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第十二章 天恵
謎の魔道書
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六日が過ぎていました。
ルークとイセリナはかなり衰弱しています。
一応は流動食的なものを呑み込ませていましたけれど、呪いの効果は明らかです。
この分だと十日と持たないことでしょう。
正直に私は諦めています。
今さらコンラッドが戻ったとして、呪いについて理解を深める時間くらいしか残っていないからです。
さりとて、レグス団長様は明らかに慌てておられますね。ルークの具合も悪くなる一方でしたし、仕方ありませんけれど。
「アナスタシアさまぁぁっ!? 殿下は大丈夫なのでしょうか!?」
もう何度聞いたことでしょうか。
大丈夫だと言ったのは私ですけれど、まだ一日あるのだからと宥めるくらいしかできません。
「必ずお救いしますから、慌てないでください」
あと一日もこの問答を続けるのかと思うと溜め息しかでませんね。
とりあえず、今回は捨てプレイが確定です。何しろコンラッドが帰ってこないのですから。
「いや、でもですね!?」
レグス様が質問を加えようというとき、どうしてか扉がノックされました。
ここは王子殿下の寝室です。余程のことがない限り、使用人たちは連絡しようとしないはずなのに。
「姫、只今戻りました」
あれ? 本当に戻って来たの?
もう間に合わないだろうと考えていましたが、コンラッドは間に合ったようです。
別に赤い薔薇を窓辺に置いたわけでもありませんでしたけれど、そこは有能な従者といえるのかもしれません。
「レグス様、この男が私の従者ですわ。呪術の書物を持ち帰っておりますの」
コンラッドは大きな革製の鞄を持っていました。
恐らくは呪術関係の書籍が入っているのでしょう。
「コンラッド、割と時間がかかったのですね?」
「ええまあ。何しろ公爵領へは戻れませんので。西の辺境伯領まで行ってきました」
言ってコンラッドは鞄を開き、中から一冊の書物を取り出しています。
あれ? たった一冊なの?
てっきり大量に持ち帰ってくると考えていたのだけど。
「非常に苦労しました。何しろ呪術は国際的にも禁じられていますからね。闇ギルドの商人に運良く出会えなければ買い付けできないところでしたよ」
まあ違法な書物なら仕方ないか。それでも命令通りに持ち帰ってくるコンラッドはやはり優秀ってことかしらね。
早速と読んでみましょう。
ズシリと重たいその書物のページを捲っていきます。
「え?」
私は声を失っていました。
数ページ見ただけで、この書物が異常であると気付いたから。
「どうして術式化されてるの……?」
呪術スキルが魔法と同じように魔法陣を基礎としているのは私も知ったばかり。
それまでの認識によると、天恵スキルは独自の発動原理が成されているというものです。神の祝福として与えられる御業だと考えていました。
「呪術解析に使用したのは古代エルフの魔法……」
プロメティア世界には既に古代エルフ文字の解読術などありません。
だというのに、呪術に関する解説で、魔法陣が描かれているなんて絶対におかしいって。
「転写した魔法陣との整合性も取れているし……」
幾つか確認してみると、ルークにかけられた呪いの術式と同じものを見つけていました。
ピンポイントでこういった書物が存在するなんて俄に信じられません。
放心状態でページを捲った最後、私は著者が残したメッセージを見つけています。
『貴方は間違っていない――』
どういうことだろう?
少しばかり疑問に感じていた私ですが、一番下に記された著者のサインにより、戸惑いは困惑へと変化することに。
私の心を激しく揺さぶるメッセージが最後に記されていました。
『いつ何時も主神様と共に。ミカエル』
ルークとイセリナはかなり衰弱しています。
一応は流動食的なものを呑み込ませていましたけれど、呪いの効果は明らかです。
この分だと十日と持たないことでしょう。
正直に私は諦めています。
今さらコンラッドが戻ったとして、呪いについて理解を深める時間くらいしか残っていないからです。
さりとて、レグス団長様は明らかに慌てておられますね。ルークの具合も悪くなる一方でしたし、仕方ありませんけれど。
「アナスタシアさまぁぁっ!? 殿下は大丈夫なのでしょうか!?」
もう何度聞いたことでしょうか。
大丈夫だと言ったのは私ですけれど、まだ一日あるのだからと宥めるくらいしかできません。
「必ずお救いしますから、慌てないでください」
あと一日もこの問答を続けるのかと思うと溜め息しかでませんね。
とりあえず、今回は捨てプレイが確定です。何しろコンラッドが帰ってこないのですから。
「いや、でもですね!?」
レグス様が質問を加えようというとき、どうしてか扉がノックされました。
ここは王子殿下の寝室です。余程のことがない限り、使用人たちは連絡しようとしないはずなのに。
「姫、只今戻りました」
あれ? 本当に戻って来たの?
もう間に合わないだろうと考えていましたが、コンラッドは間に合ったようです。
別に赤い薔薇を窓辺に置いたわけでもありませんでしたけれど、そこは有能な従者といえるのかもしれません。
「レグス様、この男が私の従者ですわ。呪術の書物を持ち帰っておりますの」
コンラッドは大きな革製の鞄を持っていました。
恐らくは呪術関係の書籍が入っているのでしょう。
「コンラッド、割と時間がかかったのですね?」
「ええまあ。何しろ公爵領へは戻れませんので。西の辺境伯領まで行ってきました」
言ってコンラッドは鞄を開き、中から一冊の書物を取り出しています。
あれ? たった一冊なの?
てっきり大量に持ち帰ってくると考えていたのだけど。
「非常に苦労しました。何しろ呪術は国際的にも禁じられていますからね。闇ギルドの商人に運良く出会えなければ買い付けできないところでしたよ」
まあ違法な書物なら仕方ないか。それでも命令通りに持ち帰ってくるコンラッドはやはり優秀ってことかしらね。
早速と読んでみましょう。
ズシリと重たいその書物のページを捲っていきます。
「え?」
私は声を失っていました。
数ページ見ただけで、この書物が異常であると気付いたから。
「どうして術式化されてるの……?」
呪術スキルが魔法と同じように魔法陣を基礎としているのは私も知ったばかり。
それまでの認識によると、天恵スキルは独自の発動原理が成されているというものです。神の祝福として与えられる御業だと考えていました。
「呪術解析に使用したのは古代エルフの魔法……」
プロメティア世界には既に古代エルフ文字の解読術などありません。
だというのに、呪術に関する解説で、魔法陣が描かれているなんて絶対におかしいって。
「転写した魔法陣との整合性も取れているし……」
幾つか確認してみると、ルークにかけられた呪いの術式と同じものを見つけていました。
ピンポイントでこういった書物が存在するなんて俄に信じられません。
放心状態でページを捲った最後、私は著者が残したメッセージを見つけています。
『貴方は間違っていない――』
どういうことだろう?
少しばかり疑問に感じていた私ですが、一番下に記された著者のサインにより、戸惑いは困惑へと変化することに。
私の心を激しく揺さぶるメッセージが最後に記されていました。
『いつ何時も主神様と共に。ミカエル』
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