうの好きだよ。時々、猫になりたくなる。猫のまま美雲と暮らすのも悪くないなって、ちょっと思ってたんだ」
「そうなんですか?」
「仙河家の跡継ぎっていう役目も、親からの期待も、何もかも捨ててしまいたかった。人としての理性も失って、ただ美雲が好きだっていう感情を抱いたまま、一生を終えるのも悪くないなって」
「そんな寂しいこと言わないでください」
「うん。もう言わないし、逃げないよ。逃げても結局、あの家に戻ることになったから」
織也は起き上がって、今度は美雲を腕に抱いた。
優しく頭を撫でられて目を閉じる。
頭を撫でられるのはこんなに気持ちがいいのか。
「美雲」
「ん?」
「美雲が俺のこと信じて、好きでいてくれる限り、俺は美雲を諦めたくない」
美雲は目を瞬き、織也の蒼い瞳を見つめた。
「俺と美雲は、いろんな隔たりを持ってる。環境も種族も、年齢も。だけど、俺はそれでも美雲が好きだ。理想論だけじゃアンタを繋ぎ止められないって分かってる。だから、努力するよ。美雲に、俺の隣に居たいって思ってもらえるよう」
「織也さん……」
「全力で守るから、俺の恋人になって」
そんなの答えは決まっている。
全て覚悟の上でこの部屋に来たのだから。
美雲は織也にちゅっとキスを送って微笑んだ。
「よろしくお願いします」
織也は嬉しそうに目を細めて、美雲をもう一度抱きしめた。
一月二日--この恋は、まだ始まったばかりだった。
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