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第十四章 迫る闇の中で
アンジェラ・ローズマリーの日記
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髭にアンジェラ・ローズマリーの日記を手に入れてもらった私は自室へと籠もっていました。
「手書きなんだね……」
中を開いてみると規則正しい文字が並んでいました。
加えて古書とは思えないほど程度が良く、読むのに支障はありません。
「この日記帳自体が魔術で成っているのか」
日記帳はパラパラと捲ると無限にページが流れていきます。
実体としてのページは存在していない感じ。延々とページを加えられる術式が施されているようです。
「綺麗なはずだわ……」
魔法にてページが成っているのですから、劣化の心配はありません。
またここまでの術式が施された日記が偽物とすり替わっているとは思えませんでした。
ただし、内容は本当に日記みたい。気候に関することや、日常のお買い物とか他愛もない内容が続いています。
「これはハズレかも……」
どうやら私が期待したものではありません。
BlueRoseのオープニングにあった巨悪を退治した話とか読んでみたかったのですけれど。
「黒竜の話が知りたかったのに……」
ポツリと漏らすや、ページが輝き出す。
何が何だか分かりませんでしたけれど、勝手にページが捲れていきました。
「うそ!? 検索とかできんの!?」
流石は古代エルフの日記ですね。
一体どれほどの日数が進んだのか不明ですけれど、確かに竜という文字があると分かります。
単語を一つずつ拾い出しながら、分からない箇所に推測を加えつつ読み解いていく。
『長い旅路。ピークレンジ山脈を越えた場所はまだ平穏そのものだった。やはり黒竜は南の地に現れていないようだ』
どうやら黒竜はピークレンジ山脈の北側で暴れ回っていた模様です。
南側の平穏は大陸を分かつ強大な壁であるピークレンジ山脈のおかげなのかもしれません。
『私は大陸の南部を隈無く歩いた。けれど、黒竜の話題など一度も聞かない。しかしながら、南部には火竜という脅威があると聞く。どうも世界は竜によって支配されようとしているらしい。安息の地など存在しないのかもな』
ここで火竜が出てきました。
ゲームの設定や世界の歴史から考えると、やはりアンジェラは火竜退治に向かうのだと思います。何しろ彼女はマリィのような幼竜を連れていたのですから。
『コーネルという国を後にし、私は南端を目指す。聞けば火竜は危害を加えない限り襲って来ないらしい。とりあえず、竜種はもうこりごりだ。黒竜がいないこの地で私は英気を養うとしよう』
大陸の北側で黒竜と戦った経験があるのかもしれない。
疲れ果てたアンジェラは険しい山脈を越えて南側へと来たようです。
『二つ目の山を登る。しかし、ピークレンジを踏破した私にとっては丘にも等しい。どちらかというと、途中にある密林の方が大変だったと思う』
えっと、なんだ?
ピークレンジ山脈から南下してヘブンズヒル山脈とレッドウォール山脈を登ったってこと?
だったら何?
途中にある密林って……スカーレット子爵領じゃん!!
何千年も前に記された日記でもディスられてしまうなんてね。
まあでも良かったわ。スカーレット子爵領が永遠にド田舎であることが分かって。
『山頂からは南に拡がる国が見えた。かなり栄えている。火竜は本当に人を襲わないのかもしれない。安堵したのも束の間、私の周囲に巨大な影が落ちた』
日記であるというのに、スリリングな展開です。
一体何が現れたというのでしょう。
『ちくしょうめ。火竜が現れたらしい。私は直ぐさまロッドを取り出し、応戦しようとする』
火竜の巣へと向かってしまったのでしょうか。
というか、昔からレッドウォール山脈には火竜の巣があったのかしらね。
『しかし、戦いは始まらなかった。それどころか、火竜は私に話しかけている。拙い言葉であったけれど、確かに人が使う言葉と同じだった』
え? 火竜って喋るの?
