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第三章 希望を抱いて

追加報酬

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 二日が経過していた。金策に明け暮れた日々が遂に終わる。
 諒太は聖王国でもクエストをこなし、尚且つ不要品や魔石を売って資金を捻出していた。けれど、貯まったのは合計で56500ナール。日付が変わると同時に引き落とされる利子に43500ナールがまだ不足している。

 学校が終わるや、諒太は即座にログインしているが、零時までに四万ナールを稼げるはずはない。
「望みは追加報酬だけど……」
 ダッドによると大臣に依頼した土竜退治の追加報酬が本日支払われるらしい。今日中に欲しいと無理をいって何とか了承を得ている。

「せめて明日からのゴールデンウイーク期間中だったらな……」
 明日から諒太は七連休となり、五月六日をずる休みすると十連休となった。既に両親は空港へと向かったらしく、八日の夜まで戻ってこない。この期間中であれば十分に利子分くらいは稼げたはずである。

 今から深夜までクエストを頑張ったとして一万ナール貯まれば良い方だ。これまでに効率が良かった日は二日しかなく、思えばミスリル採掘という効率の悪さがしわ寄せとなっていた。

「リョウ君、こんばんは!」
 まずはアクラスフィア王国の冒険者ギルドへと入っていくと、いつものようにアーシェが出迎えてくれた。平日は諒太が夜にしか現れないと知った彼女はずっと夜勤を希望しているらしい。

「アーシェ、俺が奴隷オークションにかかったら落札してくれないか?」
 疲れ果てていた諒太はアーシェをからかい出す。彼女の反応によって活力を得ようと。

「もう! そんなこと無理だって! 冗談をいう暇があれば依頼を受けなさい!」
 アーシェは両手を腰に回して母のようにいう。いつぞやのように顔を赤らめるだけの彼女ではなくなっていた。

「分かってるよ。ソラも頑張ってくれてるし……」
「本当に。ソラさん今日も五千ナール稼いでるんだよ?」
 実をいうと二日前からソラは一人で働きに出ている。諒太の借金を知ったダッドが特別に仕事を回してくれたのだ。

「そりゃあ助かるな。それでダッドギルド長は? 追加報酬について聞きたいのだけど」
 ソラが五千ナールも稼いでくれたのなら希望はあった。その収入を含めると利子の足らずは38500となる。土竜を退治した半分でも認められたとしたら、奴隷オークションは避けられるはずだ。

「ギルド長、リョウ君が来てますよ!」
 諒太を執務室に連れて行くことなく、アーシェはダッドを呼ぶ。彼女としても気になる話であり、一緒に聞くつもりなのだろう。

「おおリョウ、早かったな……」
 ダッドが麻袋を手にしている。それは恐らく追加報酬分に違いない。けれども、諒太が考えるよりもその袋は小さかった。

「大臣のやつ、視察を送ったらしいんだが、規模は大きくなかったと言い張りやがってな……」
 嫌な予感がする。実際に被害が落ち着いてしまった今となっては、追加的に支払いたくないのも頷ける話だ。

「だがな、超大土竜の討伐は認めてくれたぞ。何しろ爪が残っているんだからな」
 どうしてかカウンターの下からダッドが超大土竜の爪を取り出す。それは査定に預けたはずであり、諒太の元へは返ってこないはずなのに。

「なぜ超大土竜の爪があるのです?」
「いやな、追加報酬は出してもらえたんだが、超大土竜の爪は依頼外だと抜かしやがる。狩ったのは冒険者の都合で、宮廷府は買い取れんというんだ……」
 一番頼りにしていた超大土竜の爪。それが買い取れないとなれば、あとは本当に追加的な報酬だけとなる。
「一悶着あったが、一応は追加報酬だ。ギルドカードにプールでいいな?」
 麻袋の中身が気になったけれど、諒太はギルドカードをダッドに手渡す。

 このあと諒太は知らされてしまう。何の希望もない追加報酬について……。

「では一万ナールを入金するぞ――――」
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