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第二章 悪夢の果てに
荒野の邂逅
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諒太は再び夏美の倉庫へと戻ってきた。既にグレートサンドワーム亜種の骸はなく、何もない荒野が拡がっているだけだ。
「この先に農耕地があるのか……」
とても信じられない。見渡す限りに砂漠とも言える草木のない大地が拡がっている。ガナンデル皇国に奪われたという農耕地帯がこの先にあるなんて考えられなかった。
「ポータルが使えたら良かったんだけど。歩いて行くしかないな……」
移動ポータルは訪れた経験がある者にしか使用できない。仮に経験者がいたとして、戦時であるこの世界線において堂々と他国へ向かう人間がいるはずもなかった。
よって諒太は歩くだけ。どこに関所があるのか分からないけれど、街道も封鎖されている現在では行き交う馬車もなく、諒太は徒歩を選択するしかなかった。
何時間歩いただろうか。もう直ぐ両親が帰ってくる時間だ。何とか特徴のある場所まで辿り着き、ログアウトしなければならない。
「あの岩山にしよう……」
荒野にポツンとあった岩山。そこであれば転移できそうだ。イメージするため周囲の景色を諒太は目に焼き付けている。
すると背後から馬が駆ける蹄の音がした。街道を外れていたというのに、どうも諒太を追ってきたような気がする。
「面倒だな……。盗賊か?」
振り向くと派手な金色の鎧を纏った騎士らしき男が追っていた。しかし、諒太は何の罪も犯していないし、もちろん罪人ではない。騎士団員が追ってくる理由が分からなかった。
「おいそこのお前、貴様は何者だ?」
偉そうな口ぶりで諒太は問われている。恐らく騎士団員ではない。装備を見る限りは近衛兵団に所属する団員であろう。
「俺はリョウ。ただの冒険者です。貴方こそ何者ですか?」
「僕はイバーニ・レイブン。近衛兵団先兵隊長をしている。近衛兵団長ダリン・レイブンの息子といえば分かりよいか? お前は何もない荒野で何をしている? まさかガナンデルに亡命するつもりではないだろうな?」
ようやく彼が追いかけて来たわけを理解できた。敵国に亡命する王国民だと勘違いしたらしい。
「ガナンデル皇国に用事があるのは事実です。特殊な素材を手に入れたので防具の製作依頼をするだけですよ……」
「特殊な素材だと? どこで手に入れた?」
本当に邪魔臭くなってきた。しつこいようであれば諒太にも考えがある。アクラスフィア王には世話になったことがないし、近衛兵団に媚びるつもりもない。
「何故そこまで話す必要があるんです? そもそも貴方こそこのような荒野で何をしているのでしょう?」
「僕は先兵隊所属だと言ったはずだぞ? ガナンデル皇国に動きがないかを偵察しているのだ。騎士団は無能で信用できないからな。それより貴様は騎士団が召喚した勇者候補ではないのか?」
意外にもイバーニは諒太のことを知っているようだ。諒太自身は王城を歩き回ったことなどないというのに。
「どうでしょうか? 答える義務はないと思いますけど」
「ふはは! ならば剣を抜け! 直接見定めてやろう!」
どうやら返答を誤ったらしい。上手くやり過ごすつもりだったが、余計な手間をかけなくてはならなくなった。
「そのようなことをしている場合ですか? それに俺は見ての通り、魔道士ですけれど?」
「知ったことか! 魔道士ならば呪文を唱えれば良いだろう? かなりの実力者であるのは分かっている。仕掛けてこぬならこちらから行くぞ?」
面倒なことになったけれど、こうなると戦った方が早い。イバーニから剣を抜けと言ったのだ。反撃したとして悪落ちはしないはず。ならば鬱憤晴らしも兼ねて、少しばかり痛めつけてやろうと諒太は思い直している。
【イバーニ・レイブン】
【近衛兵団先兵隊長・Lv73】
予想はしたけれどイバーニは一般的なNPC扱いの人間ではないらしい。確かレイブン近衛兵長なる人がアクラスフィア王国最強だとフレアが話していた。近衛兵団長の息子であるイバーニはプレイヤーの血を継いでいるのだろう。
「いつでもどうぞ。返り討ちにしたとして怒らないでくださいよ?」
「減らず口をたたくな! 行くぞ!」
諒太は直ぐさま剣に持ち替え、馬上から攻撃してくるイバーニに合わせた。流石に高レベルだ。重い一撃が繰り出されている。
ところが、何を思ったのか初撃を防がれるやイバーニは馬を飛び降りていた。何かしらの剣技を有しているのかもしれない。
【剣技】アーマーブレイクLv1
馬を下りたのはアーマーブレイクを使用するために違いない。それは敵の防御力を半減させられるスキルだ。かといって諒太は焦らない。そもそもローブを装備しており、防御力など始めから紙切れであったのだ。
「しゃーねぇ、さっさと終わらせるか……」
いち早く夕飯を平らげなくてはならない。食べた痕跡を残さねば、帰宅した両親が心配するはずだ。恐らくは部屋まで様子を見に来るだろう。
「行くぞ、アーマーブレイク!!」
早速とスキルを発動するイバーニ。しかし、防御力を半減させる攻撃であるからか、アーマーブレイクには大きな隙があった。
素早く避けた諒太はすれ違い様にイバーニを小突く。かなり加減したつもりだけど、それだけで彼は失神し地面へと伏してしまう。
「やりすぎたか……」
レベル差はともかく、ステータス値が違いすぎた。どのような間違いがあろうと、イバーニが諒太を倒せるはずもない。
「ま、これで悠々とログアウトできるというものだ……」
