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第十四章 迫る闇の中で
帰宅前に
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エレオノーラと別れたあと、私は馬車の停車場へと急いでいました。
迎えの馬車をあまり待たせるものではありませんし。
「アナ!」
ところが、呼び止める声がします。
もうとっくに王宮殿へ戻ったのかと思えば、まだ貴族院にいたみたいですね。
「ルーク、こんな時間まで何していたの?」
普通に話ができる。別にウブな女だというつもりもありませんが、それだけで私は平穏を得られます。
たった三日で自ら死に戻りを選んだ世界線を考えると、現状がどれだけ幸せなことであるのか分かるのです。
たとえ彼に婚約者がいたとしても。
「いやな、貴院長選挙の立候補手続きを済ませていたんだ。アナはもう手続きをしたのか?」
そういや、私は貴院長選挙に出ると息巻いていたのだっけ。
髭の目録を見てから取り止めにしたことを話してなかったな。
「実は貴院長選挙には出ないことにしたのよ。第一王子と争っても良い結果が得られないでしょうし」
「本当か? てか、アナは禁書庫へ入る権利が欲しかったんだよな?」
あの頃はね。既に魔道書がないことは確定しているし、面倒ごとを抱えたくないの。
「それは解決したわ。だから禁書庫はもういいのよ。選挙は頑張ってね?」
拍子抜けしたような表情のルーク。私が出馬しないのであれば、もう確定でしょうに。
貴族院にはまだ侯爵家の嫡男とかいますけど、流石にルークの敵ではないのですから。
「お前な、まぁた良からぬことをしてんじゃないだろうな?」
やけに鋭いじゃない。てか、またって何?
確かに私は幾つも悪事を働いていたけれど、バレるようなヘマはしていないわよ。
「良からぬことって何? 別に法を犯したつもりはありません」
「頼むから妙な行動を起こすなよ?」
ルークに言われるまでもないわ。
私は目的のためには手段を選ばないけれど、それはいつも信念に基づいている。どのような悪事であっても、正義があると信じているもの。
「私が捕まると困るってか……」
「当たり前だろ? アナにはもっと力を手に入れて欲しい……」
このところ、ルークはずっと積極的になっています。
濁されていたけれど、それは私が願っていることと同じ。選べる立場にならなきゃいけないのに、評判を落とすなという意味でしょう。
「そういえば、セシル殿下がリーフメル城の城主になるみたいね。まだ公爵家の廃爵も決まっていないのに」
「それな。外堀から埋まってる。もう王家の直轄地になることは決定した。つまり、事前の根回しで廃爵も決定的だな」
あらま。既に査問会の意味すらないのね。
ま、あのご老人は人生を楽しんだことでしょう。小国並の力を持っていたんだし。
「ミランダはどうなるの? 亡命したとか聞いたけど……」
「既に潜伏先は判明してる。現状では孫まで断罪。直系以外は罰金で済ますらしい」
「そゆことね。ダルハウジー侯爵家は生き残ったのか……」
ダルハウジー侯爵家は北部にある上位貴族の一つです。
メルヴィス公爵とダルハウジー侯爵は兄弟でありまして、リッチモンド公爵家のような罰を受けるのなら、真っ先に断罪されていたことでしょう。
「この数年で上位貴族の取り潰しが相次いだからな。北東部は他国とも隣接しているし、ダルハウジー侯爵は既にメルヴィス家から籍を抜いている。北部の大半を王家の直轄地とするのも負担が大きいからな」
「もう強欲なお爺さまはお腹一杯なんだけどな……」
「アナの所領とは隣接していないだろ? 問題ないと思うぞ」
貴族院二年目における最大の障害であるメルヴィス公爵が断罪されるのだから、ダルハウジー侯爵家が現状維持でも問題はないかもしれない。
北東部は隣国との小競り合いが多いし、王家も二の足を踏んだことでしょう。
