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第十三章 巨星に挑む

悪行

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 査問会の部屋へ入ると、既に全員が揃っていました。

 どうやら被告人以外ではモルディン大臣が最後であったみたい。

「お待たせしました……」

 何事もなく議長席へと座るモルディン大臣。

 私は末席へと向かいます。この辺りは慣れたものですね。

「全員、揃っておるようなので、議題を始めさせて頂きます。此度の招集はメルヴィス公爵様の提案でありまして、下位貴族アナスタシア・スカーレット子爵とレグス・キャサウェイ男爵の処分に関するものです」

 前置きすらなく、査問会が始まりました。

 イセリナであった頃の勝率は一割もありません。あの頃の敵は多く、嘘を口にする証言者が多く招かれていたからです。

 恐らく今回も偽証はあるでしょうけれど、狼狽える必要はないかと考えます。

「被疑者二名はルーク第一王子殿下の警護を疎かにしたようです。提出された議案内容ではエスフォレストを視察されたルーク殿下は何者かに毒を盛られ、病に伏せられているとのこと。メルヴィス公爵殿、この内容で間違いないですかな?」

 早速と嘘ばかりです。本当に辟易としてしまいますが、このようなでっち上げは普通に行われていること。

 明確な反証ができないのであれば、議案の内容が真実となってしまう。

「無論だ。ワシは常々、アナスタシア・スカーレットを疑っておった。なので暗部を送り偵察していたのだ。報告によると、殿下は一週間も死地を彷徨っていたらしい。現状は回復されたようだが、流石に見て見ぬ振りはできなかった」

 もっともらしいことを告げています。

 流石に今も重病だとは口にできなかったみたいね。先ほどの騒ぎはご老人も分かっているでしょうし。

 ここで髭が手を挙げています。

 これにはホッと一安心。髭のことだから切り捨てる可能性を考えていたけれど、どうやら彼もご老人との全面対決を望んでいるみたいです。

「アナスタシアは火竜の聖女。北のご老人、貴殿は目と鼻の先に監視員を配置されたことに腹を立てているだけだろう? ルーク殿下は元気にしておられる。どこが重病だったんだ? 数日前まで死地を彷徨っていたようには見えんが?」

 流石は髭パパです。実をいうと下位貴族である私やレグス団長に発言権はありません。

 指名された時以外は口を噤んでいないといけないのです。

「まあ死地を彷徨っていたというのは大袈裟であったかもしれん。とはいえ、警護を怠ったのは事実だ」

「ならば極刑は重すぎるのではないか? 儂の暗部もエスフォレストに送り込んでおるが、まるで異なる内容を見たと言っておる」

 どうやら髭は本気みたい。

 この場でメルヴィス公爵の求心力を根こそぎ落としてしまおうとしているかのようです。

「クルセイドの街は何者かに金を掴まされ、アナスタシアに酷い扱いをしたらしい。奴隷契約まで施しておって、メルヴィスと口にしただけで吐血し亡くなったそうだ」

 いいぞ、もっとやれ。

 まさか髭の陰まで潜んでいたのは腹が立ちますけど、今となってはナイスな判断です。

「ちなみに魔法陣にその様子が記録されている。提出させてもらう」

 言って髭は記録された魔法陣を提出。まさか最初の証拠が私に有利なものだなんて考えもしなかったわ。

 このあとはモルディン大臣が魔法陣を処理し、映像を全員に見せた。

 そこには石やタマゴを投げつけられる私の姿や、罵声を浴びせる住人たちが映し出されていました。

 更には尋問を行った場面まで記録されています。ここまで記録しているのなら、事前に教えてくれてもよくない?

 映像は中央区の区長アンドレが嘘を口にして吐血する場面でした。

『私は繋がりなどない……』

 映像は区長を初めとした要人がメルヴィス公爵に買収されていた事実を明らかとしていました。

 流石に声を荒らげたのはメルヴィス公爵です。

 彼は出席者全員に訴えています。

「こ、このような記録は捏造だ!!」
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