一応は生存を確認し、諒太はログアウトを選択する。さっさと夕飯を食べて、ガナンデル皇国へと向かわねばならない。準備に残された時間は限られていた……。
「この先に農耕地があるのか……」
とても信じられない。見渡す限りに砂漠とも言える草木のない大地が拡がっている。ガナンデル皇国に奪われたという農耕地帯がこの先にあるなんて考えられなかった。
「ポータルが使えたら良かったんだけど。歩いて行くしかないな……」
移動ポータルは訪れた経験がある者にしか使用できない。仮に経験者がいたとして、戦時であるこの世界線において堂々と他国へ向かう人間がいるはずもなかった。
よって諒太は歩くだけ。どこに関所があるのか分からないけれど、街道も封鎖されている現在では行き交う馬車もなく、諒太は徒歩を選択するしかなかった。
何時間歩いただろうか。もう直ぐ両親が帰ってくる時間だ。何とか特徴のある場所まで辿り着き、ログアウトしなければならない。
「あの岩山にしよう……」
荒野にポツンとあった岩山。そこであれば転移できそうだ。イメージするため周囲の景色を諒太は目に焼き付けている。
すると背後から馬が駆ける蹄の音がした。街道を外れていたというのに、どうも諒太を追ってきたような気がする。
「面倒だな……。盗賊か?」
振り向くと派手な金色の鎧を纏った騎士らしき男が追っていた。しかし、諒太は何の罪も犯していないし、もちろん罪人ではない。騎士団員が追ってくる理由が分からなかった。
「おいそこのお前、貴様は何者だ?」
偉そうな口ぶりで諒太は問われている。恐らく騎士団員ではない。装備を見る限りは近衛兵団に所属する団員であろう。
「俺はリョウ。ただの冒険者です。貴方こそ何者ですか?」
「僕はイバーニ・レイブン。近衛兵団先兵隊長をしている。近衛兵団長ダリン・レイブンの息子といえば分かりよいか? お前は何もない荒野で何をしている? まさかガナンデルに亡命するつもりではないだろうな?」
ようやく彼が追いかけて来たわけを理解できた。敵国に亡命する王国民だと勘違いしたらしい。
「ガナンデル皇国に用事があるのは事実です。特殊な素材を手に入れたので防具の製作依頼をするだけですよ……」
「特殊な素材だと? どこで手に入れた?」
本当に邪魔臭くなってきた。しつこいようであれば諒太にも考えがある。アクラスフィア王には世話になったことがないし、近衛兵団に媚びるつもりもない。
「何故そこまで話す必要があるんです? そもそも貴方こそこのような荒野で何をしているのでしょう?」
「僕は先兵隊所属だと言ったはずだぞ? ガナンデル皇国に動きがないかを偵察しているのだ。騎士団は無能で信用できないからな。それより貴様は騎士団が召喚した勇者候補ではないのか?」
意外にもイバーニは諒太のことを知っているようだ。諒太自身は王城を歩き回ったことなどないというのに。
「どうでしょうか? 答える義務はないと思いますけど」
「ふはは! ならば剣を抜け! 直接見定めてやろう!」
どうやら返答を誤ったらしい。上手くやり過ごすつもりだったが、余計な手間をかけなくてはならなくなった。
「そのようなことをしている場合ですか? それに俺は見ての通り、魔道士ですけれど?」
「知ったことか! 魔道士ならば呪文を唱えれば良いだろう? かなりの実力者であるのは分かっている。仕掛けてこぬならこちらから行くぞ?」
面倒なことになったけれど、こうなると戦った方が早い。イバーニから剣を抜けと言ったのだ。反撃したとして悪落ちはしないはず。ならば鬱憤晴らしも兼ねて、少しばかり痛めつけてやろうと諒太は思い直している。
【イバーニ・レイブン】
【近衛兵団先兵隊長・Lv73】
予想はしたけれどイバーニは一般的なNPC扱いの人間ではないらしい。確かレイブン近衛兵長なる人がアクラスフィア王国最強だとフレアが話していた。近衛兵団長の息子であるイバーニはプレイヤーの血を継いでいるのだろう。
「いつでもどうぞ。返り討ちにしたとして怒らないでくださいよ?」
「減らず口をたたくな! 行くぞ!」
諒太は直ぐさま剣に持ち替え、馬上から攻撃してくるイバーニに合わせた。流石に高レベルだ。重い一撃が繰り出されている。
ところが、何を思ったのか初撃を防がれるやイバーニは馬を飛び降りていた。何かしらの剣技を有しているのかもしれない。
【剣技】アーマーブレイクLv1
馬を下りたのはアーマーブレイクを使用するために違いない。それは敵の防御力を半減させられるスキルだ。かといって諒太は焦らない。そもそもローブを装備しており、防御力など始めから紙切れであったのだ。
「しゃーねぇ、さっさと終わらせるか……」
いち早く夕飯を平らげなくてはならない。食べた痕跡を残さねば、帰宅した両親が心配するはずだ。恐らくは部屋まで様子を見に来るだろう。
「行くぞ、アーマーブレイク!!」
早速とスキルを発動するイバーニ。しかし、防御力を半減させる攻撃であるからか、アーマーブレイクには大きな隙があった。
素早く避けた諒太はすれ違い様にイバーニを小突く。かなり加減したつもりだけど、それだけで彼は失神し地面へと伏してしまう。
「やりすぎたか……」
レベル差はともかく、ステータス値が違いすぎた。どのような間違いがあろうと、イバーニが諒太を倒せるはずもない。
「ま、これで悠々とログアウトできるというものだ……」
一応は生存を確認し、諒太はログアウトを選択する。さっさと夕飯を食べて、ガナンデル皇国へと向かわねばならない。準備に残された時間は限られていた……。
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