ルークは嘆息する私に構わず、次なる台詞を浴びせてくるのでした。
「とにかくアナは功を成してくれ。それしか俺は……」
迎えの馬車をあまり待たせるものではありませんし。
「アナ!」
ところが、呼び止める声がします。
もうとっくに王宮殿へ戻ったのかと思えば、まだ貴族院にいたみたいですね。
「ルーク、こんな時間まで何していたの?」
普通に話ができる。別にウブな女だというつもりもありませんが、それだけで私は平穏を得られます。
たった三日で自ら死に戻りを選んだ世界線を考えると、現状がどれだけ幸せなことであるのか分かるのです。
たとえ彼に婚約者がいたとしても。
「いやな、貴院長選挙の立候補手続きを済ませていたんだ。アナはもう手続きをしたのか?」
そういや、私は貴院長選挙に出ると息巻いていたのだっけ。
髭の目録を見てから取り止めにしたことを話してなかったな。
「実は貴院長選挙には出ないことにしたのよ。第一王子と争っても良い結果が得られないでしょうし」
「本当か? てか、アナは禁書庫へ入る権利が欲しかったんだよな?」
あの頃はね。既に魔道書がないことは確定しているし、面倒ごとを抱えたくないの。
「それは解決したわ。だから禁書庫はもういいのよ。選挙は頑張ってね?」
拍子抜けしたような表情のルーク。私が出馬しないのであれば、もう確定でしょうに。
貴族院にはまだ侯爵家の嫡男とかいますけど、流石にルークの敵ではないのですから。
「お前な、まぁた良からぬことをしてんじゃないだろうな?」
やけに鋭いじゃない。てか、またって何?
確かに私は幾つも悪事を働いていたけれど、バレるようなヘマはしていないわよ。
「良からぬことって何? 別に法を犯したつもりはありません」
「頼むから妙な行動を起こすなよ?」
ルークに言われるまでもないわ。
私は目的のためには手段を選ばないけれど、それはいつも信念に基づいている。どのような悪事であっても、正義があると信じているもの。
「私が捕まると困るってか……」
「当たり前だろ? アナにはもっと力を手に入れて欲しい……」
このところ、ルークはずっと積極的になっています。
濁されていたけれど、それは私が願っていることと同じ。選べる立場にならなきゃいけないのに、評判を落とすなという意味でしょう。
「そういえば、セシル殿下がリーフメル城の城主になるみたいね。まだ公爵家の廃爵も決まっていないのに」
「それな。外堀から埋まってる。もう王家の直轄地になることは決定した。つまり、事前の根回しで廃爵も決定的だな」
あらま。既に査問会の意味すらないのね。
ま、あのご老人は人生を楽しんだことでしょう。小国並の力を持っていたんだし。
「ミランダはどうなるの? 亡命したとか聞いたけど……」
「既に潜伏先は判明してる。現状では孫まで断罪。直系以外は罰金で済ますらしい」
「そゆことね。ダルハウジー侯爵家は生き残ったのか……」
ダルハウジー侯爵家は北部にある上位貴族の一つです。
メルヴィス公爵とダルハウジー侯爵は兄弟でありまして、リッチモンド公爵家のような罰を受けるのなら、真っ先に断罪されていたことでしょう。
「この数年で上位貴族の取り潰しが相次いだからな。北東部は他国とも隣接しているし、ダルハウジー侯爵は既にメルヴィス家から籍を抜いている。北部の大半を王家の直轄地とするのも負担が大きいからな」
「もう強欲なお爺さまはお腹一杯なんだけどな……」
「アナの所領とは隣接していないだろ? 問題ないと思うぞ」
貴族院二年目における最大の障害であるメルヴィス公爵が断罪されるのだから、ダルハウジー侯爵家が現状維持でも問題はないかもしれない。
北東部は隣国との小競り合いが多いし、王家も二の足を踏んだことでしょう。
ルークは嘆息する私に構わず、次なる台詞を浴びせてくるのでした。
「とにかくアナは功を成してくれ。それしか俺は……」
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