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第三章 希望を抱いて

錬金術

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 ソラがテイムを承諾したけれど、ここで問題が一つだけあった。諒太はテイマーなんて考えもしていないのだ。よって使役方法がよく分かっていない。
 ただ既に魔物が屈服しているのだし、同意だってしている。ならば難しく考える必要はないのかもしれない。スキルの発動時に声掛けが必須であるのと同じで、言葉にするだけで構わないような気がした。

 諒太は跪くソラに向かって手をかざし、必要となるだろう単語を口にする。
「テイム!」
 すると手の平から魔力が抜け出していく。それは瞬く間に輝きを発し、ソラを包み込んでいく。

 諒太は息を呑んでいた。テイムしたのは自分自身であったけれど、本当に魔物を使役してしまうだなんて想像もしないことである。
 かといって、しばらくして輝きが失われると、別段変化のないソラがそこにいるだけであった。

「ソラ、何か変わったことは?」
 とりあえず体調に変化がないかを聞いてみる。使役した魔物はプレイヤーの魔力を消費すると聞く。だからこそ変わったことがないのだろうかと。

「力が湧いてくるような気がします!」
「よし、なら次は服が必要だな……」
 流石に全裸の女性を連れ歩くなんてできない。諒太はアイテムボックスを開いて彼女が羽織るものを探している。

「妖精女王のローブしかないな……」
 鎧の予備はないし、諒太は夏美にもらった妖精女王のローブしか持っていない。妖精女王といえば残念妖精であったけれど、ここはローブの出所を考えるときではないはずだ。

「ソラ、これを着てくれないか?」
 妖精女王のローブはもう着るつもりがないし、諒太はそれをソラへと手渡す。
 とはいえ服を着た経験がないのか、ソラは戸惑っていた。最終的に涙目を諒太に向けるしかなくなっている。

「て、手伝うよ……」
 諒太も一応はお年頃である。眺めるだけならばまだしも、裸体に触れるなんて平常心を保てない。何度も大袈裟に深呼吸をして平静を装う。

 何とか腰までは穿けたものの、羽が邪魔になってそれ以上は無理だ。とりあえずは羽の位置を剥ぎ取りナイフで切ってみたけれど、結ばないことにはずり落ちてしまう。
「どうしたもんかな……」
 頭を悩ませた結果、諒太は次なる手段を思いつく。

 確かにリナンシーが言っていたのだ。諒太には錬金術の才能があると。ならば結び目を作るくらいはできそうな気がする。
「大切なのはイメージだったな……」
 首元に紐を取り付けるイメージ。左右の羽の上部へ二本ずつ。天使が羽織っている姿を想像しつつ、フードの部分が紐へと変換されるように強くイメージしていく。
 綺麗に仕上がるように。彼女が今よりも美しくなれるようにと。

「あとは魔力を流す!」
 ここで諒太は一度に魔力を注ぎ込む。だが、何やらおかしい。無双の長剣を錬成したときとは異なり、どうしてか根こそぎ魔力が失われてしまう。目眩を覚えるほどでもなかったけれど、再び危険な状態へと近付いているはずだ。

「嘘だろ……?」
 刹那にソラが輝き始めた。既視感を覚える光景。諒太としてはローブだけで良かったのだが、美しい天使を想像したからか、ソラの全身が輝きを帯びてしまう。

「これヤバいんじゃね……?」
 確かに錬金術を使った。けれど、指定対象となったのはローブだけではない。どうしてかソラ自身が輝きを放っているのだ。テイムしたとき以上に、直視できないくらい眩しい輝きを……。

 かなりの時間を要している。紐を創造するだけにしては長すぎた。一体どうなってしまうのかと、諒太は戦々恐々である。
 何分が経過しただろう。目映い煌めきは霧が晴れるように薄くなっていく。だが、なぜか朝露のような煌めきが僅かに残っている。

『リョウは錬金術がLv10になりました』
『リョウはスキル【テイム】を習得しました』

 ここで脳裏に通知が届く。あろうことか一度にスキルレベルが10にまで上がっている。加えてどうしてかテイムを今更ながらに習得していた。
 また諒太を更に困惑させる通知が遅れて届く。

『ソラのテイムに成功しました』

 連続して通知されたのは、どうしてかテイムの通知であった。まるでタスクが遅れて実行されたかのようだ。
 声を失う諒太。あり得ないと思う。なぜならテイムの遅延通知だけでなく、更に遅れて続いた通知が彼を戸惑わせていたからだ。

『ソラは錬成により【セイレーン】から【エンジェル】に進化しました――――』
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