咆吼はしてたけど、私にはさっぱり分からない。
もしかするとエルフにしか聞き取れないのかもしれません。
『火竜はもう寿命を迎えるようだ。幾ばくもなく輪廻に還ると話している。何故に話しかけたのかと問うと、五百年から孵らぬタマゴがあるとのこと。それを私に託したいと口にしている』
言葉が分かるとこうも違うのね。
私は襲われたから殲滅したけれど、アンジェラはタマゴを保護してくれと依頼されたみたいです。
『巣には二つのタマゴがあった。腐っているんじゃないかと思うも、火竜は問題ないと話す。タマゴを羽化させるには魔力が必要らしく、残念ながら案内してくれた古竜はもうその力がないと語る。従って五百年も羽化していないとのことだ』
魔力って……。
私は別に魔力を注いだつもりもないのだけど、ひょっとするとアイテムボックスに収納していたから、勝手に私の魔力を奪っていたのかもしれません。
『竜種はこりごりだったのだが、やはり頼まれると断りにくい。未練によりゾンビ化されても困るのだし、私は引き受けることにした。二つのタマゴをアイテムボックスへと収納し、火竜と別れることに』
えっと、二つも持って帰っちゃったの?
てか、アンジェラはアイテムボックスのギフト持ちだったみたいね。
『火竜からタマゴを受け取って三日ばかり。宿屋に宿泊して目が覚めたときだ。私は妙な泣き声に目を覚ましていた。何とタマゴが二つとも羽化している。しかも、私のお腹の上に二匹共が乗っかっているじゃないか』
何となく想像できます。
マリィも生まれるや私の肩へと飛び乗っていたのですから。
『思ったより可愛い。竜種はこりごりだと考えていたのだが、私はこいつたちの親をしたいと思うようになった』
割と面白いわ。髭に頼んで手に入れてもらった価値があるわね。
火竜の聖女がどのようにして火竜を得られたのか。伝承には残っていない話が知れるなんて最高じゃないの。
『私は産まれた二人に名を授けることにした』
私は続きが気になっていました。
アンジェラが二頭の幼竜に何と名付けたのかと。
しかし、絶句することに。私は呆然と頭を振ることになっています。
『二人の名はマリィとルイに決めた――』
「えっ……?」
まるで意味が分からない。偶然にしては出来すぎじゃないかと思う。
火竜の名前が私たちと同じだなんて。
どうにも不可解な内容に私はしばし呆然としていました……。
「手書きなんだね……」
中を開いてみると規則正しい文字が並んでいました。
加えて古書とは思えないほど程度が良く、読むのに支障はありません。
「この日記帳自体が魔術で成っているのか」
日記帳はパラパラと捲ると無限にページが流れていきます。
実体としてのページは存在していない感じ。延々とページを加えられる術式が施されているようです。
「綺麗なはずだわ……」
魔法にてページが成っているのですから、劣化の心配はありません。
またここまでの術式が施された日記が偽物とすり替わっているとは思えませんでした。
ただし、内容は本当に日記みたい。気候に関することや、日常のお買い物とか他愛もない内容が続いています。
「これはハズレかも……」
どうやら私が期待したものではありません。
BlueRoseのオープニングにあった巨悪を退治した話とか読んでみたかったのですけれど。
「黒竜の話が知りたかったのに……」
ポツリと漏らすや、ページが輝き出す。
何が何だか分かりませんでしたけれど、勝手にページが捲れていきました。
「うそ!? 検索とかできんの!?」
流石は古代エルフの日記ですね。
一体どれほどの日数が進んだのか不明ですけれど、確かに竜という文字があると分かります。
単語を一つずつ拾い出しながら、分からない箇所に推測を加えつつ読み解いていく。
『長い旅路。ピークレンジ山脈を越えた場所はまだ平穏そのものだった。やはり黒竜は南の地に現れていないようだ』
どうやら黒竜はピークレンジ山脈の北側で暴れ回っていた模様です。
南側の平穏は大陸を分かつ強大な壁であるピークレンジ山脈のおかげなのかもしれません。
『私は大陸の南部を隈無く歩いた。けれど、黒竜の話題など一度も聞かない。しかしながら、南部には火竜という脅威があると聞く。どうも世界は竜によって支配されようとしているらしい。安息の地など存在しないのかもな』
ここで火竜が出てきました。
ゲームの設定や世界の歴史から考えると、やはりアンジェラは火竜退治に向かうのだと思います。何しろ彼女はマリィのような幼竜を連れていたのですから。
『コーネルという国を後にし、私は南端を目指す。聞けば火竜は危害を加えない限り襲って来ないらしい。とりあえず、竜種はもうこりごりだ。黒竜がいないこの地で私は英気を養うとしよう』
大陸の北側で黒竜と戦った経験があるのかもしれない。
疲れ果てたアンジェラは険しい山脈を越えて南側へと来たようです。
『二つ目の山を登る。しかし、ピークレンジを踏破した私にとっては丘にも等しい。どちらかというと、途中にある密林の方が大変だったと思う』
えっと、なんだ?
ピークレンジ山脈から南下してヘブンズヒル山脈とレッドウォール山脈を登ったってこと?
だったら何?
途中にある密林って……スカーレット子爵領じゃん!!
何千年も前に記された日記でもディスられてしまうなんてね。
まあでも良かったわ。スカーレット子爵領が永遠にド田舎であることが分かって。
『山頂からは南に拡がる国が見えた。かなり栄えている。火竜は本当に人を襲わないのかもしれない。安堵したのも束の間、私の周囲に巨大な影が落ちた』
日記であるというのに、スリリングな展開です。
一体何が現れたというのでしょう。
『ちくしょうめ。火竜が現れたらしい。私は直ぐさまロッドを取り出し、応戦しようとする』
火竜の巣へと向かってしまったのでしょうか。
というか、昔からレッドウォール山脈には火竜の巣があったのかしらね。
『しかし、戦いは始まらなかった。それどころか、火竜は私に話しかけている。拙い言葉であったけれど、確かに人が使う言葉と同じだった』
え? 火竜って喋るの?
咆吼はしてたけど、私にはさっぱり分からない。
もしかするとエルフにしか聞き取れないのかもしれません。
『火竜はもう寿命を迎えるようだ。幾ばくもなく輪廻に還ると話している。何故に話しかけたのかと問うと、五百年から孵らぬタマゴがあるとのこと。それを私に託したいと口にしている』
言葉が分かるとこうも違うのね。
私は襲われたから殲滅したけれど、アンジェラはタマゴを保護してくれと依頼されたみたいです。
『巣には二つのタマゴがあった。腐っているんじゃないかと思うも、火竜は問題ないと話す。タマゴを羽化させるには魔力が必要らしく、残念ながら案内してくれた古竜はもうその力がないと語る。従って五百年も羽化していないとのことだ』
魔力って……。
私は別に魔力を注いだつもりもないのだけど、ひょっとするとアイテムボックスに収納していたから、勝手に私の魔力を奪っていたのかもしれません。
『竜種はこりごりだったのだが、やはり頼まれると断りにくい。未練によりゾンビ化されても困るのだし、私は引き受けることにした。二つのタマゴをアイテムボックスへと収納し、火竜と別れることに』
えっと、二つも持って帰っちゃったの?
てか、アンジェラはアイテムボックスのギフト持ちだったみたいね。
『火竜からタマゴを受け取って三日ばかり。宿屋に宿泊して目が覚めたときだ。私は妙な泣き声に目を覚ましていた。何とタマゴが二つとも羽化している。しかも、私のお腹の上に二匹共が乗っかっているじゃないか』
何となく想像できます。
マリィも生まれるや私の肩へと飛び乗っていたのですから。
『思ったより可愛い。竜種はこりごりだと考えていたのだが、私はこいつたちの親をしたいと思うようになった』
割と面白いわ。髭に頼んで手に入れてもらった価値があるわね。
火竜の聖女がどのようにして火竜を得られたのか。伝承には残っていない話が知れるなんて最高じゃないの。
『私は産まれた二人に名を授けることにした』
私は続きが気になっていました。
アンジェラが二頭の幼竜に何と名付けたのかと。
しかし、絶句することに。私は呆然と頭を振ることになっています。
『二人の名はマリィとルイに決めた――』
「えっ……?」
まるで意味が分からない。偶然にしては出来すぎじゃないかと思う。
火竜の名前が私たちと同じだなんて。
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